模型の街の　ブリキの鼓動
昨日のことも　塗膜の向こう
霞んで見えた高架線も一瞬の内に　
ご覧の通り
隙間にそそぐ常夜燈のせいで思い出した　
不安に耐える

刹那の方へ

知らない景色に僕の夢を重ねたなら
うわべに描いた詩でさえ空に届くだろう

決して触れられない泡になっても　此処にいられるなら

いつまでもやまない雨にうたれて過ぎた日を
渇かないからだを碌に浮かべ過ごした日を

そして色褪せてく未来へと駆けるグライダー

時計の針と　並木の軌道
失うことも　見つかることも
旅程わずか25分で思い知ったうつつ　
背をかえす　視線の向こう
リノリウムの原っぱで劣等感が燻る　
塗炭の思考　灰色の希望

刹那のいきれ　心は幻
揺れる陽炎に見惚れた　
脱殻の呼吸　まだらの澱の中　これで終わればいい

幽霊の進行方向　正解のない道程を
有形の心臓の応答　終焉の存在証明

知らない間に僕の胸を掠めたのは
流れないカスケードに沈めたはずの言葉

消してしまえないなら嘘になっても　此処にいられるから

いつまでも明けない夜を希うだけの日々も
孤独な時間に焦がれて傷つけあう日々も

決して触れられない彼方に描く未来だ

溢れだす言葉が僕の胸に痞えたまま
手垢にまみれた詩だけが空に残るだろう

消してしまいたいなら沫になっても　此処で歌えばいい

やがて醒めないはずの夢は途切れて剥がれ落ちて
誰にも聞こえない僕の歌が空に響く　

そして忘れていく過去は此処にある
奏でた記憶を乗せて飛び立てグライダー

少しくらいは