思えばその子の眼は最初から何かに怯えているようだった。
 いくら慰めの言葉を投げても、その色は増すばかり。
 実際、僕は全然わかっていなかった。
 すべてに意味が込められていたのに。
 その子のことも。言葉も。行動も。
 一緒に時を過ごしていたのに。
「ぼくの事、聞かないの?」
 風の強い日だった。空も暗くて、雲が蠢く様に流れていた。
 古い木の狭い洞窟で僕らは膝を抱えて、ぼんやりと外の様子を眺めていた。
「聞いて、ほしいの?」
 僕は寄り添って座っているその子に問いかけを返した。
「知りたがるものなんじゃないの?」
 その子も問いかけに問いかけを返した。
 僕よりも少し高い声。
 轟々と低くうなる風の音の中では、聞きやすい、響く声だった。
「……泣いてほしくないから」
 そう微笑んで返すと、その子はぎゅっと体を縮ませた。
 またそんな風に怖がるような仕草をするから、なんていうのが本心だったら良いんだけれど、本当はただ臆病なだけだったんだ。
 僕はずるい答え方をした。
 知るのが怖かった。
「知っていてほしいの」
 でも、その子はそう答えた。
「ぼくは一緒にいたい。いつまでも」
 何かしらの決意を持った声。
 相変わらず、二人の視線は空に向いている。
 黒い雲が生きているように動いていた。そのうち雨も降り出しそうだ。
 風の呻きがいっそう大きくなった。
「だから、聞いて」
 その子の響く声がとても恨めしかったけど、僕は笑って言う。
「……いいよ」
 空に笑って、見ないようにした。
 その代わりにぎゅっと手を握った。
 震える手で、強く、強く手を握った。


 そして真実がまたぼくらを傷つけていく。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

鬼の子-その4-

短いけどあげておきます。
そしてどんだけ「その子」を引っ張るんだ(笑
次回では少しわかるはずです。たぶん。
そして、君たち前回の純粋さは何処へ行ったんだい?
台詞が心なしか黒いです。
勘違いだったら良いんですけど・・・
質問に捻くれたこと言ってますね。
はっきり答えんかい!!笑

感想、意見、指摘、などなど何かありましたら是非お知らせくださいませ。

次回「昔話編」なるべく早くあげれるように頑張ります!!

閲覧数:1,651

投稿日:2009/01/11 20:40:00

文字数:714文字

カテゴリ:小説

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    痛覚

    ご意見・ご感想

    早速逆さ蝶様からご感想をいただきました!!
    そして真実は次回にわかります(笑
    「ぼく」
    素朴な一人称です。
    決して派手なものではないです。
    皆様はご自分の事をどうお呼びしますか?
    どうしてそう呼ぶようになったのでしょう?
    そして、次回に続くのです(笑
    読んでくださってありがとうございます!!

    2009/01/13 00:56:09

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