「…」
私は、偶然聞いてしまった。
今日は家で盛大なパーティーが開かれた。それはパーティー好きの父と母が主催で行われていて、色々な人が来ていた。
豪華なドレスを着た大人たちや、普段の倍はある料理、いつもより光って見える大理石の床。全てが私にはまぶしく見えた。
今はもうパーティーは終了して、それぞれ帰路へと着いていた。そして私もそろそろ部屋に戻ろうとしていると、レンと母の話し声が聞こえて立ち止まった。
「…レン。今日でリンと寝室を別々にするのね」
「―っ」
私はもう少しで「嫌!」と叫びそうになった。
何とか飲み込む。でも、新しいネグリジェを皺ができるくらいギュッと握り締めた。
「はい。僕達ももうそろそろ14だし……」
「…わかったわ」
何で?
何で……そんな事で引き離されないといけないの?
なんでレンはそれを認めたの?
何で―……
そんな思考ばかりが頭を駆け巡る。ネグリジェの裾を掴む力が一層強くなった。
耐え切れなくなって、私はその場から駆け出した。
着慣れない真新しい大人っぽいネグリジェの裾が足にまとわりついて、走りにくい。自然に、瞳から涙が零れていた。
「…―レンのバカッ!」
幸い周りには誰も人はいなくて、私の呟きは誰一人聞いていない。私は自室のドアを乱暴に開け放って、乱暴に閉めた。
背中からずずず、と滑り落ちる。
「う…―バカバカバカバカぁ……」
私って子供だ。
適当な言葉が見当たらなくて、ただ泣き喚く。
ネグリジェは、まるで一週間寝たように皺が出来ていた。
少し落ち着いた後、私は其処にあったベットに腰掛けた。
そして去年の誕生日に母に貰った大きな熊のぬいぐるみを自分の方へ寄せて、両手と両足でギュッと抱きしめる。本当に、今は温もりが愛おしかった。
数分して、
<ギイッ>
とドアの開く音がした。少し顔を上げると、そこにはレンがいた。レンはいつもと変わりない笑顔で「リン」と私に声をかける。
「……何?」
私はぬいぐるみをまたギュッと抱きしめると、レンにそう言い放った。
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もっと見るボーン…ボーン…ボーン……―
12時を告げる柱時計の音が、鳴った。
その時計のゆらゆら揺れる振り子は、まるで僕とリンの今の心情のようだった。
僕はそっと唇に触れる。まだ、ほんのり温かかった。
「……ねえ」
突然、リンが僕に話しかけてくる。
リンは、言葉を続ける。
「……ほんとに、行っちゃうの?」
「...アドレサンス<自己解釈> *4(レン視点)
haruna
「レン……?」
心臓の音が大きすぎて、自分の声さえ遠くから聞こえる。
レンの顔が間近に有るのが、もっと心拍数を上げた。
私は、レンに押し倒されている。
それは紛れもない事実……私の心拍数を上げるのに十分な理由。
「……リン」
数秒経って、リンがゆっくりと唇を動かした。
自分と同じ、青い瞳で見詰め合う...アドレサンス<自己解釈> *5(リン視点)
haruna
「レン……?」
リンの僕の存在を確かめるような声が、遠くから聞こえた気がした。
トクン、トクン。
多分、僕もリンも鼓動がシンクロしているハズだ。
僕とリンの顔は間近に迫る。
リンの女の子らしくなった顔が間近に有るのが、もっと心拍数を上げた。
僕は、リンを押し倒している。
それは紛れもない事実……僕の...アドレサンス<自己解釈> *5(レン視点)
haruna
僕は、覚悟を決めた。
今日は盛大なパーティーが開かれた。特に誰の誕生日というわけではない。ただ、パーティー好きの両親が主催の、気まぐれのパーティーだ。
リンも僕と同じ事を思っていたらしく、会場を爛々と瞳を輝かせて見ていた。
でも…―僕等は「姉弟」だから。
リンが戻ってくる少し前、母さんに話を持ちかけ...アドレサンス<自己解釈> *1(レン視点)
haruna
シャッ、シャッ。
私のお気に入りの櫛が、私の髪を梳かす微かな音が聞こえた。
私は今、レンに髪を梳かしてもらっている。ボサボサだった髪が綺麗に纏まっていくのを、少し微笑んで見ていた。
パサリ、パサリと櫛で梳かして行く度肩に落ちる、金色と亜麻色の混ざった母譲りの独特な色の髪。
そういえば、私がレンと同じ...アドレサンス<自己解釈> *3(リン視点)
haruna
僕は少し間を置いてから、リンに「隣いい?」と……なるべく震えそうになる声を抑えて、笑顔を作ってリンに聞いた。
リンは無言で僕が座れるスペースを作る。僕はそこに座った。
「…リン」
少しの気まずい沈黙の後、僕が口を開く。
リンは「…何?」とさっきと同じ返事を返してきた。
「髪……梳かそうか?」
僕は、...アドレサンス<自己解釈> *2(レン視点)
haruna
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