※諸注意削ったらマズいかなー…
何年も前に書いたテキストの続編です。
まずは前作をお読みいただくことを推奨します。
こちらhttp://piapro.jp/antiqu1927の投稿作品テキストより。
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
〈シャングリラ第二章・三話③~続々・社会進出の為の日常の数々~〉
その⑤
SIED・MASATAKA
参ったな…。
まさか、篠ちゃんが作詞できないなんて…想定外過ぎる。
いや、作曲家→音楽家→作詞もお手の物っていう思い込みが僕の中にあったんだろうな。
これからどうしよう、もうカイトのデビューの日は決まったし、詞だけ誰か別の人にお願いするって手もあるけど…。
でも、それでカイトが納得するか…?
「マスター、もう泣かないでください。大丈夫ですよ、俺が傍にいますからね、」
「ん、…うん、…、」
…ダメだコイツ、篠ちゃんが弱体化したのをいいことに、セクハラに余念がない。
目尻や頬や唇を何度も啄んでは、流れる涙をいちいち舌で掬っている。宥めるように背中をさすっていた手は、いつの間にか肩口から襟元に滑り込み、シャツのボタンを…っていい加減にストォォォォォップ‼‼‼
「カイト‼当たり前みたいにセクハラしない‼そんなコトしてる場合じゃないでしょうが‼‼」
「…あれ?正隆さん、まだいたんですか?」
あああああもうコイツの神経回路どうなってんのさ‼⁇さっきのメンテは何だったの‼‼⁇⁇
誰がプログラム組んだんだよ、全く…親の顔が見てみたい…って、僕かorz
「あのね…篠ちゃんが作詞できないってことは、カイトの活動にも支障が出るってことで…、」
事の重大性がわかってないのか、カイトは不思議そうに首を傾げている。
「…マスターは、ちゃんと作詞できますよ?」
…え?
思わぬカイトの言葉に、篠ちゃんも顔を上げた。
「…できないよ、」
小さい声で呟く彼女に笑いかけ、カイトが唇を開く。
「できないよ♪」
妙な節回しで返ってきた同じ言葉に、篠ちゃんがきょとんと眼を瞬かせる。
「…えっと…カイト?」
「えっとぉ、カイト♪」
…………?
「…ねぇ、マスター?何でもいいです、思いつくまま喋ってみてください。その言葉一つ一つにメロディーをつければ、歌になるんですよ、」
「言葉一つ一つ…?」
「そうです、何でもいいんです。今頭に浮かんだ単語を、いくつか教えてくれませんか?」
「…猫、水、本、窓、オムライス、」
「今度は、形容詞つけてみましょう、」
「…可愛い猫、冷たい水、分厚い本、歪な窓、大きなオムライス…?」
「あとはメロディーを乗せるだけです。ほら、簡単にできたじゃないですか、」
にこにこ笑っているカイトにつられて、篠ちゃんの顔にも笑顔が戻る。
「…何それ、変な歌。やだよー、もっと格好いい歌とかのがいいー、」
「変じゃないですよ。無理に格好つけたり、取り繕う必要はありません。あなたの中から生まれてくる言葉は、全て俺の大切な…、」
「はいストーップ‼いちいちセクハラしない‼」
またやらかそうとするカイトのマフラーを引っ張り、教育的指導という名の強制終了。
「…何か一つ言葉が出れば、連想ゲームのようにいろんな関連単語が自然に浮かんできます。それをパッチワークの要領で入れ替え繋いでいけば、それらしい歌詞が出来るはずです。俺のマスターなら、すぐに慣れて複雑で多彩な柄のパッチワークが出来上がりますよ。だからもう大丈夫です、正隆さんはお戻りください、」
穏やかな口調とは裏腹に、僕を振り返るカイトの眼が、さっさと出て行けと言っている。落ち着け、ここでイラッとしたら僕の負けだ。
「凄いね、カイト。どこでそんなこと勉強したのさ、」
「秘密です、マスターをサポートするのも俺の役目なので、とだけ言っておきます、」
カイトはおもむろに立ち上がると、一向に動く気配のない僕の背中を押して、半ば強引に玄関へ連行。え、ちょ、実力行使に出たな⁉決して強く押されてるわけでもないのに、絶妙な力加減であっという間に通路に出されてしまった…。
「それと、一つ言っておきたいのですが、」
「何?」
「俺がしているのは『セクハラ』ではなく、『スキンシップ』なんですよ、」
「は?…え、待って、」
僕の声を遮って、ガタンと目の前で閉められたドア。
そうか、スキンシップか、物は言いようだな。
まぁでも、篠ちゃんが立ち直ったなら、何だっていいや…。
三話④へ続く
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