BATTLELOID「STAGE11 大切な」

投稿日:2013/06/02 23:52:30 | 文字数:5,668文字 | 閲覧数:168 | カテゴリ:小説

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※概要はBATTLTELOID「BEFORE GAME」を参照してください


ルカの涙のわけは…
そして一方では、レンとユキの思いが衝突する

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TEXT
 

[D区画 街‐2エリア]
「…どうして?」
 ルカの口から、それ以上の言葉は漏れない。
 すべては…たった数分で崩れ去ってしまった。
 彼女の前にはたった今脱落した二人のボーカロイドと、脱落を知らせるメールが二つ分。

『A‐1 氷山キヨテル
 Y‐1 MIZKIにより脱落』

『Y‐1 MIZKI
 C‐5 巡音ルカにより脱落』

「…どうして?」
 そしてまた、ルカは呟く。
 頬を、何かがつたった。



「どうしよう…」
 リンが、今にも泣きそうな声で呟いた。目の前にレンの姿は…ない。二言目にはリンは「レン…レン…」と片割れの名前を呼び続けている。
 一体何が起きたか。ミクは冷静に起きたことを整理する。
 …私たちはレン君の後を追う形でユキちゃんたちを追いかけていた。そしたら、空から攻撃が降ってきて、私達を襲った。その間にレン君は電車に乗り込んで…。
 しまったな。ミクは視線を落とした。あの狭い閉鎖空間の中…はたして彼は生き残れるだろうか?
 それよりも私たちはどうしようか。レン君の後を追うか…それとも。
 レン君を、見捨ててしまおうか。
 打つべき手にミクが四苦八苦していると、フォンのバイブ音が耳に入ってきた。
「ひゃいっ!?」
 この、物凄く焦ったような声は、リンが発したもの。なぜだか、リンのリアクションがいつもより大げさなようにも感じた。
 リンは恐る恐るフォンを操作し…
「…よ…かったああ…」
 と、その場にへたり込んだ。
 ミクもフォンを見てみたが、新たな脱落者を知らせるメールだった。
 リンが「よかった」と言ったのは、おそらくそれがレンではなかったからだろう。
 ミクはリンを見下ろす。彼女はへたり込みながらも、まだ、彼の無事を祈っている。別のほうに目をやれば、また新たな電車がこの駅を発車しだしていた。
 …リンちゃんが、かわいそうだ。
「…行こう」
「へ?」
 ミクは、リンに手を差し伸べる。
「きっと、まだレン君は生き残ろうとして頑張ってる。…なら、助けに行かないと…でしょう?」
「…うん」
 リンは小さくうなずいた。
 ミクは手を取ると、駅構内へ歩き出す。





[D区画 海エリア]
「『ひとつうえのおとこ』!」
 レンが歌う、ユキはその場で伏せてかわし、ミキはステップを踏んで右へ、更に椅子を乗り越えてレンの後ろに回り込もうと試みる。
「させるか…」
「『インヴィジブルコクピット』!」
 ミキの動きを阻止しようとレンが歌う前に、ユキが仕掛ける。
 レンは攻撃の回避を強いられ、ミキの行動を許してしまう。
「『ミキミキ★ロマンティックナイト』!」
 すぐさまミキの追撃が入る。そう来るだろうと予想していたレンは、伏せることで回避に成功する。光線は電車の壁に激突し、
「う…!」
 黒い気体がもうもうとあたりを支配した。
 レンは考える。恐らく現在は挟み撃ち状態、背中に目がついているわけじゃああるまいし、この状況から攻撃をよけろなんて、無理な話だ。じゃあどうする、どこかに突破口が…。
 煙が晴れだすと、ユキがこっちに来ようとしているのが分かった。…くそ、後ろに下がっても…いや、まてよ?
 俺が動けるのは、前か後か…だけじゃない!
 レンはすぐに行動に移る。攻撃目標は…窓!
「『ヤンデ恋歌』!」
 ガッシャン!と大きな音とともにガラスが砕け散った。煙が一斉に外に逃げていく。
「…な!」
「外に!?」
 歌おうと息を吸いかけた二人が見たのは、窓の外へ飛び出す、レンだった。
「…っ!」
 素早くミキは反応し、追いかけようとしたが、窓から出ようとしたところで、止まる。
 …もし、登ってきたところを攻撃されたら…?
「…ミキお姉ちゃん?」
 どうしたの、というようにユキが話しかける。ミキは答えることができず、窓を見たまま唇をかむ。
「ねえ…行かないの?」
 ユキが促す。ここでミキは振り返り…ぞっとした。
 ユキは、声色こそいつものようだったのだが…その目は、まるでミキを駒として扱うような、黒く冷たい目だった。「行けよ」。そんなメッセージが、プレッシャーが、ミキの胸に届く。
「ユキちゃん…」
「何?」
「…うっ」
 ついには声色まで冷たくなる。思わずミキは声を漏らしてしまった。多分ここで本音を言おうものなら、ユキちゃんは私を消しにくる…!
 この場でユキにやられるか、動いてレンにやられるか。
 …でも、少しでも長く残れれば…!
 ミキは勢いよく床をけり、窓の外へ。両手で窓枠を掴み、頭がレンに見つからないようにとかがむ。足は下の窓枠に。
 その時ユキは、上からの足音がミキに向かっていることに気付く。…そうだ、頭を隠せても、ミキお姉ちゃんには特徴的なあほ毛が立ってるから…!
「ミキお姉ちゃん!」
 ユキの声にはっとして上を見ると、レンがいる。
「『君に捧ぐファンタジア』!」
 あわててミキは足を車内に入れ、手を放す。背中が割れたガラスとこすれ少々痛みを感じたが、そんなことを気にしている場合ではない。
 間一髪ミキは攻撃を逃れるも、光線は地面にたたきつけられ、車内には大きな揺れが発生。
「「きゃあああ!!!」」
 ミキとユキの悲鳴がシンクロする。レンは叫びはしなかったものの、列車から落ちかけ、片手で必死に車体にしがみついていた。
 振動が収まるとすぐにレンは上に、ミキもすぐさま窓へ。
 今度は攻撃されることなく、ミキはレンと正面に向かい合うことができた。
 強い風が、二人の髪をなびかせる。電車はいつの間にか海岸線沿いを走っていた。
 空も海も青く、地平線がどこにあるか分からないほど。
 だが、二人にとってはどうでもいいことだった。
「『発光体のルーディ』!」
 びゅうびゅうと吹く風に負けぬよう、ミキは声を張り上げる。レンはすぐに反応してかわすと、ミキに背中を向け、後ろの車両へ走る。
 レンの行動はいつにも増して的確だった。
 実際、この戦いの間レンは自分でも驚くほど冷静で、二対一もものともしない立ち回りを
見せていた。その源はミクのためか、リンを一人ぼっちにさせないためか。
 それとも…。
 ミキは逃がすまいとレンを追いかけようとしたが、直後レンが振り返った。
 ミキは攻撃を受ける体制になる。
「『ナゾトキ』!」
 レンの光線。しかしその標的は、明らかにミキではない。
 まさかとミキは直感的に思い…走る。
「な!?」
 それはレンからすればあまりにも不可解な行為。ミキが自ら攻撃にぶつかりに行ったのだ。
 しかし、ギリギリ追いつけなかったミキは、伸ばしていた腕に、攻撃のすべてを注ぎ込まれた。そして持っていたマイクは粉々に。
「…あ…!」
 消え入りそうな声だったが、それはレンの耳に届いた。…そして、こちらに来ようと窓から登っていたユキにも。
 そう。ミキはつまり、レンの標的はユキだと察知し…とっさに彼女を守ろうとしたのだ。
 実際レンの目的はそれであり、もしミキがかばっていなかったら、光線はユキに直撃していただろう。
「ミキお姉ちゃん!!」
 ユキが駆け寄る。
「…はは、なんでかな…助けちゃったよ」
 弱々しい声が返ってきた。
 ミキは思った。でもなんとなく、理由は分かるような、分からないような。…先生も…同じ気持ち…だったの…か、な…。
「ミキお姉…」
 ユキは何か返事をしようとしたが…口をつぐんだ。
 小さな腕の中、ミキはもう、動かなくなっていた。





[G区画 海エリア]
「…潮時だね」
 レンは静かに言った。もう彼女に戦う気力はないだろう。そう思って言ったのだが。
「何言ってるの?」
 いまだユキは戦うつもりのようだった。
 その目は…あの時、キヨテルがやられて狂ったように笑っていたそれと同じようなものだった。
「ユキちゃん…自分の味方がやられて、何とも思わないのかよ!?」
「思わない。私の中では…生き残るための駒」
 吐き捨てるようにユキは言う。
 ならば、ミキがやられた時の…ユキの行動はなんだったのだろうか。それはユキしか分からないが、今のユキには分からない。
「結局、これは一人の戦いなの。…そうでしょう?勝ち残るのは一人なんだから」
 これも吐き捨てるように言う。レンは黙ってユキの話を聞くことにする。
「そう、私は勝って人間になる。私の方がみんなより若いから長く生きられるし、それに、私は先生なんかいなくったってやっていけるんだって証明にもなる!」
 ユキの声は響いていく。風が、ユキの髪をなでる。サクランボのついたヘアゴムが、レンの目に入った。
「…だから私は勝つ。特にレンお兄ちゃんなんか、二人でいないと一人前ですら…」
「それは違う!!」
 あれだけ黙っていたレンだが、ここで大声をあげて反論。
「そうさ。確かにいつもはリンと一緒で、二人で一つみたいに言われるさ。…でも、言いたいことはユキちゃんと同じさ。俺だってリンとは違う一人のボーカロイドだ!」
「あなたと一緒にしないで!ここまで来て、ミクお姉ちゃんともつるんで…そんなお遊びは通用しない!」
「するさ!現に俺たちは協力して今まで生き残ってきた!それに、ミク姉から教わったことだっていっぱいある!かけがえのない存在なんだよ!それを駒だなんて…」
「仲良しこよしは堕落、保護は縛りよ?一人でできなきゃ意味がない!」
「仲間の力を借りてきたから、自分が今ここに存在できるんじゃないか。本来は一人じゃ…みんな何もできないんだよ!」
 言い合いは平行線、互いの論をぶつけ合うも、全く進歩がみられなかった。
 先にこのままだとらちが明かないと思ったユキが言った。
「…なら、この戦いを持って、どっちが正しいか決着つけましょう!」
「…それでいいんだな?」
 ユキは決意を固めたようで、もう戦う姿勢の状態。顔も真剣になっていた。
 ひゅうう、と少し大きな風の音。ミキのマイクの破片が小さな竜巻をつくる。かけらは天へ昇るように舞い上がった。
「…なら、一発で決めてやるよ」
 レンは目を閉じ、ユキに聞こえぬように言った。
「すぐに決めてみせる」
 ユキも深呼吸とともにそう吐き出す。
 互いにこの一撃にかけるべく、集中力を高める。
 電車は海を離れ、先頭からは次の街が見えてくる。タタンタタンと、規則的に音が鳴る。
 そして、舞い上がっていたかけらが落ち、カランと音を立てた時だった――。
「『パラジクロロベンゼン』!!」
「『でぃすこ☆しょこらてっく』!!」
 二人は、歌った。想いすべてを込めて。
 威力はお互い過去最大級。今まで見たこともない野太い光線が、互いを倒すべく、空気を裂いて突き進む。
 光線がぶつかり、物凄い衝撃波を生み出した。
「ぐ…!」
「いやああ…!」
 二人が思わずこぼした声もかき消される。
 そして軍配は…。
「…ああっ!?」
 …レンに上がった。
 ユキの渾身の攻撃はレンのそれに完膚なきまでに消され、それでも勢いを持て余したままユキに向かってくる。一撃にかけていたユキは…なすすべがない。
 光線が当たるまでの時間を…ユキは異様に長く感じた。
 その時、目の前に誰かがかばうように立ちふさがったような気がした。
「…先生…」
 ここでユキは気づいた。
 …今までどうして気付かなかったのだろう。結局、私も助けられてばかりだったんだ。先生がいなくなってついに一人でって時も…ミキお姉ちゃんがいなかったら、少なくともさっきやられていたじゃない。
 ごめんなさい先生。私まだまだ未熟だった。もっと勉強しないと…だめだったね…。
 気付けば体は宙に浮き、電車から投げ出されていた。手を握ると、金属片の感触。どうやらすでにマイクは壊れてしまったようだ。
 体は光線による動力を使い切り、今度は重力に従い落ちてゆく。さかさまになった景色の中、ユキは目を閉じた。





[G区画 街‐1エリア]
 燃え尽きたレンは、その場に座り込んだ。
 …何とか、生き残れた…。心の中にあるのは安心感、それと…言葉では言えないような感情。
 吹っ飛んで行ったユキがどうなったかはレンは見ていない。だが先ほどフォンが振動した…ような気がしていた。
 …とにかく、リンかミク姉と連絡を取らないとな。
 ぼろぼろになった電車は、そのまま駅のプラットホームへ滑り込む。
 G区画…そんなところまで来てしまったのか、なんて旅人のような感情を抱きつつ、レンはホームに降りた。
 近くのベンチに座り込む。戦いに夢中で気付かなかったが疲労がとてつもない。
 もっとも、絶対的不利な状況下、あれだけうまく立ち回り、しかも勝利を収めた彼が、疲れていないわけなどない。
 ふう、と息をついた後、レンはフォンを取り出した。
 …とにかく、ミクとリンに無事を伝えないとな。特にリンなんか、かなり心配してそうだ。
 そんなリンの姿を脳裏に浮かべ、はは、を笑った時だった。
「『NARAKA』!!」
 突如駅から響く歌声。まばゆい光があたりを包む。
 レンは幸い彼女の死角にいたため、気付かれていない。レンはとりあえずその歌声の持ち主の姿を探す。
「いるんでしょう、出てきたらどう?」
 この声は歌っていた彼女とは違うもの。
 二人いることが分かったレンは、まずは身の安全を確保すべく、できる限り声のしたところから離れ、隠れる。
 その際、確かに視界に映った、新たな敵の姿。
「…いないわね…」
「遠くに行ったはずはないわ、彼がここについてから、あまり時間は経ってないはずだし、それに、相当疲れてるはずだから」
 グミとリリィは背中合わせになってあたりを見渡す。
 っくそ…。レンは動くこともできず、疑問をどこへともなく投げつけた。
 なんで、ここにいるんだよ!?

しがないボカロ小説書き。生粋のミク廃。
書くものはなぜかバトルものばかり。
みんなを楽しませることができればなあと、思う。

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