【はじめに】20XX年某月某日
この足元にあるサークルが僕の行動範囲
つまりは一歩も動けないハリツケ状態
そんな僕が大好きな貴女に綴った
天涯孤独のラブレター

【であいのはる】20XX年4月
早いもので季節はくるくる 廻って忙しそうだ
翠玉の瞳で僕は世界を見渡す
動けぬ身の代わりに“神様” この目をくれたんだけど
見てるだけなんてツマンナイよ

そんな折りに僕の前にやってきた
無愛想な盲目の少女に恋に落ちた

吹き荒れる春の風はまるで
僕を諌めるように体当たりしてくる
でも止まらないよ 止まれないよ
だってこんなに幸せで愛しいのに

動けない僕と動ける彼女
何でも見えるあ僕と何も見えない彼女
凸凹な二人の めくるめく一年が始まった

【ゆううつのなつ】 20XX年7月
変わりやすい顔色くるくる 中でも笑顔が素敵
死滅した瞳は虚ろに世界を見渡す
動ける身の代わりに“神様” その目を刳り貫いたんだって
見えない毎日はサミシイナって

向かい合って僕の前でそう言った
頑張り屋な盲目の少女に手を差し出す

肌を焼く夏の日射しの下
僕の行動範囲から乗り出してみた
ねえ泣いていいよ 笑わないよ
だって泣いてる貴女も愛しいから

【いへんのあき】 20XX年10月
相変わらず動けずくるくる 弄って遊ぶ黒髪
翠玉の瞳がなんだかちょっと痛いな
そうして迎えたある日の朝 “神様”やってきて
僕から両目を刳り貫いていった

“どうして”とか今更すぎて訊けない
忘れんぼで傲慢な咎人に救いはない

降りかかる秋の雨はまるで
僕を慰めようと泣いているみたいだ
もうどうでもいい どうでもいいよ
だって最後に貴女と出逢えたから

【ふろうのせらふ】 20XX年??月
その昔 “彼”は世界の理(ことわり)に背いて
すべての色を奪い去った
神々は怒り狂い “彼”から自由を取り上げて
小さな円のなかに閉じ込めた

【せきべつのふゆ】 20XX年12月
早いもので季節はくるくる 巡って僕を置いてく
何もない眼窩を閉じて思い出していた
彼女が初めて来た日のこと あの目を誉めてくれたこと
思い出すだけでシアワセだよ

こんな場所にひとり自業自得さ
こんな僕は手遅れでどうにもならないんだ

降り積もる白い雪の中
僕は行動範囲にて手紙を綴る
もう会わないんだ 会えないんだよ
だって貴女の笑顔が見れないから

【あいのことば】
愛しい気持ちを書き残す
出逢ったときから貴女を愛してる
なんだかくすぐったいな
思わず涙が零れてしまうくらいに

浮かんだ言葉を次から次へと
忘れないように取り零さないように
余すことなく綴りましょう盲目の少女に
僕からのささやかでお節介なプレゼント



【びょうしょうのかのじょ】20XX年1月
不意に声が聴こえた気がした 途端に見えた景色は
眼を覆いたくなるくらい鮮やか過ぎて
望んでいたはずなのになぜか 涙が零れて落ちていく
手元の手紙の送り主は

「貴方なの?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

天涯孤独のラブレター

羽をもがれたセラフの浮浪旅行記。
罰を受けた千里眼と盲目少女の物語。

さてはて、ハッピーエンドかバッドエンドか。

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投稿日:2013/10/21 10:57:23

文字数:1,244文字

カテゴリ:歌詞

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