-第六章-
 酷く眠い。
 流石に、一睡もしていないのは、辛いのだ。
 今目を閉じると、すぐに眠ってしまいそうで、瞬きするのも少しためらってしまうほどだった。手元にある分厚い本は、レンにきづかれないようにそっとレンの部屋から持ち出した本だった。題名から察するに、守護者たちについてらしい。
 内容はよくわからなかったが、昼になってレンに見つかれば、お叱りを受けること間違いなしだ。
 どうにかして戻さなければいけないのだが、今はそれより内容を理解しなければ。
『七つの宝が集まったとき、願いをかなえることができる。しかし、その代償として永久に自由を知らぬままに生きることとなる。自由を知らず、全ての記憶を抹消され、孤立し生きるため、宝を守り守護する。』
 つまり、あれか。あれなんだ、きっと。
 そんなテキトウな予想で、リンは何となく納得しかけていた。
 しかし、最後の『宝を守り守護する』の部分に目を留め、それが守護者のことであることに気がついた。と、いうことは、レンやルカはかつて自分のように願いがあって、宝を探していたということだろうか。何を望んでのことかはわからないが、つまりはそういうことだろう。
 だが、『永久に自由を知らぬまま』、というのは、どういう意味なのか、リンには理解不能だった。

 兎に角、眠ってしまったリンの手元にある古ぼけた本は、自分の部屋にあるはずの本だった。無理やりたたき起こして問い詰めてやろうかと思ったが、やめておいた。無邪気な寝顔は、そうさせないように完全防御がなされていたのだ。
 しかたなく、カイトにリンが眠ってしまったことを報告し、自分の部屋の本棚にそっと本を戻しておいた。本人に声をかけることはせず、ベッドに寝かせておいた。
 とてつもなく気分が悪い。
 どうもこの本は見たくないものなのだ。前は、こんな風ではなかったのに。
 部屋に戻り、ベッドに倒れこんだ。

「カラン」
 氷が、乾いた音を立てた。
 ウイスキーの入ったグラスに、大きく砕かれた氷がいくつか入れられ、最後に冷たく冷えた水が入った。それを、青年が一気に飲む。
 声は、出ない。氷と水が涼しげな音を立てる以外は、全くの無音状態の部屋で、青年は窓の外を見ながらグラスを口へと運ぶ。喉を通っていく冷たさが、一層眠たさを吹き飛ばして、日光に反射して輝きを見せた。
 ふと、携帯電話に来たメールを確認すると、そこにはルカからのメールがあった。
「電話ください。絶対です。」
 問答無用という奴だ。仕方なく、ルカに電話をかけることにした。
「――もしもし?」
「――メイトですか?」
「ああ。どうした?メールなんかよこして」
「それが、レンと女の子の話はしましたよね?そのこなのですが…。メイト、貴方のところに来たら徹底的に試練不合格にして下さい」
「どうして、また?」
「どうもレンが彼女の試練を合格させようとしている気がします。それに、まだ彼女は幼い。それを、私たちのようにしていいはずがありません。レンは、もしかすると、あのときの決着を、復習というカタチでつけるつもりかもしれません」
「それは――」
「頼みましたよ」
 そういうと、メイトの話も聞かずにルカは電話の通信をぶっつりときってしまった。
 ため息をついてから、朝日が昇る窓の外を見て、メイトはそっと微笑んだ。

 昨日、二人はどこ行ったのかを教えてくれなかったっけ。
 ふと、カイトはそんなことを思い出していた。二人は、カイトにどこに行ったのか、どんなことがあったのかなど、一切話してくれなかったのである。と、いっても、意地悪をしているわけではない。誰かに守護者の居場所や試練の内容を口外してはいけない、と、ルカに釘を打たれたのだ。
 まあ、そんなことを知りもしないカイトは一人勝手にしょんぼりしていたのだが。
 昨日遊び疲れたんだかで、二人は部屋にこもってしまったが、今日はスタミナがつくものでも作って、食べさせてやろう。そう思いながら、カイトはスーパーの自動扉を開いた。
 
 口ずさむ唄はかぜにながれて消えていった。
 誰にも届かずに、その唄は消えていくのだろう。鳥のさえずりの中に紛れてかすれていく歌を聞きながら、ルカはシャープペンシルをへし折った。
 それから、鉛筆を手にとると、髪の上をすべるように何かを描き出した。それが形を成すことにそれほど時間はかからず、紙の上には可愛らしく歌うオルゴールが描かれていた。しかし、オルゴールなどどこにもなく、描かれたオルゴールについた人形は、クサリでつながれ、羽根の抜けた骨だけの翼を持った長い髪の女性のカタチをしていた。
 それはまるで、翼を奪われた天使のようだった。
 窓から入ってきた数滴の雨粒があたり、人形は涙を流すように紙にしみこんでいった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

真実のガーネット 7

こんばんは、遅くなりました、本日の投稿です!!
寝ます。サーセン。です。
のろのろ書いてるからですね、ごめんなさい。
学校で頭痛くて仕方ないですよ。睡眠不足で。
この週末でどうにか不足しない程度に睡眠を。
では、また明日。

閲覧数:207

投稿日:2009/09/25 23:18:35

文字数:2,000文字

カテゴリ:小説

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