【二次創作】翻案・ぐるぐる大航海【掌編小説】

投稿日:2011/06/22 20:51:14 | 文字数:2,192文字 | 閲覧数:64 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

ライセンス:

※この作品は耳ロボp様の楽曲『ぐるぐる大航海』(http://www.nicovideo.jp/watch/nm3933237)を元にした二次創作です

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

※この作品は耳ロボp様の楽曲『ぐるぐる大航海』(http://www.nicovideo.jp/watch/nm3933237)を元にした二次創作です

『翻案・ぐるぐる大航海』 日枝学

「……冬は苦手なんだ」
 ぼくの言葉にキミは返事をした。
「唐突にどうした。一応聞くと、冬のどこがどう苦手なの」
「眠くなるところ」
「冬関係ないよね、それ」
「まあね」
「冬と言えば、冬が終わったらもう卒業なんだよねえ」
「そうだよなあ。まあ、高校生活それなりに楽しかったよ」
 高校の三年間、ぼくはそれなりに遊び、それなりに勉強をした。そんな三年間にそれなりに満足しているし、この時はまだ残されていた三ヶ月間も、それなりに楽しんで過ごすことが出来た。
 ――ところで、とキミが話を変えた。
「××はさ、将来何をやるつもりなの」
「何をやりたいか、じゃなくて?」
「うん」
「そうだなあ」
 この時、将来やりたいことは、無いわけではなかった。けれど、将来何をやるのかと問われると、答えに詰まったのだ。将来やりたいことがあるとはいえ、ただ何となくやりたいなと思っているだけだったので、それを将来の職にするかは、決断に迷ったのだ。

 覚えているだろうか、キミとこの会話をしたのは、確か高校三年の十二月のことだったな。
 結局、ぼくはその時決断を先延ばしにした。そのことをぼくは今でも覚えている。
 その時だけではない。この悩ましい課題を、ぼくはその時もその後も、先送りにし続けたんだ。
 ぼくが将来に向かって歩くことを止めている間にも、時だけは足を止めず、一月が過ぎ、二月が終わり、三月がやってきた。
 その頃にはもう合格発表も終わり、開放感に浸る毎日だった。知っての通り、ぼくは南の大学に、キミは地元の大学に行くことになったのだったね。

 大学生活もそれなりに楽しかったよ。
 それなりに楽しみ、それなりに勉強した。どこかで聞いたフレーズであることだろう。
 危機感や焦燥感などというものから遠くかけ離れた毎日を、のんびりと過ごしていた。実際、キミからかかってきた電話でもそうだっただろう。キミが、大学生活はどうだいと尋ねてきたとき、ぼくはのんびりとしていて快適だよと答えた記憶がある。そのぐらい、本当にのんびりと毎日を過ごしていたのだ。
 決断を先延ばしにしたまま。

 決断を先延ばしにし、ただのんびりと毎日を過ごしていたツケは、それからしばらくした頃に回ってきた。
 職はなく、充実もなく、お金も希望もなくなった。
 このままではいけないと思い全力で就活に専念した結果、大学を卒業して五年目に、ようやく職を手に入れることが出来た。酷い有り様だろう? 自分でもそう思うよ。けれどもっと酷いことに、僕はその職業を長続きさせることが出来なかった。その会社で働くことに対し、原因不明の息苦しさを感じ、窒息してしまったのだ。
ぼくが今、平日の昼間だというのにこの手紙を書いているのはそういうわけだ。
 キミはぼくがそんな駄目人間への道を突っ走っていたことを初めて知ったことであろう。今までぼくは、駄目な自分を友人であるキミに打ち明けるのが嫌で、嘘を付き続けたんだ。今思えば馬鹿なことだけど、大切な友人だからこそ、打ち明けるのが嫌だったのだ。
 
 ぼくはこの手紙を書き終えたら、ちょっとある所に出かけてこようと思う。
 時を巻き戻す神社があるという話を聞いたんだ。そこに行ってくる。
 そりゃあ勿論、時を巻き戻してくれるだなんて、そんな都合の良いこと、信じてはいない。だからこれはちょっとした気休めだ。現実逃避とも言えるだろう。
 だからキミはこれを読んだら笑ってくれて構わない。こいつは何をしているのだろうか、ってね。ぼくもその方が嬉しい。
 それじゃ、今から行ってくる。ちなみに、この手紙だけを読むと、ぼくが全面的にぼくの人生に絶望しているように見えるかもしれないけれど、実の所そうでもない。ぼくが何をやりたかったのか知っているキミには分かると思うが、きっと、ぼくが決断を先延ばしにし続けていなかったら、ここまでキミと長い付き合いになることは無かったであろう。だからぼくは、この人生はこの人生で悪くないとも思うんだ。
 けれど、もし昔に戻れたら、ぼくは――




 
「やあ××、おはよう」
「……ん」
「おーい、寝ぼけてるのか?」
「……冬は苦手なんだ」
「唐突にどうした。一応聞くと、冬のどこがどう苦手なの」
「眠くなるところ」
「冬関係ないよね、それ」
「まあね」
「冬と言えば、冬が終わったらもう卒業なんだよねえ」
「そうだよなあ。まあ、高校生活それなりに楽しかったよ」
「ところで××はさ、将来何をやるつもりなの」
「興味の無い工場で働いて精神的に窒息死する」
「は?」
「いや、冗談」
「またも唐突なことを……」
「実はさ、昔から海外に行きたいって思ってたんだ」
「うん?」
「それでさ、今ここで決断しないとぼくは永遠に決断出来無いと思うんだ」
「はあ」
「だから今から、本当は凄く悩んでいるんだけど、海外行ってくることにした」
「はあ?」
「飽きるまで放浪してくる」
「はあぁ?」
「だからさ――」

 ぼくはキミとは違う人生を歩むことにするよ。

「――だから、バイバイ」

なにかの素材になればいいな、っていうテキストと、好きな作品をモチーフにした掌編小説を投稿できればいいなって思ってます(2013.12.25)

もっと見る

作品へのコメント1

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
  • userIcon

    ご意見・感想

    冬の曇り空に光が見えるようなラストが好きです。
    原曲にも興味を持ったので、聴いてきました!
    予想外に軽快な曲で、ギャップが面白かったです。
    「掌編小説」のサイズは曲を聴きながら読むのにちょうど良いですね。
    では、これからも新作楽しみにしています。

    2011/06/24 19:31:49 From  wanita

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >>wanitaさん
    おおお感想ありがとうございます!! 軽快な曲ですよね 耳ロボpの曲はあの雰囲気に惹かれていつの間にか好きになっていました
    読んでくださってありがとうございます!!!

    2011/06/24 20:46:16 日枝学

▲TOP