わたしは現在、クオと喫茶店で作戦会議の真っ最中。作戦というのは当然、リンちゃんと鏡音君の仲を親密なものにするためのものだ。
同じクラスとはいえ、基本的に二人は全くといっていいほど話す機会がない。というより、リンちゃんはわたし以外と喋ることがほとんどないのよね。だから何としてでも、二人っきりにして、話をさせる必要がある。親密な関係になるのに一番必要なのはフランクな会話よっ。
「とにかく、どうにかしてもう一回呼び出したいの。クオ、何かいい案ない?」
クオはため息をついた。もう、なんで乗り気になってくれないのよ。
「なあ、ミク……もう止めようぜ、こんなこと」
わたしは、大きく首を横に振った。一度や二度の失敗で諦められますかっての。
「絶対に嫌」
そう答えると、クオは「しょうがないな」と言いたげな顔になって、今度はこんなことを言ってきた。
「そもそもレンの奴をお前んちに呼ぶのに無理があるんだよ」
どうして?
「だって、クオと鏡音君は友達でしょ? 友達の家に遊びに行くのって当たり前のことよね。クオはよく鏡音君の家に遊びに行くじゃない」
「だからさあ、お前んちはお前んちであって、俺んちじゃないの」
そうしたら、クオはこんなことを言い出した。あのねえ。お父さんもお母さんも、家に預かる以上、クオは自分たちの息子だと思って責任持って面倒見ますって、叔父さん叔母さんにそう宣言してるんだけど。
「今はクオの家よ」
だから遠慮なんかしなくていいのに。クオってば、変なところで律儀なんだから。
クオは考える表情になった後で、今度はこんなことを言い出した。
「レンに怪しまれたんだよ」
どういうことかしら?
「怪しまれたって?」
「この前、なんでいきなり自分を家に呼んだのかって、しつこく訊かれた。何か魂胆があるんじゃないかって。考えてもみろよ、レンと知り合って一年半なのに、俺があいつをお前んちに呼んだの、この前が初めてなんだぜ」
うーん、鏡音君がそんなに察しがいいなんて、予想外だわ。伊達にトップクラスの成績は取ってないってことかしら。あれ、ちょっと待って。
問い詰められたってことは……クオ、まさか、全部綺麗さっぱり喋っちゃったんじゃないでしょうね? わたしは思わずクオの顔をまじまじと見てしまった。
「クオ、まさかとは思うけど」
「誓って計画のことは喋ってない。適当にごまかしておいた」
即答するクオ。ほっ、良かった。喋られたら何もかも終わりだもの。それにしても、そうなると、なんかもっと上手な理由を考えないとね。
何かイベントでもないかな。……今は十月の半ばよね。
「そろそろハロウィンだし、パーティーをするってのはどう?」
「断言するが、そんな口実じゃ怪しまれるだけだし、あいつは来ない」
きっぱりとそう言うクオ。うーん、ダメか。リンちゃんならパーティーやるって言えば来てくれるんだけどな。
家に呼ぶのがダメなら……じゃ、家じゃなければ?
「うーん……わたしの家に呼ぶのが難しいとなると……あ、そうだわ。みんなでどこかに遊びに行かない?」
それだったら、もっとクオも口実を考えやすいかも。
「行くってどこへ?」
「リンちゃんは門限があるし――あそこのお父さん、門限にはすごくうるさいのよ――近場じゃないと無理だけど」
移動は我が家の車を使えるから、かなり自由が利くはず。
「ゲーセンとか?」
そんな提案をするクオ。確かにクオはよく鏡音君と遊びに行ってる。クレーンゲームのぬいぐるみを、わたしにおみやげにくれたこともあったっけ。でも、問題が一つ。
「リンちゃんをゲームセンターに誘うのは無理だと思う。ゲームやらないもの」
漫画類が全面禁止なリンちゃんの家だもの、当然、ゲーム類も一切禁止だ。ゲームセンターじゃ、鏡音君は大丈夫でも、リンちゃんの方を誘い出せない。
「じゃ、カラオケは?」
「それも厳しいと思う。リンちゃん、クラシックしか聞かないから」
いまどきの音楽禁止ってのもどうかと思うんだけどね……。もちろんアニメもダメだし、ライトノベルとかもダメ。おかげでリンちゃんは、普段はクラシックしか聞かせてもらっていないし、読ませてもらえるのは文学みたいな固い本ばっかり。
「あんまり変なところだと、レンを引っ張り出すのが難しくなるぞ」
一般的な高校生の遊べる場所じゃないと、確かに鏡音君がまた変に思うだろうなあ。えーっと、どこか遊べそうな場所は……。
「……遊園地なんてどう?」
何も考えずに遊ぶのなら一番適任なはずだ。ここなら、何とかリンちゃんを説得する自信がある。
「遊園地か……それならいけるかも」
「でしょでしょ~」
わたしは胸を張った。クオに呆れられちゃうかな。でも、これくらいいいでしょ?
「で、いつにする?」
「リンちゃんはまだ足の怪我が治ってないから、足が治ったら誘ってみる」
遊園地となると結構中で歩くから、捻挫が治ってなかったら辛いわよね。そうなると、来月になっちゃうなあ。まあ、果報は寝て待てって言うし。これがダメならまた次を考えるだけよ。
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目白皐月
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