「♪~♪♪~♪」
泉の近く、其処で綺麗な歌声が奏でられていた。歌っている本人―少女は木に腰掛け、目を閉じ言葉を紡ぎ出す。サワ、と風が吹けばその歌っている少女の柔らかな金髪をフワリと宙に踊らせる。金色の髪に白で統一された服、そしてその背中からは穢れを知らぬ様な、純白の翼が生えていた。
「♪~♪~♪♪」
歌い終わり、フゥ、と息を付くと パチパチ、と拍手の音が耳に入った。パ、と立ち上がり後ろの方を見ると桃色の髪に、やはり白で統一された服を身に付け、そして純白の翼をその背に持った、美しい女性がにこやかに微笑んでいた。
「ルカ様」
少女は慌ててその場に座り込もうとするがルカ、と呼ばれた女性は「良いのよ、さ、立って」と言って座りかけた少女の身体を掴み、立たせた。
「噂には聞いていたわ。リン・・・だったわね、名前。とても素晴らしい声で歌を歌うと評判よ」
フワリ、と包み込む様な笑みを浮かべたままルカは少女、リンに言う。
「そんな・・・四天使であるルカ様には及びませんよ・・・」
頬を赤らめはにかみながらリンは言った。四天使とは、春、夏、秋、冬、其々の四季を司る、天使の中でも最高位の天使長に次ぐトップクラスの天使だ。因みにルカは春を司っている。
「いいえ、もしかしたら私よりも上手いかも知れないわよ」
フフ、と悪戯っぽく笑みを浮かべ、ルカは言う。その言葉にリンは 恐縮です、と言ってペコリと頭を下げた。その様子を見てルカはクスリと笑う。
「本当に礼儀がなっているのね。さて、そろそろ戻りましょうか、リン」
「あ、ハイ」
ルカに言われリンは其れまで下げていた頭を上げた。此処は天界の中でも端の方にある。今から戻らないと住んでいる町に着くまでには日が暮れてしまうだろう。
そう思いながらリンは一歩、踏み出した。其処には地面は無く、リンの体はガクリと傾いた。
「え――?」
落ちていく、堕ちていく。 そう言えば天界には人間界に通じる穴が幾つもあるとか聞いたっけ? そんな事を考えながらも、リンの体は堕ちていく、落ちていく。
「リンっ!」
ルカの叫び声が耳に届いた、と思った一瞬後、リンの意識は一気に掻き消えた。
「暇だなぁ・・・」
昼休み、学校の裏庭にある大きな木にもたれながら少年は呟いた。木漏れ日に当たる彼の髪はキラキラと金色に光る。
「あ、レン君、此処にいたんだ。もうそろそろ五時間目だよ」
「ミク姉」
ボスン、と頭を本の背で叩かれ、少年、レンがその方を見ると幼馴染とも言える、自分より一つ年が上の少女、ミクが タンタン、と本の背で自分の手の平を叩いていた。
「学校終わったんじゃないんですか? ミク姉・・・いや、初音先輩三年でしょ?」
「良いよ、ミク姉で。図書室で勉強してたの。大学受験も大変なんだから、今」
ハァ、と息を吐いて、ミクは空を仰ぎ見る。しかし其れも一瞬で直ぐに目線をレンに戻す。
「ホラ、早く戻らないと遅刻だよ。私は図書室にいるから」
それじゃ、と言うとミクは校舎方面に走って行ってしまった。フゥ、と息を付いてレンはス、と立ち上がる。
「んじゃ、俺もそろそろ戻るかな・・・」
うん、と一回伸びをして、レンは木陰から抜け出した。と、
「キャアアァッ!」
声が、降ってきた。
上を見る間もなくレンは落ちて来たそれを両腕で無意識下の内に受け止めていた。
落ちて来た衝撃で一瞬重く感じたが、やはりそれは一瞬で、慣れてくるとそれはとても軽かった。
「・・・つーか・・・人・・・? だよなぁ・・・声したし・・・」
ふと首を傾げた後、レンは自分が抱いているそれを見た。そして、絶句した。
「羽・・・?」
受け止めたそれ―少女は金色の髪に白で統一された服を着、そして、背中から、羽が生えていた。
「うぅ・・・?」
落ちていた恐怖からか、固く閉ざされていた瞳を少女はゆるゆると開いていく。そしてその目が完全に開いた時、レンとはたと目が合った。
一瞬の、沈黙。 そして、
「きっ・・・キャアアアァァっ!」
悲鳴が、轟いた。
「・・・申し訳御座いません・・・」
「いや・・・別に良いんだけどさ・・・」
しゅん、と項垂れ、少女―リンはレンに頭を下げた。その様子にレンは慌てて手の平をヒラヒラと振る。
あの後、リンの悲鳴を聞いた人達(まぁ殆ど全員なのだが)がワイワイと騒ぎ、此方にやってくる前にレンとリンは屋上に一時非難をしていた。
因みに今、リンは背中の翼を消している。そういう事も可能なのだそうだ。必要な時に翼を出す、それ以外では翼を出さない、なんとも良く出来たシステムである。
「本当に申し訳御座いません。私には人間界の知識など全く無いモノで、レン様に助けて頂いたと言うのに・・・悲鳴なぞあげてしまいまして・・・。レン様には重ね重ね迷惑をお掛けして本当に幾ら謝っても謝り足りない位です・・・」
「いや、あの、ホント大丈夫だから。迷惑なんてしてないよ。それにしょうがないじゃん? リンは天使なんだし。人間世界の知識なんて無くて当然だろ? 俺達だって天界とか地獄の事とか知らないわけだし」
フ、とレンが微笑みながら言うとリンはカァ、と顔を赤らめ「きょ、恐縮です」と言って手で顔を覆った。
「でもどうすんの? 帰れんの? 天界」
レンが言うとリンは顔を少し青ざめさせた。
「そうでした! 如何したら良いのでしょう! 私、人間界の事、何にも知りません! 帰り方だって如何やって帰れば宜しいのでしょう! 空を・・・? いえ、それでしたらどれ程の時間が掛かるか分かったモノじゃ有りませんし・・・。もしかして天界の人間界に通ずる穴の様に天界に通ずる道もあると言う事なのでしょうか・・・? あぁ、私一人では如何しようもありません! 如何したら良いのでしょう!」
「あの、さ」
リンが独りであたふたしている所に、レンが声を掛けると、ピタリ、とリンの動きが止まった。
「取り合えず、リンが天界に帰れない、て言う状況でそれは凄くヤバい、て事は分かった。んでさ、どうやって帰ったらいいのか分からない、て事はその方法が分かるまでリンは此処・・・まぁ、つまり人間界にいなくちゃいけない、て事だろ」
レンが一つ一つ説明していくのに合わせて、リンはコクリと頷く。
「リンは人間界が始めてだ。何も分からない地で行き成り過ごせ、て言うのは凄く酷な事だ。だったらさ、」
其処で一旦言葉を切り、レンはスゥ、と息を吸う。リンはレンが何を言い出すのか、不思議そうに首を傾けていたが次に続いたレンの言葉に頭が真っ白になった。
「リンが天界に帰れる方法が見つかるまで、俺んち来る?」
天使の迷い子
唐突に思い浮かんだので載せてみた。一応短編です。そしてリンレン・・・いや、レンリンになる予定です。
リンが天使です。少しおっちょこちょいの。でも歌は上手。
レンは高校生です。二年生ですね。ミクは三年になる近所のお姉さん兼幼馴染。
ルカさんは四天使。偉い人です。ある種。
これからどうなって行くのか、楽しみにしてて下さい。あぁ、テストなんて無くなればいいのに・・・(テスト期間真っ最中
それでは読んで頂き有難う御座いました!
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