オレは手首に巻かれたリボンから目を離して、前方を見直す。
相変わらず行く手どころか、360度見回しても砂漠しかない。
ミクは、オレの事をどう思っていたのだろうか?
ミクはオレを“セカンド”だと見抜いている節があった。最初に出会ったとき、オレの瞳を覗いていたから、その時にバレていたのかもしれないな。
“セカンド”はどういうわけか、目に疾患を患って生まれてくる。程度の差こそはあれ、生まれついて何らかの目の異常を抱えているのだ。これは“セカンド”の種としてのエラーなのか、オレ達を生み出した人間達が意図的に仕組んだものなのかは誰にもわからない。ただ言える事は、その目の特性のせいで、網膜などの構造が人間とは多少異なるという事だ。
ミクはアンドロイドだ。人間の目は誤魔化せても、各種センサーを備えた彼女の目を誤魔化せたとは思えない。やはり、オレを“セカンド”だと見抜いていたと考えるのが妥当か。
とすると、彼女はなぜオレを受け入れてくれたのだろうか?
“セカンド”と言えば、彼女のおじいちゃん達を苦しめた存在……彼女にとっては敵であってもおかしくないはずなのに。
……わからないな。オレはミクじゃないから、彼女の考えている事をいくら考えたってわかりっこない。
でもひとつだけハッキリしている事がある。
オレは、ミクが好きという事だ。
おそらくミクもオレの事を好いていてくれている。
オレたちはお互いに惹かれ合って、ずっとこのまま側にいたいと思っていた。オレが自由の身であったのなら、それこそ死ぬまでミクに付き合ってやりたかった。
……そうか。だからか。
ミクが最後にオレに言った言葉──
「今度来るときは、隠し事はなしだからね」
あの時のミクの寂しそうな瞳は、オレが嘘をついている事に対してのものだったのだ。好きだからこそ、嘘をつかれている事が寂しいと思ったのだろう。
「……今度会ったら、謝らないとな」
思わずオレは呟いていた。
相変わらず砂しか見えない砂漠を走っている。
“施設”はまだまだ先だ。
オレは本部にミクの事を秘匿しようと考えている。これは本部に対する……いや、“セカンド”全体に対する裏切り行為だな。何たって“セカンド”の未来の希望をオレ個人の都合で闇に葬るわけなのだから。
だが、それが何だって言うんだ。
オレはミクが好きだ。彼女が悲しむような事はしたくない。本部になんか報告しようものなら、“施設”に連れてこられてもっと苦しい思いをするのは目に見えている。そんなのはオレが許さない。
ミクは、あの街で……世界の果てとも思える何もない街で歌を歌っている方が幸せなはずだ。哀しみに包まれていても、平穏に過ごせる事が彼女の傷を癒す唯一の方法だと思うからな。
それにオレは、“セカンド”の未来をそう悲観する事もないとも思っている。
ミクの歌を聴いたとき、オレは体中に言葉で言い表せない感動が押し寄せた事を今でも鮮明に覚えている。オレは“文化”というものを相変わらず理解できていないが、ミクの歌に感動する事ができたのだ。オレが感動できるのなら、他の“セカンド”達だって感動できるはずだ。
ミクの力に頼らずとも、きっとオレ達は自力で未来を切り開けるさ。
オレはアクセルを踏み込み、“施設”への帰路を急いだ。
了
この世界の果てで 第10章 その4(完結)
やっと完結です。
長い・・・長かった。
大した内容もないのにw
ちょっとあとがきらしきものでも。
この作品、書き始めるキッカケはとあるシチュエーションを思いついたからでした。
月明かりの元、廃墟となった街でひとり歌うミク・・・。
そのシーンを書くために色々考えて、このような話になりました。
考えた当初はギャルゲ風味はない予定でしたが、書いてる途中でミクが勝手に暴走しはじめたので、それを丸く収めるためにはギャルゲっぽくなる必要性が生じてしまったのです。
予想外な出来事でしたけど、終わってみればこれはこれで良いかなぁ、なんて思ったりなんかしてりしてw
あと、個人的には今回描いたミクの事、気に入ってます。
こんなにやさぐれたミクは、たぶん他にないでしょうしw
ツンデレではなく、ヤサグレなのです。うちのミクは!
もしここまで読んでくださっている方がいるのでしたら、最大限の感謝を。
そして感想などをいただけると、喜びますw
長い間、おつきあいしていただき、ありがとうございました。
コメント3
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飛沫が宙に舞ったのを
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ムラタシユウ
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ご意見・ご感想
ganzan
ご意見・ご感想
はじめまして。読ませていただきました。
ギャルゲ風味、モロ好みです。ツボりました。
「あまり盛り上がりがありません」と仰っていますが、物語の展開ではなく心理描写だけで十分ドキドキさせて貰いました。
●好きな場面など
・世界観など
“砂塵”“定常領域”“セカンド”などのキーワードに説得力がある(ように見せる?)適度な説明があり、カッコよく感じました。
・第5章その2
荒廃していった世界の背景が物語中盤で自然に盛り込まれていて、読んでいてダレませんでした。
・第6章その3
以下、抜粋します。
「――(中略)――今にしては笑い話なんだけどね、私は歌でみんなを元気づけようとしたのよ。心が安らぐような歌や、希望に満ちた歌をたくさん……それこそ数え切れないぐらい歌ったわ。でもね、私は誰一人として救えなかった。そんな事で、街の人々が元気を取り戻すなんて事はなかったのよ。それもそうよね。戦争は激しさを増して、人がどんどん死んでいくんだから……」
自分が今、この小説を楽しめているように、人間ってある程度余裕がないとエンターテイメントを楽しめないのかもしれませんね。そう考えると何だかんだ言っても、自分は恵まれているんだなぁ……などと思いました。
・第7章
ミクが感じていた孤独を想像してジワリ、続いて出てきた彼女の願望に薄ら寒いものを感じました。ホラー展開か!?……などと心配しましたが、ホンワカ展開になってホッとしました。
ちなみに後半は読んでて顔面がニヤケッ放しでした。悶えます。
・第9章
自分はやっぱり歌っているミクが好きです。歌の描写があるだけで嬉しくなります。
歌の伴奏や、ライト・光の粒などのエフェクトは、きっとガウルとミクで用意したんだと思いますが……このコンビでどうやって用意したのか気になりますね(^^;
●全体的な感想
ミクがかわいい。
……すみません、冗談ではなくてそれが一番印象的でした。
話が終わった後の続きが少し気になりました。やはり彼女はずっと「世界の果てとも思える何もない街で歌を歌っている」んでしょうね。
あまり悲しくない結末が待っているといいな、と思いました。
投稿されてから日数が経っていることもあり、感想を目にして頂けないかも知れませんが、それでも一言述べさせていただきました。
面白い小説をありがとうございました。
2014/03/16 02:42:31
シーマ
ご意見・ご感想
おお、ありがとうございます!
初めて感想をもらえたので、凄く嬉しいです!
ミクの性格、当初は清楚な感じというか、悲劇のヒロインって感じのを想定していたのですが・・・。
気が付いたらこんな風になってましたw
でも気に入ってもらえて良かったです。
しかし参考だなんて、そんな。
僕もまだまだ勉強中な身なので・・・。
新作というか、書きためてるミクものの小説はもう一編あったりします。
でもこれは・・・その・・・ピアプロ的にはNGな代物なので、絶対に公開できないんですがw
それ以外でも、何かミクをヒロインにしたものを考えてみたいとは思ってます。
2008/09/22 00:42:19
トーテム
ご意見・ご感想
全話読ませていただきました!
久しぶりに面白いWEB小説読みましたよw
ミクのキャラがいいですね~
俺はどうしてもツンデレ系のキャラが書けないんですよね^^;
ほかにも文末や間の置き方など、
色々参考にさせて頂きますね・3・
新作も待っちゃったりするかもです(*´▽`)
2008/09/19 17:37:06