「もう…帰るもんか」

私は暗い道を一人、てんてんと彷徨っていた。
切れ掛かる街灯は、自分の心のようだった。

私は、マスターとのいざこざで家を出てきた。
マスターは私がいるにもかかわらず、他のボーカロイドを平気で買ってきている。
マスターは、私の本当の気持ちを知らない。

…私だって、一流の歌い手になりたい。マスターのもとで。
でも、成長が遅い私だからか、他のボーカロイドを簡単に手に入れてくる。
意地悪、もっと私を長い目で見ていてよ。
…私の気持ちだった。


行くあてのない私は、家に一番近い公園にやってきた。
ブランコに体育座りして、軽くゆする。
マスターが買ってくれた、揺り椅子を思い出す。はぁっと、ため息がでて、同時に涙が頬を伝う。
…どうして…だよぉ…
独りよがりなんかじゃない。
ただ純粋に、私という存在をもっと大きく見てほしかった。
のどが割れるほど、黒空にむかって叫ぶ。

「私が悪いなら、謝るよ!!私に足りないところがあるなら、今すぐに直すよ!!だから、私を、私を…」

涙声で、叫ぶ。
本音は、帰りたかった。でも、自分から帰ることなんて、出来ない。
自分ひとりで出てきたんだ。
だから、マスター、私を迎えに来て。



「誰が、ミクをほったらかしたんだ?そいつ、ぼこぼこに殴らなきゃな」
声の元に顔をむける。

「マスター…」

「殴れよ」

マスターは一言、私のほうに右頬を向ける。
マスターは目を閉じた。
私は、静かに、左手を後ろに引く。
うなりをつけて、マスターをひっぱたいた。

ばちん。


「…ミク、俺が悪かった。確かにお前という存在がありながら、他のボーカロイドを連れてきてしまった。だがな、はき違えないでくれ。俺はお前を見捨てたとか、お前への愛情が消えうせたなんてのは、絶対に、ないから。お前はずっと、俺の歌姫だから」

私は、大粒の涙をこぼしながら、言う。
「マスター、私も、殴ってください。私はマスターを疑いました。歌姫、あなたの歌姫として、最低でした。殴って、ください」

私も、マスターと同じように右頬を差し出す。

ばちん。

マスターは、言った。
「一流ってのは、はっきりいって、おかしいやつらなんだ。三流は普通、二流は気違い、一流はそれを越した馬鹿。だから、馬鹿になれ。馬鹿になって歌え。そうすればきっとお前の納得する、歌が歌えるようになる」


こくりとうなずき、私はマスターの口に口を押し当てた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

一流のDIVA。。

気違いってあの字でいいんでしたっけ??
これは部活の先生の名言が使われています。
「三流~一流」のあたりです。

閲覧数:91

投稿日:2010/03/26 22:57:33

文字数:1,028文字

カテゴリ:その他

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  • 或菟

    或菟

    ご意見・ご感想

    かっこいい話です!
    ブクマいただきました!

    2010/04/07 14:47:14

    • 初音ミミック

      初音ミミック

      まぢですか!!?
      ありがとうございます!!
      顧問の先生に感謝しなくちゃです^^

      2010/04/07 20:29:34

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