今日もいつもの様に
起きて来たマスターが
仕事用のパソコンの前に座る。
俺は、いつもの様に
邪魔にならない程度の音量で歌を歌う。
昼前に部屋を出て行くのは、近所のコンビニに昼食を買いに行くためだ。
いつもの様に日常が過ぎて行く。
「今日は3時頃に客が来るぞ。」
昼食にコンビニ弁当を食べながらマスターが言った。
「客?」
「アンドロイドの常連客がメンテナンスにな。」
玄関のインターホンの音にマスターが応対に出る。
マスターと一緒に入って来たそのアンドロイドの女性を見た瞬間。
俺の脳裏に一つの名前がよぎった。
MEIKO
それに関する名前以外のデータは、
俺の中にはなかったけれど。
見た目は人間そっくりだが、
人間に聞こえない周波数でかすかに機械音がする。
<彼女>は、俺の方にやって来た。
「あら、そのパソコン、いい男ね。」
「あー、そいつはKAITOって言うんだ。
俺の為に歌を歌ってくれる。」
マスターがいろいろ準備しながら言った。
<彼女>がマスターの方を向く。
「うまいの?」
「KAITO、昼飯前に歌ってたやつ、歌ってくれ。」
「はい、マスター。」
俺は、昼前に歌ったバラードのデータを呼び出した。
メンテナンス作業をするマスターが、
サビを口ずさむのが小さく聞こえる。
「声、優しいんだ。
同じアンドロイドだったら惚れるかもね。」
俺に微笑みかけてくれた<彼女>に、
メンテナンスを終えたマスターが
残念そうに言う。
「KAITOはシステムが古いくせに
必要スペックが高すぎて、
普通のアンドロイドには移植不能だ。
でなきゃとっくにやってるさ。」
「それは残念!」
そう言って、
作業台から降りた<彼女>は俺の前に来た。
「またメンテに来るから、
その時も何か歌ってくれない?」
本来は、
マスターのために歌うのが
Vocaloidなのだが。
<彼女>には、
なぜか淡い親近感の様なものを感じた。
「マスター、いいですか?」
俺はマスターに確認をとっていた。
「ああ、後で一曲教えてやる。」
「お願いします。」
そのやり取りを聞いて、
<彼女>はまた微笑んでくれた。
「楽しみにしてるわ。じゃ。」
出て行く姿を見送った所で、
まだ名前を聞いていなかった事に気付いた。
戻って来たマスターに聞いてみる。
「彼女か?メイコだ。」
彼女を見た時にその名前が浮かんだ事、
そして親近感を感じた事をマスターに言ってみた。
「ああ、お前と境遇は似てるかもな。」
マスターが思い出す様に言った。
「誰かが作った古い自作アンドロイドを、
今の所有者が拾って修理したのが彼女だ。
声のデータが歌唱向けだったから…
元はお前と同じ様に歌を歌うソフトだったのかもな。」
いつか機会があったなら。
彼女の歌を聴いてみたい。
マスターに聞かせる次の曲を選びながら、
俺はそんな事を思っていた。
小説版「カイトの消失」1.5
こちらは以前某動画サイトに投稿した文字読み動画のストーリーです。
(動画1.5話目はこちらhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm3157497)
動画見る時間がない方はこちらをどうぞ。
舞台はアンドロイドが普通にいるような、少し先?の未来。
勝手な設定がてんこもりに出て来ます。
ちなみにマスターは男です。
KAITO兄さんの一人称は「俺」です。
視点は主にKAITO兄さんです。
動画と違って会話を色分けしていないので分かりづらいかもしれません。
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そして、この舞台を終わらせるために、沢山のことを試してみた。
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ゆるりー
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