西山貴文 記
音楽青年の憂鬱 リライト
第2章 Decoy (11ー13)
第3章 vocaloid(1ー13)
第2章 Decoy
第11話
著作権法違反を教えてもらった。
友人A曰く。
領土保全ぐらしろよォ、だそうだった。
帰りの電車。
夕暮れの街。
気がつくと夕暮れの街を見ている気がする。
「10年此の方変わらないなぁ」
「何が」
「街並み」
「そう」
「Vocaloid ってこの先どうなるかな」
「10年此の方変わらなかったり」
音声合成ソフトによるボーカル。
音としての珍しさはもう遠い。
サンプリングによる音声合成と言う分野自体。
此から何に応用されるかわからない。
台頭するAIの声にでも成っていくか。
「アンドロイドって実用化すると思う?」
「いっぱい居るじゃん」
当たり前の事を、と未空は座り直した。
第12話
「探してるようですね。此までに既に1000件以上」
「20年かかるな」
「見つからない方がいいでしょうね」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
娘は朝早くから何処かへ出かける。
昼過ぎまで家でゴロゴロされるよりは良い。
が、悪い虫に憑かれるのも困る。
興信所を雇うことも考えた。
今のところ悪い兆候はない。
何れは手放すとはいえ。
静かに成った部屋に打鍵の音が響く。
午後から出勤した大学の研究室。
今日は講義は無いが起動試験があった。
第13世代ヒト型Android。
見た目は人の女性に擬装してあった。
「システムOS起動」
薄雲が隠す黄色い月。
天文も悪くなかったなと思いつつ。
遠くから花火の音がした。
第13話
「ふぅ」
「帰ったね」
著作権者様が女連れで去っていく。
ヘッドフォンを手にとって自曲を視聴する。
「聴いて判んなかったのかな?」
「パクり?」
「そう」
「俺の曲聴いて無いだろう?」
はい、とヘッドフォンを手渡す。
売り子の女子が隣でヘッドフォンを頭に被る。
「解る?」
「全然」
曲を其のままパクれば大体すぐ解る。
よくある模倣はコード進行だが。
「音楽理論?」
「解る?」
「全然」
「やってないの。全然」
JASRACから勧告が来たとは、言わない。
「ーー敗けでしょ?パクっちゃ。」
******* *******
第3章 vocaloid
第1話
「なんか同じものが出来る」
DAWの譜面を前に頭を抱えた。
新しい曲が作れなかった。
作品には作者の色とか味とか出るのものだが。
そう言ったものを含めて。
マンネリと言う現象が起きる。
どう作っても同じように聞こえるのだ。
或友人はコピーをこなせと言う。
きっと他人の作品に学べと言う事だろう。
或友人はジャンルをこなせと言う。
同じリフでもジャンルが変わればアレンジが変わる。
......行うは難し、だった。
「努力しろ」
未空は事も無げに言った。
「コスも努力とか有るの?」
未空は一考の後。
「人に依って色々」
「次のイベントで引退されるんですか?」
「いや、そんなつもりは」
「では努力するように」
第2話
「回転数、上がらないね」
「まぁ、底辺と言えば底辺だから」
ユーチュの回転数は三桁に至らない。
売れ線、という言葉がある。
売れる路線、という解釈の仕方。
売れ筋、の意味もあるだろう。
が、もう少し言って、売れる臨界線。
売れないから、売れるへシフトする線がある。
そう考えることもできる。
明確にそう言う売れ線を定義するのは難しい。
何を此処迄やれば売れ線ですと言う定義はない。
感性が取りざたされる所以だ。
「すると感性が、駄目、だと」
「いや、そんな筈はない」
「聞いてる曲は売れ線、と」
「作品が売れ線を越えてない」
「手を抜くな!」
何時ぞやのファーストフード。
もう一度探し物だそうだ。
何が見つかる事やら。
第3話
「そもそもさ、何探してんの?」
「自分」
「ああ、rootsね」
知人の家、と言う記憶も結構怪しかった。
隣近所も知らない家ばかりだった。
「御両親に尋ねた方が早くない? 」
「父は昔の事はあまり語らなくて」
「聞けば教えてくれるだろう」
未空は浮かない顔だった。
夕方迄に引き上げて帰路についた。
夕映えでタングステン色に染まる未空。
「あたしって何時まであたしなんだろう?」
未空は昇りの電車に乗って帰って行った。
何時まで、ってずっとだろう?
或時点で自分が他人になる等と想定し難い。
だが10年前の自分と今の自分が同じかと言うと。
意外に保証しきれない気がする。
友だちに電話すると。
「其はあれだ。......未だなわけ?」
何を呑気な、と呆れられた。
第4話
高校は行かないの?と話したことがある。
随分前に行かなく成ったと言う。
高校ぐらい出ておいても、と言うと。
「高校出てないと何か悪い?」
「悪くは無いが不利だな」
『給料が安い』
「資格は取った方が良いだろうな」
「歌歌いに資格居る?」
「プロにでも成るの?」
「この前までプロだった」
「脅して悪かった、よ」
沈むよりは良かった筈なんだが。
高校生ぐらいと言うと。
自我同一性危機の頃ではある。
自分探しなんて沈んでたのかとも思ったが。
何時まで自分なのって。
其れは何時ま自分で居られるの、ってことだろうか?
「専門学校行くとか?」
「あんまり考えてない」
「やりたいことが見つからない内は間口は広くね」
第5話
「Andloidねぇ」
「日本の機密の一つだ」
デジタルズームで見る、Andloid?
「第13世代って殆ど人間なんですか?」
望遠で見るAndloidは見た目粗人間だった。
「ああ、其れはーー」
「隣の男?あれもAndloid?」
「隣は只の人間だ。見た目が殆ど人間なのは」
「あ、こっち見てますよ」
車から覗き見していたら見据えられてしまった。
慌てて車を移動させる。
「とにかく、今見たのが捕獲対象だ」
「どうしたの?」
「なんか見られてる気がして」
信号が変わって一台、黒いワゴンが動き出す。
「気のせいだろ?」
「だと良いけど」
「でどうだったのお父さん?」
「研究室迄来いって」
未空は少し困ったようだった。
第6話
何だか身体が強ばる。
声を出したら上ずりそうだ。
研究室は2LDKのような構造だった。
ガラス張りの向こうリビングには。
人形のアンドロイド。
外装が未だで金属の骨組みがむき出しに成っている。
「13genは修正中でね」
視線が実験場に向けられていたのに気づいたらしい。
「御専門は?」
「心理学です」
「心理回路の設計でも頼むかな」
冗談のつもりらしかった。
「どうした?」
「御人形が」
「ああ、怖いんだっけな」
「12gen.で十分怖いだろう」
12gen.は外皮を含め人間そっくりだった。
「人見知りが激しい子だったんだが」
「気は強いみたいですね」
「宜しく指導してくれ」
第7話
背ノリに失敗したと言う報告を受けた。
権利収奪の段階で失敗したと言う。
背ノリ対象の名簿を確認する。
「そろそろ答えを出してくれよ」
「はい」
バイト先の上司のお誘い。
正社員にならなら無いかと言うお話しだった。
正社員に成るからと言って音楽活動を辞めなければ。
と言うわけではない。
自分の進路を決定付けてしまうことに躊躇いがある。
所謂モラトリアム奈乃かもしれないが。
先が見えない気がした。
「未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」
「ああ、ええ」
「貪ってんのか?其れとも痴か?」
「いや、別に普通ですけど」
「末法で普通って大体三毒だよ」
「何?」
コーラフロートを食べる未空。
此れも三毒の内だろうか?
第8話
「何?プロになる訳?」
「......成れないだろ?」
「じゃ、就職しても良いじゃん」
「レーベルと契約するのも就職試験と一緒で」
企業の商品開発部に就職したようなもの。
市場の動向を見、売れ筋を考え、他の商品と差異化し。
良い商品を作って、販売する。
其れが企業人としての音楽家。
「ーーそう言うことがやりたいのかどうかってこと」
「別にそう言う訳じゃ」
「なら今のままで良いじゃん」
友人はコーラを一気飲みした。
最近上向きと言えば上向きな気がしてた。
うわべの順風満帆。
「其の現在の因を見よ、か」
何だか飢渇の苦が迫ってきそうだった。
先が見えないのはそのせいかも知れない。
ファミレスを後にして自転車置場に向かう。
ポツリと来た気がして空を見上げる。
車、買うにはお金が必要だな。
第9話
ボーカロイド楽曲を口ずさむ自分。
全身鏡に向かってポーズを作る。
ボーカロイドって何だろう?
アンドロイドの最近のトレンドはヘビーデューティー。
メイドロボットよりはレイバー。
大震災の影響でそうなったのだそうだ。
お父さんの研究も14gen.から現場優先に変更らしい。
殆んど人の女性に見える12gen.
研究は成功だったが需要が減ってしまった。
ーーボーカロイド。
歌って踊るヒト型アンドロイド。
歌って踊る鏡の前で。
人だ。
アンドロイドである必然はない。
要らなくなったボーカロイド。
改造されてレイバーになるだろうか。
「お父さん.....は未だ仕事か」
行ってきます、と声をかけて外へ出る。
秋の夜風に吹かれてコンビニへ。
第10話
「目標確認」
「始めるぞ」
コンビニへ入っていく未空。
コンビニの前に夜宴の人々がたむろ。
若干緊張しながら自動ドアを潜る。
入って右に移動して雑誌コーナ-を覗く。
ボーカロイドの雑誌って出来ないなと思いつつ。
立ち読み出来ない雑誌を見送り冷蔵庫の前に。
炭酸はお腹壊すことがあるので女神のコーヒーを。
二本。
ハーフセルフのレジで会計しレジ袋を掴む。
未だ未だに店の冷房が名残惜しい。
もう一度自動ドアを潜ると。
両サイドに誰かついた。
「?」
何かが弾けた気がして
ーー気を失った。
「壊れて無いだろうな?」
「大丈夫だろ…....人間ポイなぁ」
未空を乗せて車は其のまま走り去っ
第11話
「どうする?」
「どうするって......」
横たわったまま動かない女を横目に当惑する。
電撃でショートしたか女は中々再起動しなかった。
スタンガンは電撃として強烈すぎたかもしれない。
触感は人間そのものだった。
肌の質感もだが温度感覚も人間の其だった。
脈を取ってみた。
1分間に70程。
「脈があるよ」
念のため瞳孔反射を確認してみた。
「生きてる」
「クライアントに連絡するか」
「捕獲失敗?」
「どうせ成功報酬だ」
「誘拐、ってことかな」
「実に不味いな」
カーテンの閉まった空きビルの一室。
LEDシェードだけが明かり。
「どうする?」
第12話
「おい。お嬢ちゃん」
頬を叩かれた気がして目を開けた。
そう云えば気絶したんだっけ。
「......」
シェードだけで薄暗い部屋。
何処此処?
「悪い。黙って家へ帰ってくれ」
男二人が手を合わせて此方を向いていた。
「誰?」
「縁も所縁もない何処かの親父だ」
「何のよう?」
「人違いだ。あんたに用はない」
腕時計を見る。
午後11時。
割りと近くで電車の音がする。
窓の向こうは通りらしい。
携帯も有った。
「誘拐か」
「未だ何もしてない」
「気絶した。」
第13話
環状線から郊外へと向かう電車。
深夜でも電車は混んでいた。
弱冷房の車内は少し暑かった。
「じゃあ、その代わり私の以来こなしてくれます?」
「仕方ないな。で、依頼内容は?」
「過去を探してください」
「身上調査?」
「生まれてから今に至るまでの経歴を知りたいんです」
「疑問があるわけ?過去に」
「......ええ」
「信用しないと調査になら無いよ」
「無料でお願いします」
座れずにつり革に捕まって。
何時もは夕日を眺める車窓に深夜の町が透けている。
何だかずっと死んだような街だったのが今は生気がある。
電子音声が到着を告げる。
ドアが開く。
閑散としたプラットホーム。
改札を抜けると待っていたのか声を掛けられた。
「やっと帰ってきた」
//
コメント0
関連動画0
オススメ作品
[イントロ]
「今年こそは」と
目醒め祈る
雪、降らずに
意味もなく
畏怖が付き纏う
日々が続いてく
[Aメロ]
牲(いけにえ)に
成れぬ私の...雪降らず

白紙闇夜
8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞

じん
ゆれる街灯 篠突く雨
振れる感情 感覚のテレパス
迷子のふたりはコンタクト
ココロは 恋を知りました
タイトロープ ツギハギの制服
重度のディスコミュニケーション
眼光 赤色にキラキラ
ナニカが起こる胸騒ぎ
エイリアン わたしエイリアン
あなたの心を惑わせる...エイリアンエイリアン(歌詞)

ナユタン星人
ミ「ふわぁぁ(あくび)。グミちゃ〜ん、おはよぉ……。あれ?グミちゃん?おーいグミちゃん?どこ行ったん……ん?置き手紙?と家の鍵?」
ミクちゃんへ
用事があるから先にミクちゃんの家に行ってます。朝ごはんもこっちで用意してるから、起きたらこっちにきてね。
GUMIより
ミ「用事?ってなんだろ。起こしてく...記憶の歌姫のページ(16歳×16th当日)

漆黒の王子
君の神様になりたい
「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」
「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」
そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。
欲にまみれた常人のなりそこないが、僕だった。
苦しいから歌った。
悲しいから歌った。
生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。
こんな...君の神様になりたい。

kurogaki
ピノキオPの『恋するミュータント』を聞いて僕が思った事を、物語にしてみました。
同じくピノキオPの『 oz 』、『恋するミュータント』、そして童話『オズの魔法使い』との三つ巴ミックスです。
あろうことか前・後篇あわせて12ページもあるので、どうぞお時間のある時に読んで頂ければ幸いです。
素晴らしき作...オズと恋するミュータント(前篇)

時給310円
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想