IA『召喚士イア』(後編)

投稿日:2018/01/08 23:30:27 | 文字数:2,455文字 | 閲覧数:171 | カテゴリ:小説

ライセンス:

 ようやく完成したかな。
 今のわたしではこれくらい。もう少し掘り下げられそうなんだけどね。

 お話は、未熟な召喚士イアちゃんの成長物語の序章、かな。

 ちなみにイアちゃんの曲で好きな曲(今の時点)は、
 yksbさんの『clickER』と梅とらさんの『サクラソウ』です。『IA THE WORLD~鍵~』に収録されています。おすすめ。

 次回はグミちゃん。さらにその次は雪ミクちゃん、の予定。
 では。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

 夜になるのを待って、わたしたちは祭壇へ向かった。
 その道中、さまざまな建物を通り抜けて行ったが、どこも静かなものだった。
 いいえ、静かすぎた。
 活気がある町は、夜も活気があるはず。
 それなのにこの町は、人っ子一人もいない。
 いいえ、昆虫や動物も見かけない。
 生きているのに、死んでいる。そうとしか思えなかった。
 通りを抜けてわたしたちは祭壇にたどり着いた。
 そこには、ボロボロの服をまとって静かに瞑想をしているおじさんが居た。
 たぶん、ショウタくんのお父さんだ。
「お父さん!」
「ショウタ、もう夜だ。ここでなにをしている」
「おとうさん、もうやめようよ。僕は立ち直った。だからもうこんなことやめようよ」
 ショウタのお父さんが目をゆっくりと開ける。
「……その女は誰だ」
「召喚士だよおとうさん。僕が頼んだんだ」
「その禍々しい女、ショウタに近づくんじゃない!」
 ひどい言われよう。でも、この杖じゃあ、言われても仕方ないかもしれない。
「召喚士め、この町になにしに来た!」
「お父さん!」
「この町はわたしとショウタとヤヨイの町であるぞ」
「「「え」」」
 そのおじさんの横には、ショウタのお母さんと思えるような女性が、立っていた。
 それはうっすらとしているが、ところどころ、実体が出来始めている。
 これは、受肉!?
 教科書で呼んだ。召喚士として禁忌の行為。
 まさかこのおじさんは、ショウタのお母さんを受肉させるために、町のみんなを犠牲にしようとしているの?!
「いけない! それは禁忌」
「だからどうした。ヤヨイのためなら、これくらい」
 すると、杖を持っている手が震えて、杖から轟音とともに、ナイアルラトホテップが顕現する。
「な、なんだこの禍々しい神獣は?!」
 空気が震えていく。
「や、ヤヨイ!」
 ナイアルラトホテップが現れると同時に、彼女の未完成の受肉がすこしずつ崩れていく。
「貴様なにをした!」
「お母さんが、よみがえるの?」
「ちょっと、ショウタ、落ちついて!」
 メイがショウタを激しくゆさぶる。
「我は混沌の神、ナイアルラトホテップよ。低俗な獣たちと一緒にするでない!」
 彼が一喝すると、おじさんが怯んだ。
「ぼくは」
「ショウタ!」
「見たところ、受肉の儀式だ。それが完成するのには、あともう少し子供の命が必要だろう。そこで問う。少年よ、代償を払うか?」
「ぼくは……あの神獣を倒してくれ!」
 そうだよね!
「イアよ。行くぞ」
 わたしは頭をフル回転させて、おばあさまに習った召喚の儀式を始める。
「なにおう、こしゃくなああ。小娘の命だけでも十分だわ」
 おじさんも始めた。
 詠唱はわたしのほうが上ね。
 わたしは魔力を全開させて、杖を浮かべる。
「いただくぞ、少年よ」
「あう」
「しょ、ショウタ、大丈夫?」
 周囲が魔力を伴った風に変わっていく。
 それを一身に杖に注ぎ込んだ。
 あっちのほうがはやい!?
 いえ、こっちの魔力吸収量はケタ違い。
 ナイアルラトホテップは、どこまでバカ食いするのよ!
「出よ! ケルベロス!」
 それはあまりにも圧倒的な大きさを持っていて、祭壇の2周り分の大きさを持っていた。
「顕現」
 対してナイアルラトホテップは、あまりにも小さい。
「ふはははは。あまりにも小さい。小娘、未熟だな」
「裂いて良いか?」
 わたしは頷いた。
 かたちがあるとは言いがたいナイアルラトホテップは、大きな腕を出して、爪を出す。
 それを横一線した。
 その勢いはケルベロスを通り過ぎて、遠くの大きな建物をばらばらにしていく。
「「「」」」
 ケルベロスは悲鳴をあげて、顔をグシャグシャにして、消えてしまった。
 わたしもその強さに、開いた口がふさがらなかった。
「さあ仕事は済ませたぞ、少年よ、その女と別れをしなさい」
 有無を言わさぬその声に、ここに居る者全員は息を呑んだ。
 ショウタは黙って頷いて、その薄くなっているお母さんを抱きしめる。
 そのお母さんはにっこりと笑って、露に消えていった。
「ま、まって……まってくれ」
 ナイアルラトホテップは、膝をついて呆然自失のおじさんの胸を一本の爪で一刺しした。
「がはっ」
「お父さん!」
「大丈夫だ。殺してない。代償を頂いただけだ」
 おじさんの胸から爪を取り出すとそこには、赤いルビーみたいなモノが乗っかっていた。
 それをナイアルラトホテップは口みたいなところへ入れていく。
 ボリッボリッと嫌な音が周囲に響いた。
「あぁ美味い。久しぶりの食事だ」
 町を覆っていた力が、消えていった。
「では戻ろうか」
 用は済んだとばかりに彼は杖に消えていった。
 祭壇に取り残されるわたしたち。

 それから数時間。
 活気がもどった町を通り抜けて、出口にわたしとショウタとメイがたどり着く。あとおじさんも。
「このたびはお世話になりました」
 あの狂気を孕んだ目がどこへやら、おじさんは、今は落ち着いていて、優しい目になっている。
「ほんとにこれで解決になったの」
「あとはわたしたち、若い力があれば大丈夫よ」
 とメイちゃんが、細腕をめくって言った。
「君はこれからどうするのかい?」
 その神とやらとどうするのか、知りたいらしい。
「……都へ向かいます」
「そうか」
「お姉ちゃん、またね」
 わたしは彼らに別れを告げて、歩いた。
 わたしはまだ、正式の召喚士になることを諦めてない。
 でも、ナイアルラトホテップが言っていた、召喚士の存在意義が気になっている。
「グミちゃん、わたしどうすれば良いのかな」
 あの時魔が差さなければ、こんなことになっていなかったのかもしれない。
 後悔はしてない、はず。
 だけど、ナイアルラトホテップの言う真実が、過酷なモノだったら。
 これが運命だったら。
 そこだけは恨んじゃうよ、とグミちゃんに呟かざるを得なかった。   END

リニューアル。

日々精進していきたいと思います。

もっと見る

この作品URLを含むツイート1

▲TOP