注意書き
この作品は、doriko様の「ロミオとシンデレラ」を題材に、黒刃愛様が作成したPVにインスピレーションを受けて書いた小説です。
さて、この小説は、以下の設定になっています。
この作品のレンとリンは血縁関係はありません。また、名字が一緒だと話をまとめづらいため(どうしても "No relations!" のフレーズが頭をよぎって……、て、こんなことを書くと年がバレるか)、リンとルカを姉妹にしたこともあり、この作品でのリンの名字を「巡音」にしました。
話の都合上、デフォルトの年齢だと無理があるため、二人とも年齢が上がって高校生になっています。また、ミクとクオが同学年の友達として登場します。
それと、作中何人かのキャラは、デフォルトの名字が無いため、作品用に名字を設定しました。以下の通りとなります。
グミ――活音メグミ
グミヤ――躍音グミヤ
リリィ――蜜音リリ
後、ここから先は設定変更というより、「この話のための設定」ですが。
リンが超お嬢様(PVの彼女の家がえらくゴージャスだったので、お嬢様ということにしてしまいました)学校に車で送り迎えしてもらう、なんてことが日本の高校で可能なのかどうかは知らないのですが、そういう設定にしましたので、突っ込まないでください。
リン、レン共にかなり真面目なキャラに。その反動でミクははっちゃけたキャラになってしまいました。全員、今までに書いた話とは全く性格が違いますが、これはわかっててやってることです。
そして、かなりの長編になると思います。いや、なんというか、先が見えない……。
更に……
書いているのが私なので、プロットの段階で、物語が原曲を離れて明後日の方向に行ってしまいました(汗)って、これ、いつものことか……。
以上の点を踏まえ、「それでも構わない」という方のみ、この先をお読みください。
ロミオとシンデレラ 第一話【ロミオとジュリエット】
ロミオが祭壇に近づいた。横たわるジュリエットに駆け寄って抱き起こし、揺さぶる。だけどジュリエットは動かない。ロミオはジュリエットを抱いて悲嘆にくれた後、動かないその身体を祭壇の上に戻して、両手を胸の上で組ませる。そして毒の瓶を取り出して飲み干し、ジュリエットに口づけてから、その場に倒れる。
入れ替わりにジュリエットが目を覚まし、起き上がる。倒れているロミオを見かけ、笑顔で駆け寄る。恋人が死んでいることにはまだ気づいていない。彼に触れて、死んでいることに気づく。表情が絶望へと変わる。落ちている短剣を拾い上げると、それでためらうことなく胸を刺し、崩れ落ちる。崩れ落ちながら、ロミオの手を握る。
ジュリエットが動かなくなり、幕が降りる。割れんばかりに鳴り響く拍手。再び幕が上がり、舞台の上を、出演者が一人一人現れて、笑顔で頭を下げる。
わたしは鳴り響く拍手の中、手を叩くこともせず、ただ舞台を眺めていた。
カーテンコールも終了し、ホールは明るくなった。舞台を見ていた人々は、席を立ってホールから出て行き始める。そこかしこから、終わったばかりの舞台の感想を話す声が聞こえてくる。
「衣装が素敵だったわね」
「でも、『ロミオとジュリエット』だと、やっぱりちょっと地味じゃない?」
「オーケストラの音が物足りなかった」
「そう? あれくらいで良かったと思うけどな」
わたしはただ黙ってそれを眺めている。一人で来ているので、あれこれ言う相手はいない。それにしても人が多い。休日だから仕方がないか。しばらく待っていると、ようやく通路が適度に空いてきた。プログラムを手に、立ち上がって出口へと向かう。
ロビーに出た時だった。突然、わたしは強く押された。誰かがぶつかったのだ。急なことだったため、わたしはバランスを崩し、床に勢いよく倒れこんだ。
驚いて辺りを見回すが、わたしにぶつかった誰かは、既に立ち去ってしまっていた。小さくため息をついて、立ち上がろうとする。その時、左の足首に激しい痛みが走った。
「……痛っ」
どうやら、さっき倒れた時に変な風に捻ってしまったらしい。足首は、ずきずきと遠慮のない痛みを訴えてくる。が、床に膝をついてうずくまっているわけにもいかない。わたしは無理を押して立ち上がろうとした。その時だった。
「大丈夫?」
誰かがわたしに声をかけてきた。そちらを向くと、わたしと同じぐらいの年齢の男の子が立っている。わたしを見て、驚いた表情になった。
「……あれ、巡音さん? どうしたの?」
近づいてくると、わたしの近くに膝をついてしゃがみこんだ。わたしの名を知っているということは、知り合いなのだろうが……顔に見覚えがない。
「ごめんなさい。誰だったかしら?」
向こうはやや呆れた表情になった。
「同じクラスの鏡音レンだよ」
わたしは目の前の男の子を顔をもう一度見たが、やはり思い出せなかった。とはいえ、それをそのまま言ったら失礼になるだろう。
「ああ、ごめんなさい……制服じゃないと感じが違うんでわからなかったの」
鏡音君はふーんと呟いて、わたしに「で、どうしたの?」と訊いてきた。
「転んだ拍子に足をくじいたみたい」
「立てそう?」
「……多分」
「俺につかまりなよ」
手が差し出される。わたしは差し出された手を取ろうとして、ためらった。そうしていいものだろうか。
「遠慮しなくていいって。足、相当痛いんでしょ?」
重ねてそう言われたので、わたしは鏡音君の手を取った。鏡音君はわたしの腕を自分の肩に回すようにして、わたしを立たせてくれた。
「じゃ、俺に体重かけて」
「え……?」
わたしが戸惑っているうちに、鏡音君はわたしを支えて、ロビーの椅子に連れて行ってくれた。
「ちょっと待ってて」
そう言って、鏡音君はどこかに行ってしまった。わたしは、左の足首に触れてみた。……腫れ始めている。どうやら、かなりひどく痛めてしまったようだ。
どうやって帰ろうか、と考えていると、鏡音君が戻ってきた。手に、氷の入ったビニール袋を持っている。
「ほら、これで足冷やしなよ」
わたしはビニール袋を受け取って、足首に当てた。冷たくて気持ちがいい。
「ありがとう。どうしたの、これ?」
「そこの売店でもらってきた。足痛めて歩けない子がいるって言って。……巡音さん、これからどうする?」
そう言われて、わたしは、迎えの車がもう来ているだろう、ということに気がついた。
「迎えが来る予定になっているの。だから、そこまで行ければいいんだけど」
「迎え? そう言えば、巡音さんのところって確かすごかったよね」
こういう時は、どう答えればいいのだろう。……わからない。わたしは口ごもった。
「じゃ、そこまで送ってくよ」
「え……いいわよ。鏡音君に悪いわ」
「けど、その足じゃ歩くのも辛いんじゃない? 俺なら平気だから気にしなくていいよ」
わたしは少し悩んだ結果、鏡音君の申し出を受けることにした。携帯で連絡すれば来てくれるのはわかっているけれど、劇場のロビーで大騒ぎされるのは見たくない。
「本当にいいの?」
「くどい。男に二言はない」
わたしは鏡音君に助けてもらって、もう一度立ち上がった。
「巡音さん、プログラム忘れてる」
わたしは、ああ、と言って、プログラムを手に取った。それから、彼の肩を借りて、出口へと向かった。
劇場の外に出ると、少し離れたところに、迎えの車が来ているのが見えた。運転手がわたしの姿を見て、血相を変える。……だから嫌なの。
「リンお嬢様っ! どうなさったんですか!」
「……転んで足を捻ったの。歩くのが辛くて困っていたら」
と言って、わたしは鏡音君の方を見た。
「助けてくれたのよ」
「そうですか。お嬢様がお世話になりました」
運転手が頭を下げる。
「困った時はお互い様ですから、気にしなくていいですよ」
わたしを車の後部座席に乗せると、鏡音君は「それじゃあ、また明日学校で」と言って去って行った。運転手がわたしを見る。……ああ、鏡音君に口止めしておけばよかった。
「お嬢様、お知り合いで?」
「高校のクラスメイト。会ったのは偶然よ。別に待ち合わせしていたわけでもなんでもないから、勘違いしないで。待ち合わせしていたのなら、むしろ送って来ないわ」
「……そうですか。お嬢様がそう言われるのでしたら」
わかってる。この人は悪くない。雇い主である父にきつく言われているだけのことだから。わたしはため息をついた。
「家に帰る前に病院に寄って」
「かしこまりました」
休日診療している病院で診てもらったところ、かなりひどい捻挫だと言われた。ギプス……とまではいかなかったけれど、厳重に足首を固定されてしまう。何だか気が滅入ってくる。
手当てが終わったので、家に帰った。こういう時は広い家が恨めしい。足を引きずりながら居間に入っていくと、ルカ姉さんが本を読みながらお茶を飲んでいた。
「ただいま、ルカ姉さん」
ルカ姉さんは本から顔を上げて、わたしを見た。
「お帰り、リン。オペラを見に行ってたの?」
「今日見に行ったのはオペラじゃなくてバレエよ」
「……あら、オペラかと思っていたわ。演目は何だったの?」
「『ロミオとジュリエット』」
説明の必要がないぐらい有名な悲劇。有名な作品だから、オペラもあるし、バレエもある。
「シェイクスピアの悲劇ね」
「ええ」
ルカ姉さんはそこまで話すと興味を無くしたのか、視線を広げていた本に戻した。ウェーブのかかった長い髪がふわっと揺れる。今日は休日でずっと家にいたはずなのに、その格好には糸一筋の乱れもない。
「ルカ姉さん、お母さんは?」
「多分キッチンでしょう」
ちょうどその時、お母さんが部屋に入ってきた。わたしの足を見て、表情を変える。
「お帰りなさ……リン、どうしたのその足は!?」
「転んでくじいたの。全治一ヶ月だって。ただの捻挫だから心配しないで」
「ならいいけど。あまり無理しないで、今日はもうゆっくり休みなさいね。リン、あなたもお茶にする? クッキーが焼いてあるの」
お母さんの趣味はお菓子作りだ。最近はレシピ本も出したりして、ちょっとは話題になっているらしい。
「じゃあ食べる」
お母さんは、ちょっと待っててね、と言って、奥へと引っ込んでいった。……我が家は見てのとおりの豪邸で、お手伝いさんも複数いる。頼めばお茶ぐらいすぐに来るけれど、お母さんはこういう時、自分で動きたがる。
まもなく、お母さんがお盆に紅茶のカップとクッキーを入れたお皿を乗せて戻って来た。
「たくさん食べて……と言いたいところだけれど、夕食が入らなくなっても困るから、程ほどにね」
「わかってるわ。いただきます」
お皿の上には、様々な形の型抜きクッキーが乗っている。猫や、鳥や、花の形。どれも色とりどりのアイシングがかかっている。わたしは猫の形のクッキーを手に取った。……当たり前だけど、甘い。
わたしが小さい頃から、お母さんはこういう甘いお菓子を作るのが好きだった。小学校の頃は、帰宅すると甘い匂いが漂っているのが、純粋に嬉しかった。たとえそれを口にするのがわたし一人でも。
ロミオとシンデレラ 第一話【ロミオとジュリエット】
doriko様の原曲→http://www.nicovideo.jp/watch/sm6666016
黒刃愛様のPV→http://www.nicovideo.jp/watch/sm11970012
曲をモチーフにした長編に取り組んでみることにしました。
……とはいえ、注意書きにも書きましたが、「原曲どこいったの」状態になることはほぼ確実です。
既にリンのイメージがシンデレラというより眠り姫だし……。
今回は、折角なので、今まで使ったことのない手法にも着手してみようと思っています。
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ご意見・ご感想
Akmizuta0105
ご意見・ご感想
初めまして。
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また見つけられて良かったです
2020/06/19 03:02:52
日枝学
ご意見・ご感想
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2011/07/16 02:45:59
目白皐月
日枝学さん、こんにちは。感想ありがとうございます。
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2011/07/16 23:58:28