第五章~紅の雨夜~





ぬかるんだ地面が足元でグチャリと音を立てた。
雪が解けて、一部の土が露出している。
まだ残っている雪の部分も既に白くは無く、幾つもの薔薇が咲き誇っていた。
それを踏み潰すと、サクサク音を立てながら地面を塗らしていき、そしてまた、グチャグチャと不快な音を立てた。
無心に地面を踏みつける少女の頬もまた薔薇色。足元の雪と薔薇は枯れぬよう必死に呼吸を繰り返す。そして少女の腕には金の輝きを見せる、薔薇の露。大変美しいものがそこには集められている。
だが第3者の誰もが、この光景を見れば一目散に逃げ出すだろう。目の前の死から目を背けて。
しかし少女は、その唇に深い笑みを刻んだ。美しい瞳は狂気と歪んだ愛情を含んでいる。
「任務、完了いたしました」
小さく呟くと、踵を返し黒い山を降っていく。
煌く露に必死に手を伸ばす薔薇と、紅く踏み潰された雪の憎悪も知らず…

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説】或る詩謡い人形の記録

1ページ目。

どれだけ長い間投稿してなかったんだw
今回は4ページと、今までより少し長くなっております。
ちょっと中二臭くなってきてる…気がする…orz

閲覧数:458

投稿日:2009/08/24 13:19:27

文字数:392文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました