ロミオとシンデレラ 第六話【ガラスの覆い】

投稿日:2011/08/13 23:42:21 | 文字数:1,821文字 | 閲覧数:1,366 | カテゴリ:小説

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色々と話の設定を考えているうちに、この家庭環境でルカさんがフリーなのはちょっとおかしいのではないかと思ったので、急遽婚約者を設定しました。相手はがくぽです。……ごめんがくぽ。
後、多分、下の名前はさすがに「がくぽ」ではないと思います。だって……ねえ。


ところで、この作品には、実はレンとミクの視点のバージョンが存在します。もともとは頭の中を整理するために書いていたんですが、割とまとまっているので、これはこれで読めるんですが。これも掲載していった方がいいのかなあ……。ピアプロの形式って、こういう連載小説やるのに向いてないんですよね。どうしたものか。

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TEXT
 

 あれこれあった上映会から帰ると、玄関の前に見覚えのある高級車が止まっていた。……神威さんが来てるのね。
 家の中に入ると、応接室の方からお父さんの機嫌の良さそうな声と、それに相槌を打っている神威さんの声が聞こえてきた。神威さんは、ルカ姉さんの婚約者。お見合いをしたのは二年前。話はあっという間にまとまり、一ヶ月ぐらいで二人は婚約した。我が家は娘しかいないから、神威さんは婿養子に入ることになっている。お父さんとしては、すぐにでも式をあげさせたかったみたいだけれど、神威さんが「若輩者なので結婚はもう少し待ってほしい」と言いだしたので、二人はまだ婚約者のままだ。
 でも、そんなにしないうちに結婚するんだろうな。ルカ姉さんと神威さん。
 わたしもいずれ、ルカ姉さんみたいに、お父さんが連れてきた人と結婚するんだろうか。……なんだか、胸の中がもやもやする。わたしはため息を一つついて階段をあがると、ハク姉さんの部屋へと向かった。ドアを叩く。
「……誰?」
「リンよ」
 答えると、ハク姉さんの驚いた声が返ってきた。
「あんたどうしたのよ? お父さん、今日は家にいるんでしょ? ……まあいいわ」
 鍵が開く音がして、ドアが開いた。わたしはそっと部屋の中に入った。
「あれ、リン。出かけてたの?」
 外出着のままのわたしを見て、ハク姉さんはそう訊いてきた。
「うん。ミクちゃんの家に行っていた」
「ふーん……楽しかった?」
「色々ありすぎてよくわからない」
 ミクちゃんだけじゃなくて、ミクオ君と鏡音君がいて。ミクちゃんとミクオ君が喧嘩して、わたしは鏡音君と二人きりで部屋に残されて、二人で気まずい時間を過ごして。ミクちゃんが戻って来てからは、ミクオ君の選んだホラー映画のせいで、ミクちゃんがミクオ君の首を絞めちゃった。幸い、ミクオ君は無事だったけど……。その後は、ミクちゃんの好きな映画を見て、ミクちゃんはとても楽しそうだった。それからみんなでお昼ご飯を食べて、もう一本映画を見て、で、お母さんが持たせてくれたケーキでお茶にして。ミクちゃんが「リンちゃんのお母さんって、本当にケーキ焼くの上手ね~」って、言ってくれたんだっけ。
「何よそれ」
「そうとしか言いようがなくて……」
 この前の椅子は、幸いそのままだった。わたしはそこに座る。ハク姉さんはベッドに腰かけた。その脇に、開きっぱなしの本が伏せてある。わたしが部屋に来るまでは、本を読んでいたらしい。
「ハク姉さん、何読んでたの?」
「ちょっと前の外国の小説」
「どんな話?」
「悲恋物。つまんない。……なんであたし、こんなの読んでるんだか。で、用件は?」
「特にないんだけど……ちょっとだけ、ここにいてもいい?」
「ちらかってるのが気にならないんならね」
 わたしは頷いた。内心、ちょっとは片付けた方がいいんじゃないかとは思うけれど……言ったらハク姉さんは怒るだろう。わたしは、しばらくそのまま椅子に座っていた。
「……リン、何か嫌なことでもあった?」
「……別に」
 ハク姉さんは大きなため息をついて、わたしを見た。
「気になってることがあるんなら言いなさいよ」
「下に神威さんが来てる」
「神威……ああ、姉さんの婚約者ね。……なら、お父さんは当分神威さんの相手をしてるか」
 ハク姉さんは天井を見上げて、子供みたいに足を揺すった。
「ルカ姉さん、神威さんと結婚するのかな」
「するんじゃない? 姉さんだもの」
「ルカ姉さんは、それでいいって思ってるのかな?」
「思ってるんじゃない? そういう人よ」
 ……どうして、なんだろう。
「……ハク姉さんだったら結婚する?」
「さあ? あたしは失敗作だからね。あたしの意見なんか参考にならないわ」
 わたしの質問に、ハク姉さんは自嘲気にそう答えた。
「そういう言い方は止めてよ」
「事実は事実よ。姉さんは成功作で、あたしは失敗作」
 ……わたしは何も言えなかった。
 お父さんは、多分、そう思っている。ルカ姉さんは成功作で、ハク姉さんは失敗作だって。
 じゃあ、わたしは、何なんだろう……。
「……リン?」
 気がつくと、ハク姉さんが心配そうにこっちを見ていた。
「あんた平気?」
「……わからない」
 息をするのが苦しい。そう思う、時がある。
 空がわたしにのしかかってくる。昔読んだ本の中のそんなフレーズを、わたしは何故か思い出していた。

しがない文章書きです。よろしくお願いします。

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