***ルカーナ=エンジェラント ―婦人の部屋にて―***
「彼女を、養女に致します。」
窓から庭園を眺めながら、婦人は確かにそう言った。
私は一瞬、耳を疑った。危うくもう一度聞き返しそうになった。
「…は、はぁ…。しかし、なぜ…?」
「心の移り変わりというのものです。私ももう永くはないし、未練を残しておきたいのです。」
「み、未練など…。私がいるのではありませぬか…?」
そう言ってから、はっと口を押えた。
「こ、これはご無礼を!」
急いで頭を下げる。
「良いです。頭を御上げなさい。」
私はゆっくりその通りにした。
「……彼女は、私によく似ています。」
「…え。」
「ルカーナ。貴方にはとても感謝しています。身よりのない私に、いつでも家族の様に接してくださいましたね。いつも、どれだけ心強く幸せだったことか…。」
婦人の突然の感謝の言葉に、私は少し戸惑った。
「い、いえ…。そのようなことは…。」
「ルカーナ。この家と彼女を頼みますよ。」
「…婦人…。最期のようなことを申し上げないでくださいませ…。」
私はこみ上げそうになる涙を堪えた。
婦人は、何も言わずに微笑んだ。
それが、私と婦人の最後の会話で、私が婦人の微笑みを見た最後だった。
***ミーリア=グランシェラ=リンヌ=アリンネ ―庭園裏にて―***
16歳になった。いや、詳しくは17歳だけれど、この国では16歳。
けれど、誰もお祝いなんてしてくれない。
まぁ別にいいのだけれど。昔からこうだったから。
産まれてから一度も、私は誰かに誕生日を祝福されたことなど、ない。
「ミーリア様!」
げっ、この声は…。
「ここにおられたのですか!まったくもう!」
ルカーナ!いつも私の考え事を邪魔するヤツ。
「今日は自由に出歩いてはいけないと言いましたでしょう!」
どう見てもまだ若々しいルカーナ。でも、私の二倍の年齢は超えているだろう。
ピンクの長いロングの髪に、恐ろしく整った顔。落ち着くキレイな声に、清楚な貴族服。
家の使用人の男は、一度は気になるものらしい。
「あーあー!わかったよぉ、もぉ!」
私は芝生に大の字になって寝ころんだ。
「あぁ!一大の姫様が何てことを!お直りなさい。」
ルカーナは私の家庭教師でもあり、生活の教師でもある。
「別にいいじゃない…。どうせ誰も見やしないわよ…。」
だんだんと言い返すのも面倒くさくなってきて、私はあいまいに言葉を発した。
「とにかく!今日はだめです!お部屋にお戻りになってください!」
「何よ、今日なにかあるの?」
そのとたん、ルカーナの形相が変わった。
「……ミーリア様……。お逃げください…。」
ルカーナが、つぶやくように私に言った。
「…何よ。何かあったの…?」
私は体を上半身だけ起こし、ルカーナを見る。
「…ルカーナ?ねぇ、どうしたの?」
「ここは危険です!!お逃げください!!」
ドンッ。
鈍い音がした。
その後はよく覚えていない。
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「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
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kurogaki
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