Lied~青い瞳の死神~
「Gebet」


 兄さん。私の大好きな兄さん。

 兄さんの空のように澄んだ青い瞳が好き。

 いつも優しく頭を撫でてくれた大きな手が好き。

 兄さん。今、何処に居るの……?


 あの日、兄さんは遠い異国の戦場へ旅立った。
 本当は『行かないで』って、言いたかったけど
 兄さんを困らせたくなかったから
 私は必死で我慢したんだよ。

 寂しかったよ。兄さんはいつも私の傍に居てくれたから。
 其れが当たり前だと思っていたから、尚更……。
 寂しかったよ。独りで眠る夜(Nacht)はとても永くて。
 私はいつも兄さんの温もりを求めて泣いていた。


 そんな時、兄さんから『手紙』が届いた。
 私は嬉しくて、嬉しくて、何度も何度も読み返した。

 遠い異国の香(Duft)。
 私と兄さんを繋ぐ唯一の術(Methode)。


 『私、兄さんが無事に帰って来るのをずっと待ってるよ』


 時は流れ、私は子供から大人へ。
 兄さんが綺麗だと言ってくれた髪も
 こんなに長くなったんだよ。

 でも、もうこの頃には兄さんからの手紙が来なくなっていた。

 兄さん。今、何処に居るの……?

 私、今度『結婚』するんだよ?
 兄さんも知ってる『彼』。
 兄さんに早く紹介したいな。

 兄さん。私は『幸せ』だよ。
 私の花嫁姿を見たら、兄さんはきっとこう言う。


 『綺麗だよ、とてもよく似合ってるね』


 うん。兄さんは笑顔で私達を祝福してくれる。

 兄さん。会うのは無理かもしれないけど
 兄さんは今、何処に居るの……?

 元気なの?怪我してない?ちゃんとご飯食べてるの?

 ……聞きたい事、いっぱいあるんだよ……。



 兄さん。今日の空は昼間なのに真っ赤に染まっていたよ。



 紅蓮の炎。逃げ惑う人々。断末魔の叫び声。

 私達の村は『地獄』と化していた。


 兄さん。私は見てしまったよ。


 小さい頃からよく私達の面倒を見てくれたおじさん……。
 いつも一緒に遊んでいた友達……。
 私の夫になるはずだった『彼』……。
 お父さんとお母さん……。

 ……そして『私』を……。



 次々と切り捨てていったのは……



 『兄さん』だったね……。




 『すまない……許して……くれ……』




 兄さんは、泣いていた。

 兄さん、どうして泣いているの?
 ……泣かないで……。

 兄さんには兄さんの事情があったんだよね?
 分かってるよ。私達、兄妹じゃない。

 兄さんの事、許さない訳ないじゃない。
 兄さんの事、私は責めたりしないよ。



 兄さん……。最期に、兄さんの無事な姿を見られて、良かった。

 兄さんが生きていてくれて……良かっ……た……。



 嗚呼……兄さんの……涙……とても……温かい……。



  ナ         イ      ニ     サ
        ナ                    ン
     カ         デ      イ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Gebet

注:経験の浅いサンホラ好きの妄想です。

Liedの兄の無事を祈る妹のお話。
Gebet(ゲベート)はドイツ語で「祈り」。

途中のドイツ語の読み方は
Nacht(ナハト)
Duft(ドゥフト)
Methode(メトーデ)

また青い瞳って……?
さぁ、本当に誰なんでしょうね(笑)。ご想像にお任せします。

ドイツ語の読み方は一応調べてはきたんですが
もしかしたら間違えてるかもしれません。
はっきりしなくてごめんなさいです。 orz

イラスト、歌詞、曲を募集してます。
心の広い方がいたらお願いします。m(_ _)m

追記:すごい今更なんですが、演出としてこの文章を読む時は
  『ゆっくり』下にスライドさせて読むのがオススメです。

閲覧数:306

投稿日:2009/04/14 11:22:42

文字数:1,283文字

カテゴリ:小説

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