まだ開いたばかりの　眩しい光へと包まれながら
ベランダへ吹き込んだ風に　おはよう　ただ思い切り背伸びをした

影が通り過ぎて

下を見下ろす

交差点の信号機の上に　カラスが　一羽舞い降りる
止まっていた人たちは信号が変わって
動き出す　静かに

たくさんの　人の足　自転車が　バイクが　車が
街全体に　流れ　血液　みたいに　広がってく
まるで一つの生き物のようだ
どこかへ向かっているのだろう



ふと見上げるベランダ　さっきの自分と目が合った気がした
瞬きが挨拶を返し　足は早くしなきゃと
駅に向かう

ホームの階段で

電車もう来た！

開いたドア　滑り込みセーフ
後ろで　音を立てて閉まる
目の前の窓から　暗がりの壁が
動き出す　ゆっくり


たくさんのブロックや　マンションが　会社が　工場が
街全体に　溶けて　流れて　一つに　繋がってく
まるで大きな川の中を游ぐ
魚の様に　身を任せて



時間が　光は　空気を　音も
僕の中を通り過ぎた



たくさんの一瞬に
記憶や意識が風景と混ざり合って
すぐに離れて見えなくなっていくけど
置き去りにされた僕だけが思い出して
電車が止まりこのドアが開いたら
次の場所に向かって歩き出すよ
あなたと約束した場所へ