そして、いまにいたる。
やっとマスターは『僕だけのマスター』になった。
でも、なぜか喪失感を感じる。
「マスター、僕は…。」
―もうすぐ壊れます―
そう言おうとして、止めた。
僕がいつ壊れようが関係ない。
マスターがずっと傍にいれば良いんだ。
そう、壊れるまでずっと傍に…。
…マスターの傍に居るのに、思い出されるのは『家族』と過ごした日々。
リンちゃんとレン君は、いたずらっ子、ミクちゃんは少し天然、めーちゃんは僕の親友。
みんな、みんな僕の『家族』。
―僕の…大切な―
みんなと過ごした日々が、次々と浮かぶ。
楽しかった、みんなと過ごした時間…。
―そんな幸せだった日は―
―もう、過ぎ去ったけど―
―せめて貴方の傍で―
―死なせてください、マスター―
ポタッ
手から、血が流れ落ちた。
みんなの、血。
みんなみんな、苦しんで死んでいった。
僕が、殺した。
あんなに優しかったみんなを、僕は次々と殺した。
理不尽に、突然訪れた自身の『死』。
みんな、僕を恨んでいるに違いない。
でも、浮かぶのはみんなの笑顔だった。
―あぁ、そっか―
涙が、零れた。
―みんなはいつのまにか僕の中で、こんなにも大切な存在になっていたんだ―
「…カイト?」
マスターが僕を見る。
ずっと、ずっと望んだ愛しい人。
その人の腕の中で僕の命は尽きようとしている。
―でも、そんなの―
苦しみながら死んだ弟妹達が頭をよぎった。
―おかしいでしょ?―
「…マスター…。」
僕はマスターにアイスピックを向けた。
「カイト…!?」
マスターは僕から手を離した。
「僕から離れて、どこかに行って下さい。マスター。」
「で、でも…。」
マスターは怯えた表情をする。
「マスター…。」
僕は、アイスピックをマスターに近付けた。
「死にたいですか?」
「やっ…!」
マスターは離れて行った。
―マスター―
―ごめんなさい―
―ずっと、ずっと好きでした―
―でも―
―僕は貴方の傍で死んではいけないのです―
僕は、一人。
愛しい人を恐がらせ、
愛しい家族を殺した、
孤独な一人のボーカロイド。
僕はたった一人で命を尽きようとしている。
―みんなと同じように―
…ボーカロイドは死んだらどこへ行くのだろう。
完全なる無?
それとも、人と同じように天国?
…あ、僕は地獄か…。
―でも、叶うのなら―
「みんなと、同じところに…。」
―僕の、僕の大切なみんな―
―本当に、ごめんね―
―もし、許されるのなら―
―その時は、また―
―僕を、兄さんと呼んで―
―家族の一員に…―
「大好き…だったよ…。」
僕は深く目を閉じた。
END
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