窓から差し込んでくる朝日と鶏の鳴き声で目が覚め、私は瞼を擦りながらゆっくりと身体を起こした。
まだ半分意識が眠っているまま水色のエプロンドレスに着替え、縁にレースがついた三角巾で長い髪をまとめる。
次にキッチンに行き、たまたまラップして置いてあった骨付き肉を持って再び部屋に戻ると、ペットの鶏(将来はフライドチキン)のとり子の前にそっと置いてあげた。
骨付き肉を前に「コケッ」と首を傾げるとり子に、ようやく意識が完全に覚醒した私は笑顔で、
「とり子ー、朝のご飯だよー」
「…………」
「ほら、ご飯食べないと大きくなれないよー(肉的な意味で)」
「…………」
「仕方ないなー。私が食べさしてあげ──」
「──ちょっと!」
突然声を荒げながら勢いよく部屋の扉を開けた叔母さんは、私がとり子に食わせようと手にした肉を見るなり、ただでさえ皺の多い顔をさらに皺くちゃにさせた。
「何やってるの?! それはあの人の骨付き肉じゃない!」
「あ、えっと叔母さん、これは、その、とり子に餌をあげようとして──」
「餌ぁ!?」
叔母さんは間抜け面で私の言葉を復唱すると、それは見る見るうちに般若と化した。
そしてその顔のまま叔母さんのキーキー声に既にビクついている私に構わず怒鳴り散らしてきた。
「──餌ってまさか……骨付き肉を!? あなた一体何を考えているの?!」
あ、これはマズイ。
激おこぷんぷん丸並みの叔母さんの怒りように、私は何とか鎮めさせようと必死に弁論を試みる。
「で、でもとり子だって──鶏だって、草ばっかり食べてもあまり健康的じゃないと思いませんか? たまには肉を食べさせるのも……ねぇ、とり子?」
「……コケッ」
私は縋るような思いでとり子のほうを見る。
が、とり子は「お前馬鹿じゃないの」と言わんばかりの冷やかな目で私をじとりと見つめるだけだった。
──畜生、コイツ絶対いつかフライドチキンにしてやる!
「おい、朝っぱらから騒がしいぞ」
「あなた!」
とり子にも完全に裏切られると、叔父さんもやって来てついに私の分が悪くなってきた。
しかもさっきの叔母さんの怒鳴り声で起こされたのか、叔父さんの機嫌がすこぶる悪いのが見るだけで分かる。
叔父さん寝起き悪いもんね……
「一体何をしているんだ」
「この子が朝食の骨付き肉を鶏の餌にしようとしたの!」
「…………おい」
激おこぷんぷん丸──いや、激おこスティックファナイナリアリティぷんぷんドリームの叔父さんに私は必死に言い訳を考えるが、ダラダラと嫌な汗が流れるだけで、ただ叔父さんの剣幕に押されていた。
「…………今日の遊園地、お前だけ留守番しなさい」
「……………………」
叔父さんの言葉に、私は折れんばかりの勢いで何回も首を縦に振った。
*
──数ヶ月前、不幸な事故によって私は両親を亡くした。
そして私は父の弟である叔父さんと、その妻の叔母さんに引き取られた。
だが二人になかなか馴染めず、今日だって、三人で遊園地に行く予定だったが、結局一人だけお留守番させられてしまった。
「はぁ……」
私は溜息をつきながら、窓際に肘をついて青い空をぼーっと眺めた。
昔からロマンチストで飽きっぽい私には、今の性格がとても窮屈にしか感じられなかった。
果てしなく広がる青い空の下の何処かではきっと、私みたいにつまらなくない、素敵な冒険がある。
そんな妄想を描いているといてもたってもいられなくなり、私は「竜巻とかで、家が飛ばされたりしたらいいのに」なんて独り言を呟いた。
──そのときだった。
外から地響きにも似た唸り声が聞こえてきて慌てて見てみると、そこには地面や家畜たちを巻き込んでこっちに向かってくる竜巻の姿が!
逃げようとするが、それすら叶わずにスグに私の家も竜巻に飛ばされた。
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そしてとり子の悲痛な鳴き声を最後に、私の意識が真っ黒になった。
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ご意見・ご感想
しるる
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2014/07/05 20:39:42
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とり子ーーーーーーー!!(ちなみにとり子はリンレン登場シーンで出てくる予定←)
2014/08/01 02:24:07