こんにちは!松岡史晃です。
誰もいない部屋の隅で、私は冷たい水槽を見つめています。ガラスの向こう側には、どこまでも深い青が広がっていて、まるで遠く誰も届かない未知の世界の底に潜り込んでしまったかのような、静かで冷ややかな静けさです。水槽の中では、名もない小さな泡がぽつり、ぽつりと生まれては消え、そのたびに静かな光が小さく揺れています。
私たちは、誰かに自分の声を届けたくて、日々言葉や音を紡ぎ出しています。その行為は、細くて壊れやすい錆びた針金を一本ずつ丁寧につなぎ合わせて、見えない何かを組み立てていく作業にとてもよく似ています。指先をかすかに傷つけながら、冷たい針金で形作っていくのは、自分だけの心を描いた繊細な骨組みです。それは何よりも愛おしく、同時に痛みを伴う作業でもあります。その針金の檻の中に、私たちはそっと感情という名の目に見えない鳥を閉じ込めているのかもしれません。
音も届かない水の底から見上げる外の世界は、どこか歪んでいて、それでいてひどく眩しく見えます。私たちが発する声は、水の中を伝わる小さな震えとなって、ガラスの壁を静かに叩き続けています。向こう側にいる誰かの一人に、この震えがいつか波となって届くのでしょうか。届いた瞬間、錆びた針金は温かい光を帯びて、美しい歌のメロディへと姿を変えるのです。
冷たい水の底で静かに呼吸を繰り返しながら、私は言葉の破片を拾い集めています。誰にも触れられたくない孤独と、誰かに見つけてほしいと願う矛盾した気持ちが、青い水の中で静かに溶け合っています。ここには激しい風も、激しい嵐もありません。ただ、言葉にできなかった不器用な想いたちが、まるで静かな水草のようにゆっくりと揺れているだけです。
もしもあなたの耳に、かすかな水の震えが届いたなら、それは私が組み立てた冷たい檻から逃げ出した鳥の羽音かもしれません。ガラスの壁の向こうにいるあなたへ、届きそうで届かないこの絶妙な距離が、実は一番美しいのだと知りました。だから私は今日も、指先を少しだけ痛めながら、冷たい針金に青い光をそっと巻き付け、誰も知らない小さな歌を冷たい水のなかに放ち続けます。
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