一方、ミクは既に仕事場に来ていた。今は楽屋にいる。ミクも昨日の雅彦との喧嘩について考えていた。本来なら仕事の前なので、仕事について意識を集中しなければいけないのはMEIKOから散々言われて頭では分かっているのだが、どうしてもそちらに意識がいかない。雅彦とのことについて、怒ってはいるのだが、自分にも非があることは薄々感じていた。
 (…雅彦さんに、ちょっと言いすぎたかしら)
 そんなことを考えるミク。確かに今まで何度も先に寝ていて良いと言っていた雅彦の言動について不満があったのは事実だ。だが、雅彦はミクのためを思っているからこそいつも先に寝ているように言っているのも理解していた。ミクは、その2つの思いの間で揺れ動いていた。
 (雅彦さんは、どう思っているのかしら?)
 昨日、ミクが怒って部屋に入った時に、部屋まで追いかけ、そして扉をノックし続けていた雅彦。きっと、その表情は呆然とした表情だったと思う。雅彦は、他人の感情を察することがあまり得意でないことは、長年付き合ってきて何となく分かっていた。ミクに対しても、ミクが仕事で十分なパフォーマンスを出すことを第一に考えており、そのために雅彦自身をないがしろにすることにあまり躊躇しない性格で、プライベートでもミクが雅彦のために何かして欲しいと言うことは滅多になく、逆に雅彦がミクのために何かすることが多かった。自分のために雅彦が尽くしてくれるのは嬉しいが、逆に雅彦に尽くせないことが、長年の不満となって蓄積されていったのだろう。
 (そうよ、雅彦さんが何もさせてくれないのが悪いのよ)
 ミクはそう結論付けることにした。しかし、心の奥底ではそうではないと叫び続ける声が聞こえてくる気がする。心の中のモヤモヤは晴れない。
 「ミクさん、本番です」
 「…はい、分かりました」
 楽屋に本番であることをアシスタントディレクターが伝えに来る。ミクは、心がモヤモヤしたまま、部屋を出て行った。

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初音ミクとパラダイムシフト3 2章2節

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投稿日:2017/02/27 23:22:44

文字数:822文字

カテゴリ:小説

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