近頃、めっきりと数が減ってしまった電話ボックス。今では誰もが携帯を持っているから何の不便も感じない。その珍しくなった箱が、家路の途中にぽつりと立っていた。長年そこを照らしていた街灯は古ぼけて、あまり綺麗とはいえない光を放っていた。そこに差し掛かる度に不気味に感じ、いつも歩みを速めるのだが、今日はふとそこの前で立ち止まってしまった。
中に少女がいる。
受話器を持ってはいるが誰かと話している様子はない。しかし、なぜここにいるのだろう。今は日付が変わる少し前。普通に考えて、この時間小さな子供が出歩いていることなどありえない。しばらく少女を見つめていると、受話器が元ある場所に戻り、扉が開く。こちらに気付いた少女がこちらを向いた。その瞬間、背筋に悪寒が走る。自分はあまり好ましいとはいえない状況に遭遇してしまったのかもしれない。
少女が近づいてくる。
しかしその場から動くことができない。体の震えを必死に隠して自分を見上げる少女を見つめていると、ゆっくりと口が開かれた。
「お兄さん、どうしたの?」
小さな口から発せられたのは汚れの無い艶やかな声で、自分は何に恐れおののいていたのか忘れてしまうほど透明なものだった。否、今もなぜ身震いしたのかは分からない。不安そうにこちらを見つめていおる少女に何か言わなければと、硬くなっている口を無理矢理に開く。
「あ、あぁ…ここの電話ボックスを使う人は滅多にいないし、君みたいな小さな女の子がこんな夜遅くに一人でいるなんてどうしたのかと思ってね」
すると少女はにこりと笑って、鞄を持っていない方の手をとった。
「私ね、電話してるんだ」
正直、電話ボックスにいるのだから電話をしているのは当たり前だ。だがあえてどこへと少女へ言葉を返す。すると返ってきたのはまるでSF映画のような答えだった。
「未来だよ」
「………み、らい…?」
「そう、未来だよ。日付が変わる少し前、ここの電話で電話を掛けると、ちょっとだけ未来と繋がるんだよ」
「そんなことができるの?」
「来週の今日、0を3回押してみて?そうしたらわかるよ。お兄さん、名前は?」
「僕は……憂」
「ばいばい、憂さん」
あの少女は一体誰だったのだろう。大体、未来に電話が繋がるなど有り得るはずがない。
これは夢物語なのか、それともホラーか…
しかし僕は翌週、また同じ場所で足を止めていたのだ。
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