【第十三話:少女のわすれもの】

 私と、ぐみと、レンと、ミクさんとで、カラオケに来た。

 でも、レンは考え事してて、元気がない。

 ぐみとミクさんは、すごい楽しんでる。
いや、正確に言うと、ミクさんが。

 ぐみは、ミクさんのこと苦手なのを悟られない様に、気付かれない様に、だた隠して、明るく装っているだけ。

 おかしい。

 この場所は、おかしい。

 自分は想いどうりに行った、ミクさんがこの場を仕切っている。
この場の、私たち3人を、手妻のように操っている。

 「リンちゃん、歌わないの?デュエットしよーよー。」

 「うぇ!?……は、はい…。」

 この場の支配者には、逆らえない。

 なんて、カッコよく言ってみたけど、この場の支配者であろうとなかろうと、ミクさんには逆らえない。

 あの笑顔の裏側が、見えないのが怖い。

 
 結局、レンは1曲しか歌わなかった。

 でも、「奢りだ」と言ったのは覚えていた。
ちゃんと、4人分のお金を払ってくれた。

 なんだか申し訳ない。

 ミクさんは、塾があるのを忘れてたから帰る、と言って会計が済んだらすぐ帰った。

 ぐみは、ちょっと用事あるから先帰ってて、とか言ってたし。

 レンはどこ行ったか分かんないし。

 というわけで、今は一人だ。

 レンは、憂鬱少女を捜していた。
たぶん、確実に、憂鬱少女はミクさんだ。

 ということは、もう私はレンの瞳には映っていない訳で。

 こんなことばっかり考えてしまう。

 思い出す。

 想い出す。

 思い出にしたはずの記憶が、映像になって、音声になって、鮮やかに。

 私の奥のほうに仕舞い込んだ、気持ちが。



 レンのあの時の瞳が、笑顔が、仕草が、脳裏に浮かぶ。

 でも、もう、それは―――


 頬を、何かが伝っていく。

 
 泣いていた。
私は、何に?

 なにが、哀しい?

 

 そうか―――

 こんな、感情は……この、感情の名前は……


 私が、忘れた感情。




 「すき…だよ……っ」


 ぽつり、呟いてみた。





 独り。





 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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憂鬱少女と陰日向

やっと気付きました。

まあ、そう簡単に気づける感情ではありませんが。

少しずつ、少しずつ、惹かれていくほどに、それは。

閲覧数:85

投稿日:2012/07/12 08:47:09

文字数:900文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    人を好きになるのって…気づけば…だもんね
    いつ、なにがきっかけで?ってきかれても、わからないものだもの

    リンちゃんが鈍いんじゃなくて…きっと人は鈍くて当たり前なんだよ
    ま、慣れれば(慣れたくないが)鋭くなるかもしれないけどwww

    え?そだよね?
    私が鈍いだけだった!なんてオチはないよね?

    2012/07/29 19:27:46

    • イズミ草

      イズミ草

      そうなんですよぉ!!
      好きになったら、次、嫌いになれない、ていう。
      わかんないですよね…、なんであんなにわかんないんだろ???

      ほんとに慣れたくないですね……。

      え?そですよ?
      そんなオチ考えてもなかったよ?

      2012/07/29 19:34:04

  • つーにゃん

    つーにゃん

    ご意見・ご感想

    どうも、最近ある人と出会ってから、全然憂鬱じゃなくなった、憂鬱少女です!
    その「ある人」というのは、イズミ草さんです。


    …椿姫です。


    リン…
    頑張って告白するんだっ!
    ここでミクが憂鬱少女だと思わして、実はリンが憂鬱少女だったというオチですね、分かります(←

    2012/07/12 13:07:58

    • イズミ草

      イズミ草

      私もですよぉ!!
      パソコンしてる時、特にピアプロに居る時が一番楽しいってなんか空しいですがww

      そうだぞ、リン!!
      告れ!!

      いや、違うかもしれませんよ?
      そうかもしれないし、なんてったってノープランですからww

      2012/07/12 15:36:48

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