だって不公平じゃない。                                               


「ねぇ、レンちゃん?」                                                 

「なんだよ・・・?」                                                   

愛しい、愛しい、レンちゃんが私を睨み付ける。そんな顔しないでよ私、悲しい。                               

「レンちゃんは幸せ?」                                                   

「幸せな訳ねぇだろ・・・。俺は早くミクの所に帰りたいんだよ。」                               

ミク・・・あの女か・・・。私今どんな顔してるんだろ?それにしてもレンちゃんは馬鹿だなぁ。あの子はレンちゃんを殺そうとしたんだよ。ねぇ、ねぇ、こっちを向いてよ。                             

「例え、ミクさんがレンちゃんを殺そうとしても?」                                   

「そんなことは分かってるんだよ・・・でもなミクは約束してくれたんだよ。」                          

「レンちゃんは馬鹿なの?そんなの口だけだよ。」                                      

「うっせぇ・・・証拠もないのにグダグダ抜かすな糞女。」                                   

ひどい、糞女だなんて。私、レンちゃんのこと大好きなのに。レンちゃんのこと思って言ってるのに。どうしてなの?                                                               

「レンちゃん、ミクさんはねレンちゃんを殺そうとしたんだよ?それに変わりはないの。レンちゃんはいつ殺されるか分からないんだよ?ねぇ、分かる?分かるよね?」                                 

「分かるわけねぇだろ。頭おかしいじゃねぇの?」                                      

レンちゃんは不敵に笑う。かっこいいよ、ますます好きになっちゃう。                                 

「そうだね、私ちょっとおかしいかも。」                                          

「だろ?」                                                        

「そう言えば、まだキスしてなかったね。」                                         

「はぁ?俺はミク以外とキスはしない。絶対にだ。」                                      

「いいじゃない。減るもんじゃないしね。」                                      

「ミクが知ったら傷つくだろ。」                                            

ミク、ミクうるさいなぁ。別にいいじゃない。                                         

「大丈夫よ。それにあなたが抵抗できると思う?」                                        

私は彼の格好を見て笑う。両手首には手錠が嵌められていた。                                   

「・・・っ・・・。」                                                 

「ね?できないでしょう?」                                                   

「お前・・・何が目的なんだ。」                                                  

どこぞの刑事ドラマの様な台詞に笑ってしまう。「あなたの愛が欲しい」と言ったらどう思う?どうも思わないよね。もう思ってくれないよね。                                            

「うーん・・・特に目的はないの。遊びたいだけ。」                                      

喉まで這い上がって来た「あなたが欲しい」と言う言葉を飲み込んだ。                             

「遊びでもこんなことするなよ!俺はお前と遊びたくない!!」                                

「じゃあ・・・遊びじゃなきゃいいの?」                                           

この思いはもう遊びのレベルではないの。                                             

「どっちにしろ・・・俺はお前と一緒に居たくない!名前も教えてくれない奴なんかと一緒に居られるかよ!!」                                                        
え、そこ?あぁ、相変わらず面白いなぁ、レンちゃんは。                                       

「だって汚い名前だもの。それに名前教えてないほうがかっこいいでしょ?」                          

「どこがかっこいいかさっぱり分からない。」                                       

「あはは、そう言うと思ったよー!」                                           

「・・・てか、何で和んでんの?」                                                  

「いいじゃない。張り詰めた空気よりはいいと思うんだけど?」                                  

「まぁな・・・。」                                                    

レンちゃんは悔しそうに顔を歪める。あぁ、可愛い。                                      

「ねぇ、身の上話でもしない?」                                             

「どうして?」                                                   

「レンちゃんのこともっと知りたい。」                                         

「教えてやんないよ。」                                                 

「教えてくれないとキスしちゃうよ?いいのかな?」                                       

「分かったよ・・・。」                                                        

「えへへ、嬉しいな。」                                                   

私は君のこと全部知ってるよ。君が覚えてないだけなの。なんで私が君の事を「レンちゃん」って呼ぶか分かる?ねぇ、ねぇ、思い出して。私が本当の人魚姫なんだよ。ミクさんって言う悪い魔女がレンちゃんの記憶を消して、私から役目を奪ったの。だからね、こうするしかなかったの。だってあの子は醜いから私はレンちゃんに近づけない。                                                  

「俺は至って普通の家庭に生まれ、普通に育った。」                                  

私はしゃがんで彼と目を合わせる。                                           

「へー、そうなんだー。」                                                   

「その棒読みやめてくれ。で、俺が14歳の頃、交通事故に遭ったんだよ。その時、隣に誰かが居たんだけど思い出せないんだよなぁ。」                                           

あ、グサグサ来る。はは、予想通りの結果だなぁ。                                      

「ほー、で?」                                                      

「それから少し経ってミクと出会ったんだ。一緒に居るうちに疑問を抱くようになった。あぁ、もしかしてこいつが俺の隣に居た人なのかな?って。その人はとても大切な人だってことは覚えていた。」                  

むかつくなぁ。なんで、なんで、どうしてなのさ。ひどいよ、私はレンちゃんよりも痛い思いしたのに。ひどい、ねぇそんなのアリ?ショックで記憶喪失?ひどい、ひどい。私は生きてたのに。病院を出た後に他の女に浮気しちゃうなんて。私は後悔とか罪悪感とか不安とかでいっぱいだったのに。レンちゃんだけ楽しい思いしてるなんて、不公平だよ。私が君を見つけた時どんな気持ちだったと思う?すっごく嬉しかったんだよ。隣にあの女さえ居なければ。                                                     

「ふーん、そうなんだー。」                                               

「なんだよ・・・その反応・・・。」                                               

「いやぁ、別に?」                                                     

「そうかよ・・・てかお前のことも教えろよ。」                                       

「えー。」                                                        

「教えろ。」                                                                                   

「分かったよ・・・。うん、私も普通の家庭に生まれて普通に育った。」                                  

普通の基準があんまよく分からない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

魔女はどっち?

・・・リンちゃん・・・。


リン 殺人犯 レンの元カノ

レン リンの元彼

ミク リンの旧友 レンの彼女

レンをかばってリンちゃん怪我レンが弱くて記憶喪失


追記

るるるる涙腺崩壊!?な、ナンダッテー!
ありがとうございます。私タグいじられると大歓喜しますから気をつけてください。

もうこれも黒歴史の一部ですがそう言っていただけると嬉しいです。
今はだいぶマシになったと思いたい。

閲覧数:680

投稿日:2011/08/20 19:02:09

文字数:4,857文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました