#「夕暮れに染まるもの」
「……これ、いいなぁ」
現在、私は街に出て、ウインドウショッピング中
……だって、高校生のお小遣いなんてたかがしれてるでしょう?
目の前にある服だって、これを買ったら、しばらくどこにも遊びにいけないよ?
…………け、決して、友達みんなが忙しくて、誰も付き合ってくれなかったわけじゃない!
私は頭を左右にふるふると振った
ショーウインドウにうつる自分の姿……
赤毛のツインテールにカールをかけている私
個人的には、この髪型が気に入っているのだが、クラスの男子には「ドリル」と呼ばれる
(……穴を掘って埋めて差し上げましょうか(黒))
ま、私はあんな子供のいうことは、まったく気にしてないんだけど……
(埋めた後、もういっかい掘り出して、今度は粘土層に埋めて差し上げましょうか?(黒))
「あー、これもいいなぁ」
さっきとは別の店のショーウインドウにテディベアがちょこんと座っていた
しかし、意外にさっきの服よりも高い
「おー、くまさん、いい値打ちですなー」
買う気はさらさらないのだが、とりあえずくまさんに話しかける
傍からみたら、独り言をガラス越しにしゃべる痛い子
いいの、いいの、別に知り合いに見られているわけじゃないし
ここを歩いている人が今後、私とかかわるなんて奇跡なようなものだもの
「あ、ドリルじゃん!なにやってんの?」
そこに通りかかるクラスの男子
くそっ!知り合いいたし!最悪……
「別に。なんでもいいじゃない」
さっきのぬいぐるみに話しかけていた場面をみられたかもしれないという恥ずかしさがあった
「?……なんだよ、感じわるいな」
相手は不満そうな顔をしたが、私には関係ない
「じゃね」
私はそのまま相手を置き去りにして歩き出した
……ついてきたら埋める
しばらく歩くと、目の前に小さな公園が見えてくる
今、ショッピング街にいくと、またあいつ等に会いそうだったので、私はその公園に入った
そこにはお父さんとキャッチボールをする小学校低学年くらいの男の子だけがいた
彼は一生懸命ふりかぶって、思いっきり投げる
ふわっとあがったボールはやや左にそれながら、二回バウンドしてから父親のグローブにおさまった
「かわいいなぁ。あいつ等が同じ生き物とは思えないな」
私はベンチに座ってスマフォを取り出す
思ったより時間がたっていない
一人で時間をつぶすのって、結構、大変なんだよなぁ
そう思いながら、友達のブログをスマフォで読んでいると……
ころころ、こつん……
私の足のつま先にボールが転がってきた
私はそれを何となくひろうと、目の前に男の子が走ってきた
「お姉ちゃん、一人なの?」
久しくみていなかった純真無垢な瞳でそうたずねられると、思わずキュンとしてしまった
「お姉ちゃんも仲間に入れてあげようか?」
上から目線が少し気にかかったが、それもまた、にぱっと笑う彼の笑顔で不問となった
「す、すいません!うちのが迷惑かけて……」
そこに慌てて父親がやってきた
「あ、いえ……」
「お姉ちゃん、こっちこっち!」
「え?あ、ちょっと!」
私は何も返答していないのに、男の子に手を強引にひかれて、キャッチボールをすることになった
「じゃ、いくよー」
男の子がポーンと投げる
ボールはやはり二回バウンドしてから、私のもとにたどり着いた
「今度はお姉ちゃんの番だよ」
よし!がんばるぞ!と、なぜかやる気になって、私は思いっきり投げる
ぴゅーん
すると、ボールは大きく右にそれた
「ああ!もう!どこに投げてるんだよ、へたくそだなぁ」
男の子が文句を言いながら取りに行く
「……ごめんなさい」
そういえば、私、一度もキャッチボールなんてしたことなかった
男の子がボールをもって、戻ってくる
「いい?こうやって、相手の胸あたりめがけて……それっ!」
男の子が投げたボールが、私にツーバウンドで届く
あの、私の胸はそんな地面にはないのですが……
って、誰の胸がぺったんこかっ!?
……はっ!?いかんいかん、自分でツッコんでしまった
「お姉ちゃん、やってみて!」
男の子が手をあげて待っている
よ、よしっ!
「えーい!」
ぴゅーん
今度は左に大きくそれた
「あーあ……お姉ちゃん、ダメダメだなぁ。ま、いいや、俺が特訓してやる!」
そういって先輩風を吹かせている男の子と、それをきいてぺこぺこと頭を下げる父親
私は父親に向かって、「大丈夫です」と笑顔で返した
夕方……
辺りが赤く染まってきた
「じゃ、またなー、また今度、あそぼーぜ」
そういって、男の子は父親と一緒に帰って行った
私はそれに手を振る
そして、二人の姿が見えなくなるとベンチに座りこんだ
「あー、つかれたぁぁぁ……手の間隔がマヒしそう」
久しぶりにがっつりとスポーツをした
結局、私は最後までまっすぐにボールを投げられなかった
一方、あの男の子は、ワンバウンドで私のところに届くようになった
いやはや、子供は成長が早い
そんなふうにババくさいことを考えていると
「よう、ドリル」
ショッピング街であったクラスの男子が、いきなり自転車に乗りながら現れた
「わっ!?な、なによ、あんた!」
一体、いつからいたのだろうか……
また私をからかいにきたんだな!と警戒する
しかし……
「おまえ、意外にいいところあるな」
「……え?」
思いもよらない一言
「見てたぜ、男の子と遊んであげているところ」
そいつはそういって、にかっと笑った
「でもあれじゃ、おまえが遊んでもらってたみたいだったけどな」
「はぁ?うるさい!だ、大体、なんであんたがここに……」
「たまたま通りかかっただけだって」
嘘か、ほんとか、そいつはそういった
「ほら、これやるよ、さっきそこの自販機で当たりが出たから余ってんだ」
そういって、そいつは自転車のかごから缶ジュースを出して、私にくれた
「え……あ、ありがとう」
のどが渇いていたし、ありがたくいただくことにした
……ぐ、ぐぐぐ、あ、あかない……
何故かジュースを開けられない……まさか、本当に握力がなくなっちゃったのか?
「おいおい、缶ジュースもあけられないのか?ほら、かせよ」
そいつは私から缶ジュースをうばうと、ぷしゅっと小気味のいい音をさせて開けた
「ほら」
「……あ、ありがとう」
な、なんか恥ずかしい
缶を開けられなかったこともそうだけど、なんか恥ずかしい
「じゃ、俺はいくわ」
「え?あ、うん……」
その時なぜか、一人になるのが寂しい気がした
そいつは自転車にまたがると走り始めて、通りすがり際に一言
「じゃあなテト、また学校で」
「う、うん…………え?!」
私が驚いて振り向いた時、あいつはもう遠くに走って行ってしまった
……いま、あいつ……名前で呼んだ?
……///
私はなんだかとても恥ずかしくなり、家に走って帰ったのだった
コメント1
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ご意見・ご感想
ゆるりー
ご意見・ご感想
クラスの男子、何気にいいやつw
少年、くぁあいいw
こういう、進まないけど、温かい日常の話、大好きです。
2014/03/21 21:00:27
しるる
男子がくれたジュース
本当に自販機で当ったのだと思いますか?
夕暮れに染まるもの……それはテトちゃんの頬だったりしてw
ま、何も考えずに書き始め、何も考えずに書き進め、何も考えずに収束
だから、全部私の予想
2014/03/21 22:30:15