空は今日も青い。水色に近い青。絵の具で作った色のような鮮やかさ。

今日は8月15日、つまり、只今夏休み。




「暑いねぇ」


「そうだね」




鮮やかな水色の空に、大きめの入道雲が伸びていた。

お昼も食べ終わっていて、のんびりしていた。

宿題も終わって特にすることもなかった。

なので、君と一緒に近所の公園に来て、ぶらぶらしていた。



同じ学校に通っている、女子では唯一の幼馴染。


長く伸ばして左右で二つ結びにしている綺麗な緑髪は地毛だという。

緑髪緑眼。最初は(といっても初対面は園児だった時だが)カツラだと思っていた。


自分は普通の黒髪で、黒い眼。並ぶと必ず君は周りからの視線を受ける。


それは髪と眼のせいでもあるが、理由は他にあった。



それなりに整った親しげな容姿と表情。清潔感もあるので学校でも異性に好かれやすい。






閑話休題、僕と君が公園でのんびりしている、今に戻ろう。









蝉の鳴き声が響いていた。

ブランコに座る。


キ、と軋む音を立ててブランコが揺れた。



「8月も、あと半分か」


「そうだね、早い」


何気ない会話を二人で繰り返していた。今は大体12時半くらいか。


太陽の位置もすっかり高い。



「今日も天気いいねぇ」

そう僕が言うと、

「うん、眩しい」


病気になりそうなぐらい、と付け足して君が微笑んだ。



「その猫は?」


「ん? 最近家の周りうろうろしてて、それでちょっかいかけてみたの」


「へぇ、なついてるね」


「そうなんだよね。ふふ、連れてきちゃった」


君の膝の上に乗っかっている猫が、くうっと背伸びをした。



「この暑さにももう慣れちゃったな」


日差しの方を見て、目を細める。


本当に、病気になりそうなぐらい眩しい。



それにしても夏休みは、宿題が片付いてしまうとすることがない。






でも、とぽつりと呟いて君は続けて、


「まぁ・・・・・・夏は嫌い、かな」


猫を撫でた。みぃ、と短く猫が鳴いた。


ふてぶてしく君はそう呟いた。



「じゃあ僕の家に行って涼む? こっから近いだろ」


「うん、そうする」



君が頷いたのを確認すると僕は立ち上がって軽く尻を払った。


同じように立ち上がって、片腕で猫を抱きかかえて、もう片方で君も服を叩いた。


またブランコが、キギッと軋んだ。




公園から少し歩くとのんびりした雰囲気から、がらりと変わって、にぎやかな道に出る。


最近になっては、それはいつものこと。


同じ。











「あ、」






次の言葉を発する前に君は走り出していた。


そちらを見ると、猫が君の何歩か先を歩き、逃げ出していた。


「ちょ・・・・・・、・・・・・・?」





呼びかけて、一瞬こちらを振り返った。


その後、すぐに猫が歩き出した方向に向き直ってまた走り出した。







「もう・・・・・・」


しょうがないなぁ、と呟いて小走りであとを追い、かけ、た・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
























君が飛び込んだ先は、








赤に変わった信号機。












「危な━━━━!」








バッと、トラックが通る。




猛スピードで、





ブレーキ、間に合わない。











君と、


トラックが、



触れ、る・・・・・・
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで?




脳裏をちらついた、赤と青のぐるぐるした気持ちの悪いものが目に見えた。


トラックの車体に当たった日光が反射して、目を瞑った。
















・・・・・・グシャッ・・・・・・・・・・・・。












「きゃあああああああああああああああ!」


「女の子が轢かれたぞ!」


「うあ、・・・・・・・・・・・・ぐしゃぐしゃだよ・・・・・・」




・・・・・・あっという間に、君の姿は赤く血なまぐさい肉片に変わり果てた。




数秒遅れてから、甲高い悲鳴のようなトラックのブレーキ音が、泣き叫ぶように響いた。




服に赤いものがついていた。











・・・・・・・・・・・・血?



血飛沫を浴びていた。


吐き気が胃から押し寄せてくる。




目眩がする。

顔が、表情筋が、痙攣を起こす。

足が震えて、崩れ落ちる。







君のわずかな香りと、鼻をつくような血の匂いと、血飛沫の色と、



混ざり合って、噎せ返って、



嘘みたいだ。嘘みたいな出来事が起こった。




「・・・・・・ねぇ、君・・・・・・。死んじゃったの?」




肉片からの返事はない。





「死ん、だ、・・・・・・の?」




嘘だろ? 嘘、嘘嘘。嘘嘘嘘嘘嘘嘘、嘘嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘・・・・・・・・・・・




「嘘だろ・・・・・・?」


















「嘘じゃないよ」



後から、くくっと微かな笑い声が聞こえた。



君の肉片と化した塊の向こうから、自分によく似た陽炎がみえた。



嗤ってる。




陽炎と目があったような気がした。


するとすぐに陽炎は消えてしまった。



「まっ・・・・・・!」





辺りは真っ赤に染まっている。


綺麗な君の緑髪も、血の色のせいでわからなくなっている。



だけど、それでも、夏の空は水色のまま。



ぐるぐるぐるぐる、掻き回す。空を仰いで何かを探すように掻き回す。



ああ、眩しい。目が眩む。


構わず響いている蝉の音がさらにこの恐怖を煽る。




「うぁ、あ、ああ、ああああああああ!」



何もかも全部、蝉の音で眩んで、真っ暗になった。















ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【お久です】前編・カゲロウデイズ【自己解釈】

”僕”は、少年、”君”はミクっていうことでお願いしますw
まじ娘さんとか灯油さんの「カゲロウデイズ歌ってみた」を
聞いていたらたまらなくなって「うわあああ」ってなっちゃって勢いでアドリブでやっちゃいましたww←

長い間なんにもうpできてなくてすみませんでした・・・。

えぇ・・・リアルの方であっちいきこっちいきでバタバタな時期が続いてたんです・・・(ぇ
んま、言い訳してもしょうがないですね(-_-;)
ごめんなさいでした( TДT)

閲覧数:144

投稿日:2012/02/11 17:23:32

文字数:2,504文字

カテゴリ:小説

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