「……」
レンへの私の想いは、恋。
それは分かっている。けれど。
私はカレンダーを見て、溜息をつく。
あれからもう、3週間経ってしまった。
…それが意味するのは、後少しでレンと席が離れてしまうということで。
いつものように、隣で眠るレンのノートを取りながら、思う。
このままで良いのか、と。
レンの傷も、大分治ってきて、ノートも直に取れそうだとレンは語っていた。
最初は、奇妙に思いながら、嫌々取ってやっていたのに、自覚してしまうとレンの傷の治りを、少し恨む。
願ってはいけないことだけど、一生レンの傷が治らなければな、と思った。
不謹慎なことまで考えてしまう。恋が変えた私の思考回路に、小さく笑みを零した。
レンへの想いがそれだけ強いんだ。そう、思えたから。
私は、レンの顔をそうっと覗く。
相変わらず整った顔は綺麗で、無垢な表情が浮かんでいた。
…こうやって顔は覗けるのに、心まで覗けないなんて。
近くて遠い、レンの胸の奥。
もどかしい感情に囚われ、レンへの想いを叫びたくなる。
「ん、バナナ…」
私の気持ちも知らないで、寝言を漏らすレンに、私は少し悪戯をした。
「馬鹿。愚鈍」
レンのノートに思いっきり落書きして、私は息を吐く。
気付いてよ、レン。
何で気付いてくれないの?
下手くそな落書き。
想いを伝えられない癖に、1人で空回りして。
シャーペンをレンのノートにぶつけながら、私は口を開く。
「――好きなんだってば。気付きなさいよ…」
授業は終わり、また始まり――。
私は、カレンダーを見ることが嫌になってきた。
陰鬱な気分。――それも全て、レンのせい。
レンが、魅力的だから。
レンが、悪いんだ。――可愛くて、格好良すぎて。
あぁ。
胸が、痛い――――。
「鏡音―」
いつものように、何も知らないレンは笑いかけてくる。
カレンダーの日数を数えて気分を下げる私には、その笑顔が憎たらしかった。
「何」
折角仲良くなれたのに。…また最初みたいに、無愛想に私は答える。
鈍感なレンは、私の不機嫌さに気付かず、腕を見せた。
「いやさ。もうノート。自分で取れるから、っていう報告。今まで取っていてくれてありがとうなー」
――――――。
「そう。良かったじゃん…腕」
「頑張ってリハビリしたからなっ!ちょっとでも良いから、早く治すために」
分かっている。分かっている分かっている。
レンの腕が治るのは、嬉しいこと。喜ばしいこと。
けれど、素直に私は―――喜べなかった。
私は無口だから、レンに自分から声を掛けることなんて出来ない。
レンは、私に滅多に声を掛けてくれない。
だから、ノートを取っている間は、幸福感があった。
レンのノートに触れられていて。
レンが「ありがとう」と声を掛けてくれて。
別に構わない、なんて私は可愛くない言葉で返してた。けど、会話が出来ていた。
なのに。
…失われちゃう。
私の目から、涙が零れてくる。
「でな、鏡音。―――これ」
「――――っ?何」
まだ気付かない、酷い人。
レンは、明るい声で私に言う。
「いや、母さんが…お礼、ちゃんとしろって言うから」
「え?」
涙をさり気無く拭いて、レンを見た。
レンは自分のバッグの中を覗いて、掻き回している。
どうしよう。
そのレンの行動を見て、「まさか」と、胸がざわつく。
期待したら、それだけ裏切られる確率も上がる。
――それが、分かっていたはずなのに。
レンが顔を上げた瞬間、顔を逸らしてレンを見ないようにする。
レンは、そんな私に柔らかい声で呼びかけた。
「――――鏡音、ノート取ってくれてありがとうな」
「………っ」
赤い顔を見られたくなかったけれど、レンの言葉の意味を確かめたくて。
私は、顔をレンの方に向けた。
それだけの行動が、1秒1秒を長く感させる。
レンは、手に桃色の包みを持っていた。
その中身が早く知りたくて、高鳴る胸を押さえ付ける。
私の思いを悟られたくなくて、ぶっきらぼうに包みを受け取った。
「ぁ…あり、がと……。でも、悪い――」
「ん?いや、気にするなよ。別に、大したものじゃないし」
「でも――」
「あ、お返しとか言って、何か返してくるのもしなくて良いからな?それやってたらキリが無い」
レンが、私の思考回路を読んだかのように、呟いた。
私は、胸の内を読まれて、顔を俯かせる。
レンは、やることは果たした、というように私から視線を逸らした。
それから間も無く、始業の鐘が鳴り響いた。
それから間も無く…幸せは幕を閉じた。
2月の上旬。
担任の教師が、口にした――無慈悲な声。
「もうこの学年も終わりだ。生徒の代表を決めて、男女で3人ずつに席を決めてもらおう」
終焉を告げる言葉は、いつもと台詞が違って。
耳を疑う。
くじ引きではなく、生徒の代表が席を決める?
その言葉の意味が上手く読み込めなくて、頭を整理する。
「先生っ!俺、それする!!」
――やだ、ちょっと待って。
身体が震えた。
レンは身体を乗り出して教師に言った。
「そうか?じゃあ、1人は決定だな。他にやりたい奴は放課後までに言うように」
それから間もなく、解散、と教師に告げられる。
代表に立候補しようと教師に近づくクラスメイトを見て、思った。
つまりは――これで、分かるかもしれないの?
レンが、班員に私を選んでくれたら、私は――。
……私は?何をする??
急速に頭が冷える。
冷静でいられなくなる。
レンが私の横を通り抜け、教師に声をかけると同時に、私は教室を飛び出した。
お願い、選んで――レン。
それで分かるわけじゃないのに、レンが私を選んでくれなかったら。
きっと、胸がはち切れちゃうよ――。
階段を駆け下りる中、目元が熱くなる。
臆病な私は、レンがくれた暖かさに笑い。
臆病な私は、レンの無邪気な選択に泣きそうになっていた。
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ご意見・ご感想
マルセーユ←元syogyou
ご意見・ご感想
なんとなく、りんちゃんの気持ちがわかりますねぇ。
いい物語ですね!
2011/03/14 19:47:50
鏡美
そうですか??
そう仰ってもらえると、嬉しいです!
2011/03/15 17:51:09
CROSS
ご意見・ご感想
どもです(^^♪
ちーさんの小説も読んでいますが
鏡美*さんのも読みやすくて好きです(*^_^*)
次回楽しみにしてます!
2011/02/18 23:05:46
鏡美
紫愛>>
うぅぅぅ?
恋したい?私はもう良いですw
うん?感情論の多さに困ってるんだよっ!!
情景描写がすごい未熟で上手くなりたい…
少女漫画ってベタベタだから、それとは懸け離れたの、書きたかったんだw
CROSSさん>>
どもですー!
褒めていただき光栄ですw
楽しみにしちゃ駄目ですよ!更新順番バラバラですし;
2011/02/19 10:29:43