第四十話 我久屋

 我久屋の若旦那は、あれこれ私に話してくれた。
こんなただ今日から奉公するだけの、見ず知らずの娘に、こんなに色々話していいのか。
それは、心の奥に秘めておくことにしよう。


 「……あら、若旦那。お客様ですか?」


 唐紙が開く音とともに、鈴を転がすような澄んだきれいな声が聞こえた。
振り返ると、とてもきれいな女性が笑顔を浮かべて、障子を挟んで向こう側の廊下に座っていた。

 「ああ、お依亜。いいや、お客さんじゃないよ、新しいうちの奉公人、るかというんだ」

 「そうでしたか、るかさん。私はお依亜です。宜しくお願いしますね」

 にこりと笑う。
それがあまりにも綺麗なものだから、少しの間、呆けてしまう。

 「あ、はい、宜しくお願いします……」

 あわてて私も頭を下げる。
ここの世界では『礼に始まり、礼に終わる』が基本だと、文献に書いてあった。

 「お依亜は、俺と、その……縁談がまとまっていて……その……」

 若旦那がお依亜さんを、見る。
どうやら、結婚が決まっているらしい。

 ということは、近いうちにここの若おかみになるのだろう。

 「とても、お似合いですよ」

 私がそう言うと、お依亜さんは嬉しそうにありがとうございますと言った。
若旦那はあからさまに顔を赤らめていた。

 きっとこの二人なら幸せになれるだろう。


 「ああ、もうこんな刻限かい。そうか、お依亜は昼餉を知らせに来たんだね。るかさん、昼餉の刻限だ。俺が案内するよ」

 「あ、はい」

 
 そう言いながら、立ち上がろうとした時だ。

 足に何とも言えない激痛が走る。
……激痛、ではないな、何だろう。何もしていないのに、足が無性に痺れている。

 と思考を巡らせていると、若旦那は私のその変な行動の理由がわかったのか、私の手を取って立ち上がるのを手伝ってくれた。


 「いや、申し訳ない。俺が少々喋喋し過ぎて、痺れを切らしてしまったんだね」


 若旦那の体温が、手を通して伝わる。
仄かに、温かい。

 なんだろう、か、これは。

 足がしびれているから、何かおかしくなってしまったんだろうか。
恐るべし、日本の文化、正座……。



 「さあ昼餉に遅れてしまうよ」

 「お味噌汁が冷めてしまいますよ」


 「あ、はい……」




 放された手に、少し名残を感じながら、二人に連れられて、昼餉へ向かった。





ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ノンブラッディ

なんか。
遂に四十話を超えてしまた……。
……長っ!!

閲覧数:100

投稿日:2013/03/11 19:34:58

文字数:1,025文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • ハル

    ハル

    ご意見・ご感想

    イアああああ!!!イアかわいあぁぁ!!!え?結婚?・・・IAちゃんの旦那さんが羨ましいぜっ

    リア充爆発しろとか言えないじゃないかそんな笑顔で言われたら!!((

    激痛・・あるある。筋肉痛((そんなんじゃない 
    着物姿・・(ポワーン)IAちゃん可愛いだろうな~・・

    2013/03/11 23:48:35

    • イズミ草

      イズミ草

      おおう……なんかこのお依亜さん、
      大好評っぽい??ww

      否、むしろ爆発しないでほしい!!ww

      はいはーい、戻ってきてくだされ―wwリアルへww

      2013/03/12 18:29:20

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    イアああああああああ!!!!hshshshshshshsh……ハッ!!
    いえいえ、着物姿のいあたん想像して鼻血吹いてなんかないですからね、いやいや本当に。

    2013/03/11 21:09:13

    • イズミ草

      イズミ草

      ふおおおおお!!?
      お気を確かに!!

      2013/03/12 18:28:06

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