「あら、おやつの時間だわ」

今日も王女の口癖が自室に響いた。
つい先刻、三時を告げる教会の鐘が王宮に鳴り響いた。
王女はつまらなさそうに読んでいた半ば押し付けられた本から顔を上げ、嬉しそうな顔で口癖を呟いた。
王女は金色の髪と海より澄んだ青い大きな瞳が特徴の、可憐な少女だ。しかし、その王女が国の頂点に君臨してからは、国はどんどん堕落していった。
王女の政治は決して「良政」などとは言えない。王宮にお金が無くなったら、国民―いや王女にとっては愚民から搾り取り、自分の贅沢の為に使う。自分に歯向かい、逆らうものは程度の差に関係なく粛清。
いつしか活気に溢れていた国民達は生気をなくし、大飢饉が起こる始末。
しかし王女は外で起こっている事など知らず、今まで通りの贅沢の限りを尽くした生活を送っているのだ。
幼いが故の、外を知らないが故の過ち。少女は、自分の豪華なドレスや食事、装飾が多数の国民の犠牲で自分に与えられているものだと知っているのだろうか。
「レン、おやつを持ってきて頂戴」
「かしこまりました」
王女―いや、リンは傍らに居る、自分とよく顔の似た召使に命令した。
王女と同じ瞳の色と髪。王女の容姿を「完全に男性に変えれば」こうなるであろう容姿だ。
レンと呼ばれた召使は、一礼するとおやつを持ってきた。
「今日のおやつは、ブリオッシュなのね!」
悪逆非道の王女、という名前からは想像すらできないような、邪気が無い、純粋無垢な無邪気な笑顔。
その笑顔を見て、召使はいつも安堵するのだった。

良く似た容姿。笑顔を見て安堵する姿。
それもそのはず。


――彼は、彼女の双子の弟なのだから。

* * * *


 ―双子は忌み児。手元に置いておけば国に災いが起こる



ある晴れた日の朝。
二人は国民達に祝福され生まれてきた。
女王の手に抱かれる、柔らかそうな布地に包まれた二人の赤子は元気に泣いていた。
女王が喜ぶ傍ら、大臣と国王は真剣な顔で女王と二人を見つめていた。
(―国王様。恐れながら申し上げます。子が二人もおれば、後々後継者争いが起きますぞ)
(わかっておる。双子は忌み児。手元に置いておけば国に災いが起こる)
(では―こうされるのはどうでしょうか?)


―それは最も悲しい決断だった―


泣き喚く赤子を、辛そうに見つめる母親である女王。
「では…後に生まれた方を、遠い親戚に預ける。それでいいか?」
女王は黙って頷いた。
女王は、ギュッと先に生まれた女児を抱き締める。
「……これで、二人が生かされるならば」
「…わかった。では出発する」
国王は「はっ!」と気合を入れるような声を出し、馬を走らせた。

「ごめんね……ごめんなさい…リン…レン…」

震える声で呟くは、涙を流す女王だった。

* * * *

「―ごちそうさまっ!」
レンが物思いにふけっていると、リンの明るい声が聞こえた。
リンは満足そうに笑顔をその顔に浮かべている。
「レンのおやつはいつも美味しいわね!」
「光栄です、王女様」
「これからもずっと傍にいなさいよ?」
「はい」
レンは、いつもと変わらない笑顔を顔に浮かべた。

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王女様と召使のお話 *2

うん、色々すみませんorz

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投稿日:2010/01/21 18:56:01

文字数:1,309文字

カテゴリ:小説

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