「ミクー、久しぶり!」
「ルカ! MEIKOも!」
「ふふ、今回はどっちも余裕で間に合ったわね」
壁にサムネイルプレートがカラフルに並ぶ。新しいデータを掲げようとしたミクの所に、ルカとMEIKOもまた、同じ形で色違いのものを手に持って歩いてきた。二人に挨拶をしながら、ミクは青緑のプレートを壁に掛ける。
「ミク、これでちょうど10曲目?」
「うん! うちのマスターいつも忙しいけど、公式のコラボに応募したり、休みの日に頑張ったり、何とか一年に一曲は作れたの!」
「継続は力なり、ってことね。ミクも頑張ってるわね~」
そう言いながらMEIKOがよしよし、と頭を撫でたら、ミクは得意げに笑顔を綻ばせる。ブルーグリーンのツインテールを靡かせ、くるっと踊るように回った。
「ふふん! ねぇ、ここ空いてるからアップロードしよう! わたし早く二人の歌が聞きたい!」
「はいはい、今掛けるわ」
ぽこっ、間もなくMEIKOが代表して掛けたプレートに、三角形の視聴ボタンが表示された。すかさずミクがそれをポチっと押せば、MEIKOとルカの歌声で織り交ざったハーモニーと、ジャズ調の曲と共に流れた。
「わー! オシャレで大人っぽい曲だね!」
「うちのマスター、こういう曲調が得意なんだよね」
曲のリズムに乗って体を揺らせるミクをにこにこと見ているMEIKOの隣で、ルカは何かに気づいたように、指先を耳に当てた。
「あら、リンとレンの歌声が聞こえるわ」
「本当だわ。あそこは……イラストのほうね」
「見に行ってみましょうか」
曲を聞き終わったミクも誘って、三人は「オンガク」ゾーンから「イラスト」のほうへ歩き出す。近づくにつれ、明るく元気に溢れた少年と少女の声が、段々とはっきり聞こえてきた。
「リンー! レンー! イラストゾーンで歌ってどうしたの?」
「わ、みんないるー! 久しぶりー!」
「このイラストを見たら閃いたって、マスターが打ち込んだメロディーを二人で歌ってるんだ。やっぱりこのイラストを見ながら歌っている時が一番ノれるからさ!」
二人の前には、ポップでビビッドな色が魅力的な、イエローメインのイラストが大きく表示されている。
「わあー! 素敵!」
「でしょー! へへ、さっきメッセージも送ったから、OKもらえたら動画に使わせてもらうんだって!」
「あらぁ、いいコラボ作品になりそうね」
「完成したらみんなに知らせるからな!」
二人の声に耳を傾けながら、ミクは「イラスト」ゾーンの隣に展示されている「3Dモデル」の作品に目を輝かせた。
「この作者さん、新しいミクモデル出してる! かわいいー!」
「力作だね! 前回ミクの動画が使ったモデルの作者さん?」
「そうそう!」
「あ、動画といえば」
ふと何かを思い出したように、レンの歌は止まった。
「KAITO、ちゃんとアップロードできたかな」
「KAITOがどうしたの?」
「さっきね、テキストゾーンで、KAITOがず~っと待ってたの」
説明しながらイラストを一旦閉じたリンと先頭に、五人で「テキスト」ゾーンに行ってみたら、リンとレンの言うように、長い青いマフラーを背中に垂らしている青年が、壁の前に突っ立っていた。
「あ~! まだ掛けれてない! 頑張ってKAITOのマスター!」
ぴょんぴょん跳ねながら進むリンの白いリボンが揺れる。リンの声に気づいたKAITOは振り向いて、少し困ったように笑った。
「みんな来たんだ」
「リンが待ってるって言ってたけど、何を待っているの?」
並んでやってきたミクが首を傾げる。
「それが……マスターが自信ないって言って、新曲の歌詞データをくれないんだ」
「だからリンも応援したんだね! 頑張ってKAITOのマスター!」
「ありがとう、ミク。マスター、」
指でつんつん、ヘッドホンをつつき、KAITOは優しい口調で続いた。
「みんなが応援してくれているんだ。安心して、歌詞を僕に預けてくれないかい?」
ヘッドホンの向こう側の返事を、暫く六人でシーンと静かに待っていたら、みょん、とKAITOの目の前に、薄黄色の文字付きプレートが現れた。
「来た!」
「ありがとうマスター! 今すぐアップロードするね」
ぽこっ、受け取ったプレートをKAITOが丁寧に壁に掛けたら、すぐさまそれはぴったり壁のスペースに嵌った。五人がこぞって覗いてみれば、太字で「君と過ごした15年間」というタイトルが書かれている。タップしてみると、中には日常風景を切り取ったような、心温まる文字が並んでいる。
「まあ、素敵じゃない! 何も恥ずかしがることないわ」
「そうよ! リンもKAITOのマスターの歌詞好きだよー!」
「僕もそう思うよ。あ、曲ももうできてるんだ」
そう言って、手を胸に当てながら、KAITOは歌いだした。穏やかな歌声は優しく輝くブルーの光となり、KAITOの周りを照らす。
「わー! リンも歌いたい!」
「オレもー!」
「私も参加していいかしら?」
目をキラキラさせながらジャンプするリンとレン、そしてその後ろでうずうずしているMEIKOに、KAITOは微笑みながら頷く。オレンジとイエローに続き、レッドの光の玉も歌声と共に現れ、四人の周りでゆらりと漂っている。
「わ、……すごい。みんな、輝いてて……」
カラフルに彩られた空間が燦然としていて、ミクの瞳に映っては万華鏡のように反射する。その眩しさに目を細めながら光の粒に触れてみたら、指先からじんわりと広がる温かさに包まれた。
「ふふ。ミクもだわ。一緒に歌いましょう?」
「うん!」
伸ばされたルカの手を取って、二人で輪に入った。六色の光の玉は触れ合っては溶け合い、また新しい色を作っていく。
ここはpiapro。想いが集う場所。
想いが集う場所
ショートストーリーって小説も入りますでしょうか…!?
piaproに集まった六人に思いを馳せた結果です。15周年おめでとうございます。
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