「15」です。これは本当に見た夢を基にした話です。
パラレルでオリキャラが少し出ております。
若干描写がグロテスクかもしれませんので、苦手な方はご注意ください。
パラレル、オリキャラ、グロ、全て大丈夫な方はスクロールでお読みくださいませ。










>>15



 どれぐらい時間が経過したのかわからない。雨は止むことを知らず、俺たちを打ち続ける。
 俺の体力はとっくに底をつきかけているはずで・・・いつもなら動けなくなっていてもおかしくないぐらいの疲労感が体を襲っていた。それなのに、何度倒されても俺の体は何かに操られているかのように何度も立ち上がっていた。自分の意志なのかどうかもわからないほど反射的に。
 夥しい血が流れているはずなのに、何故俺は動けるんだろうか。そんな風に考えてしまうほど、俺は大量に出血していた。AAAの誰かに撃たれた最初の傷口から、足を動かすたびに血が流れ出る。もう致死量を超えていてもいいぐらいで・・・もう動けなくなってもおかしくないぐらいで、それをどうにか支えているものはやっぱり気力なんだろうか。それとも・・・ハルが俺の背中を押してくれているんだろうか。
 流れ出た血は、雨でコンクリートの地面を流れていく。
「・・・っは・・・こりゃ・・・負け、らんねぇな・・・ッ」
 まだ余裕綽々のルカを前にその言葉を吐き出すと、彼女の口が弓なりに曲がって歪んだ笑みをかたどる。それが悲しそうに見える俺は、きっとどうかしてるんだろう。
 俺は未だにルカを信じたいと思っていた。どこかに理性が残っていて、きっと対峙していればいつか元に戻るんじゃないかと。同時に、もう彼女が戻ってこない気もしていたのだが。
「あのお方に傷をつけたこと、許しませんわ」
 え、と声を漏らしたすぐ後で、距離を保っていたはずのルカが視界から消えた。かと思えば、一瞬にして至近距離。剣を後ろに引く動作が、酷くスローモーションに見える。ああ、これは当たるパターンだ・・・なんて妙に冷静に考えながら、足で思いっきり地面を蹴った。
 鼻先を掠めていく剣。寸でのところでその切っ先をかわした俺は、膝から力が抜けていくような感覚に襲われた。限界を突破しているらしい足が笑っている。
「絶対に許しませんわ」
「・・・正気じゃねぇな・・・あのお方ってのはファザーのことかよ?」
 寧ろ俺が傷つけられてる方なんだけど、と声を漏らして笑うと、ルカの体がぴたっと動きを止めた。
 何だ・・・?今の言葉に反応したのか?・・・それなら、一体どの言葉に反応した?
 「正気じゃない」?いや・・・「あのお方」か、それとも・・・「ファザー」?
 ルカの手から剣が滑り落ち、その両手がゆっくりと頭を抱える。
「あ、あぁ、ア、あ・・・アアあぁぁァァァァぁッ・・・!」
 何だ、何が起こっているんだ?
 急に苦しそうに頭を抱えたまま俯いて吼えるルカに、一瞬戦意喪失した。足が笑ってることも、体の疲労感も吹っ飛ぶほど、ただ叫ぶルカを凝視する。
 助けられるなら、助けてやりたいと思うのは・・・おかしいんだろうか。
「ルカ・・・?」
「誰・・・ッ!わたくしは、私は・・・ファザーのためにっ・・・・・・あの、お方なんて・・・!」
 どうやら記憶がぐちゃぐちゃになって困惑しているらしい。
 ルカは頭を抱えたまま首を何度も横に振った。全てを否定するように・・・うわ言のように何度も何度も「違う、違う」と繰り返す。
 「あのお方」=「ファザー」ではないのか。
 ふと・・・頭の中で、俺が撃たれた時のルカの叫び声が蘇った。はっとする。
 ああ、もしもそうなら・・・ファザーが「あのお方」ってわけじゃないなら、もしかして「あのお方」っていうのは・・・。
「――『シュン』じゃねぇか?」
 びくんとルカの体が跳ねる。明らかな反応。
 ああ、こいつは・・・本当は壊れてなかった。狂ってなかった。今もちゃんと自分の意識があって、どうにか狂気から逃げ出そうと抗ってるんだ。
「なぁ、『あのお方』ってのは・・・俺のことじゃないのか?」
 命令と自分の中の狂気に苛まれながらでも、前の記憶があるのなら・・・もしかしたら俺は、お前を手にかけなくていいんじゃないか。そんな思いも重なって出た安堵の色が滲んだ声だった。
 ルカは数回首を横に振った後で「違う違う違う・・・ッ!」と何に言っているのかわからない言葉を繰り返す。それは俺の言葉に対しての返答だったようにも聞こえたし、自分の中の何かに訴えているようでもあった。
「ルカ」
 名前を呼ぶ。それは今の彼女ではない彼女を呼び寄せるための声。心が繋がっているというのなら・・・考えていることがわかるというのなら、心の奥底にいる本当のルカに俺が呼ぶ声が聞こえるはずだと。
 ルカの口が小さく開いて「やめて」と掠れた声を発した。それでも俺はただルカを見据えて呼んだ。
「ルカ」
 何回もその名前を口にする。その度に首を振られようが「やめて」と言われようが、止める気はなかった。そうしたら戻ってくるんじゃないかと思っていたからだ。戻ってこい、お前なら戻ってこれるはずだ、と・・・俺は強く信じていた。
 だがそれも、一瞬聞こえたザザという砂嵐のようなあの音のせいで掻き消えていく。希望は、急速に萎んだ。
 俺がその音に気を取られて上を見て、また視線をルカに戻した時には、彼女は狂ったあの笑みを浮かべていたから。雨に濡れた顔で・・・狂気の色を宿したあの目で。
「えぇ、そうですわ・・・あなたを殺せばいいのですわ。
 私の中の何かが渇望していますの」
 その言葉は、とても残酷な響きを持って俺に襲い掛かる。ズキズキと胸を打つ痛みは、今まで受けたどの傷よりも深くきつい。
 今あの製作者は、画面の向こう側で笑っているのだろう。思惑通りに事が進んで。
「私はただあなたの命が欲しいのです。ですから、その命を私にくださいな」
 笑うルカを前に、俺は銃のグリップを強く握り締めた。
 「・・・いちいち邪魔しやがって・・・」と苛々する気持ちを我慢することなくそのまま吐き出す。
 ルカの言う気持ちは・・・俺への執着はおそらく、以前の記憶が残っているからだ。シュンというマスターと一緒に行動していた時の記憶が強く残っていたから、今もルカは俺を執拗に狙う。いや・・・俺がそう思いたいだけなんだろうな。俺は、あいつの記憶の中にいるって思いたい。まだ信じていたいんだ。信じるなって方が難しい。
 だって俺は、
「あ・・・?」
 今、何を考えようとしていた?だって俺は・・・・・・?
 待てよ、だってその先は・・・なぁ、違うだろ。
「はは・・・嘘に決まって・・・っうわ!」
「さぁ、早く避けなければすぐに終わってしまいますわよ!」
 切っ先がゴーグルの横を掠めて、俺は思わず後ろに退いた。どこの女王様だ、と思わず出そうになった言葉を飲み込んで銃をぶっ放す。もちろん慌てて撃った銃弾が当たるわけもなく、ルカの足元で水が跳ねた。
 次々と繰り出される斬撃を何とか避けながら銃口をルカの方へ。ひゅっと口から息が漏れる。
 自分の心の中がわからない。ルカは、俺にとって何だ?ルカは・・・ルカ、は・・・・・・生意気で我侭でどうしようもないぐらい女王様で・・・でも、時々少し微笑んでくれるところとか、俺を気遣うところとかはすげぇ可愛くて綺麗で。そんなルカは俺の大切な、
 口元に自然と笑みが漏れた。
 ――ああ、何だ。今までもわかってたことだったのに・・・わかりきってたことだったのにな。
「・・・・・・終わらせる」
「それはこっちの台詞ですわ」
 これ以上、お前の苦しんでる姿は見たくない。叫ぶお前も、俺や製作者の声で頭を痛めるお前も・・・もう見たくない。だから、終わらせる。それに・・・多分笑っても泣いてもこれが最後のチャンス。俺の足腰はもう限界で、立ち続けるのは困難だろう。麻痺しきった足ではもうこれ以上戦いを長引かせても意味はない。
 だからこれが最後の一撃。
 銃を構えて突っ込む。ルカも剣を構えて走ってくる。
 視線がかち合ったまま銃の引き金を引く。ルカの手が剣を一振りし、空を引き裂いて突き出される。真っ直ぐに俺の腹部へと突き進んでくる剣。
 一発の銃声。
 鈍い音。
 刹那、飛び散る赤。

 ポタ、ポタ・・・

 雨水と混ざって落ちる、赤い液体。
 鋭い痛みに塗れて初めて抱くルカの体は、まるで本物の人間のように温かで自然と涙が零れそうになる。これが幻でも縋りついていたいと思うほどにその温かさが心地良かった。
 ルカの体を抱きしめたまま少し視線を下に動かす。一番最初に俺の視界に入ったのは、ルカの左胸元に空いた小さな穴。その傷口からは大量の血が流れ始めていて、力の抜けたルカの体は俺へともたれかかってくる。その後に視界に入ったのは、ルカの手が握り締めたままの剣の柄。鋭い光を帯びた刃は赤く塗れ、俺の体に埋まって少ししか見ることができない。多分俺の姿を後ろから見ると、まるで背中から刃物が生えたように見えるに違いない。
 心音が傷口から聞こえている。痛みというより、それを越すぐらい寒気がしていた。多分、血がもう底をつきかけてるんだろうと思う。この世界で出血多量で死ぬなんて俺ぐらいなもんじゃないだろうか。
 震える手でルカの体を強く抱きしめなおす。
「ルカ・・・ごめん、な」
 辛かったよな。でも、もう終わりだから。
 本当は傷つけたくなんてなかった。いつまでもって言い方はおかしいけど、最後まで一緒にいたかった。
「心配かけて、悪い・・・今まで・・・ありがとう、な」
 俺の声は途切れて、それ以上は声にならない。苦しいというか、声を出そうとすると血が込み上げて口内が血でいっぱいになる。感謝の気持ちも謝罪の言葉も本当に最低限のことしか言えない自分が歯痒い。
 そんなすっきりしない気持ちのままの俺の耳に、ルカの吐息が聞こえてきた。人間らしいそれに、思わず目を見開く。

「・・・シュン・・・様・・・?」

 その声が嬉しくて、嬉しすぎて・・・涙を止めていた何かが決壊する。口内の血を吐き出して、小さく咽た。
 ありきたりなゲームとか漫画とかの展開だなってどこかで笑ってる自分がいて、そんな中で・・・すげぇ安心してる自分がいた。最後の最後、ルカは元に戻ってくれたんだって。打ち勝つことができたんだって・・・俺の言葉も無駄じゃなかった気がして、ルカを抱きしめる手に力を込めた。
 でも何故かその手に力は入らなくてダラリと垂れ下がる。
 ルカの俺を呼ぶ声がどんどん遠ざかって・・・俺の視界も意識も、そのまま消え去ってしまった。













>>16

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Elysian 15

お前ってヤツは・・・!とツッコミつつ・・・。
「17」が最終になります。なので、あと2回っ!
最終話はいつもと同じように「>>」で繋げますので、タイトル見ればすぐにわかるようにしておきますね。
それでは、あと少しだけお付き合いください。

今更ですが、書き方変わったのではなく仕様です・・・とある方に「(以前と書き方)変わったよね」と言われたので・・・。
姫騎士で一度やったのですが、続けるには辛くて消した記憶が。
やってみるとやっぱり時間がかかって一日一更新!なんてことは言えなくなってしまったのですが・・・一体どちらがいいのやら。
まぁ・・・話に合わせて変えることにします。

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閲覧数:186

投稿日:2009/05/07 21:47:31

文字数:4,412文字

カテゴリ:小説

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    >>ちくろさん
    こんにちは、ちくろさん。
    この話でいろんな人の叫び(悲鳴?)を聞いた気がします・・・。
    シーンが脳内映像化!すごいですね。それもちくろさんの想像力のおかげかと・・・!
    自分ではやっぱり上手く書けずに悔しいところも多々あるのですが、「毎回感動しています」と言われると書いててよかったなと勇気付けられます。
    そんな嬉しいメッセージを糧にして、残り2回頑張りたいと思います。
    「16」はギリギリ今日か、間に合わなければ明日になりますので、また読んでいただければと思います~。

    2009/05/08 17:23:19

  • こか

    こか

    ご意見・ご感想

    シュンンンンn(ry
    凄いです!シュンとルカの相打ちシーンが脳内で勝手に映像化していました!
    残り後2回、頑張って下さいw

    ミラクルな展開に毎回感動しています…v

    2009/05/08 17:09:05

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    >>C.C.さん
    こんばんは、C.C.さん。
    嘘の記憶を植えつけられたというか・・・何というか・・・。
    な、何と!泣かせてしまったようで!
    自分は別にそういう風にさせようと書いたわけでは・・・!(オロオロ
    しかしそれは自分の表現力のおかげなのか、C.C.さんがこの話に入り込んでくださってたおかげなのか・・・後者の方だと思うのですが・・・そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます。
    最終話は「17」なのでもう少ししたら終わりで・・・明日も仕事休みになったので、もしかしたら明日うpしてるかもしれません。
    また次の話も読んでいただけると嬉しいです。それでは。

    2009/05/08 00:27:49

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    その他

    >>つんばる様
    こんばんは、つんばる様!実は自分も、携帯を見て投稿時間が近いことに驚きながら運命を感じました(笑
    それよりも投稿してた話全てを読んでいただいただけでも嬉しいのに感想までいただいてしまって・・・じ、自分も勇気が出たらお邪魔します・・・(今じゃないのか いえ、もう近いうちに必ずや・・・!

    感情移入するほど真剣に読んでくださったのですか!感謝ですっ!
    確かに前作はゆるゆるで鬱々してた気はしてます。そういうのが得意らしいので、自然とそうなるみたいで・・・。実はこういう話書くのも好きだったりしまして・・・ちゃんと表現しきれないというのが悔しいところなのですが、頑張ってます。
    自分は独自解釈小説なんて書けませんので、捏造と言いつつ自分の解釈で書けるつんばる様が羨ましいです。
    書き方の件もコメありがとうございます。書き方が変わったといいますか、長いか長くないかの違いといいますか・・・自分ではそれぐらいしか変わってないと思ってます。書く時間が変わるだけで自分の中では同じ書き方なんですね、実は。

    新城Pですか。確かに・・・合うかもしれません。
    BGM聴かなくても手が動くというのはいいですね!
    パソコンか携帯があれば続きが書けるとは・・・!(その言い方もどうだ
    クラシック聴かれるんですね。それが少し嬉しかったです。

    この先自分でもどうなるやらなのですが、シュンやルカに任せたいと思います。
    来週中には完結予定なので、またお暇な時にでも読んでいただけるとありがたいです。
    では、丁寧なメッセージありがとうございました。

    2009/05/08 00:21:16

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