え、やだ、ちょ、まっ! え、え? え!? 何、何何何何!? 待ってよ! え、嘘、こんな展開聞いてないよ!
何となく、リンは気が付いていた。ふとした時に、己に向けられる視線に。その視線の主も分かり切っていて、幼馴染のレンだと言う事にも、勿論気が付いている。
その視線の意味が何を表しているのか、リンは知らなかった。否、知ろうとしなかった、と言った方が正確か。
そんな、時にレンから向けられる視線を感じつつも、リンは平々凡々な生活を送っていた。そして、今日、リンとレンはこの中学校を卒業する。
早咲きの桜の花片が風に揺れているカーテンと共に踊っていた。その様子を特に興味がある訳でもなく眺めていた時、リンはレンに呼び出しを食らった。いや、別に悪い事をした訳じゃないから食らった、と言う表現は少し可笑しいが。
リンは表面では不思議そうな顔をして、その後ニッコリとレンに笑いかけ、
「うん、分かった」
と言っていたものの、内心では
(やっぱりな)
と思っていた。そのやっぱりが如何いう意味だったのか、リン自身その時は良く分かっていなかったのだが。
卒業式が始まり、長ったるい校長の話が始まるとリンはこっそりと体育館を抜け出した。
ヒラリ、と目の前を桜の花片が舞い踊る。その桜の花片よりも奥にいるのはリンを此処に呼び出した張本人のレンだ。
「で、話って何?」
首を傾げてリンはレンに問う。心の中では分かっているのに、何も知らない振りをして。知ってるのに隠し、知ってるのに知らない振りをする。其処の分かれ道はどうしようもなく。
ス、と息を吸って ハァ、と吐き出す。その動作を何回か繰り返した後、レンはリンの方を見据えた。その目は何時に無く真剣なモノでリンは内心ドキッとした。そして、幾度目か、またレンは息を吸うと、こう言った。
「僕・・・・・・、ずっと前から・・・・・・リンの事が、好きだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
レンの言葉を聞いて、リンの頭は一瞬、フリーズした。頭が真っ白、とはこういう事を言うんだ、何て頭の隅でそう考えてる自分がいた。
え、ちょ、何? 何この展開? え・・・? レンはあたしの事が・・・好き? ・・・え? え? 待って、待ってよ、だって、だってあたしはレンの事、幼馴染として・・・友達として・・・。
え? うぇ? 何? 何もう、頭が可笑しくなっちゃいそうだよ、いや、もう可笑しくなってるか。
あ~う、あ~う、あ~う・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・リン・・・?」
リンの様子が変なのに気付きつつも声を掛けるのを躊躇っていたのだろう、そっと、腫れ物に触る様な、とは良く言ったもので、その様にレンはリンに問いかけた。すると、
「ごめん、ちょっと考えさせて―――――――――っっ!!!!」
そう叫ぶとクルリと方向転換してリンは勢い良く走り出した。
「は!? え、ちょ、待てよ! リン!」
最初はリンの様子に唖然としていたレンだが、ハッと正気を取り戻すとリンを追い駆け、レンも走り出した。
ダ、とリンは思い切り駆けて行く。此れでも陸上部の元エースだったので走りには自信がある。けれど、今まで走ってきた中で、今が一番息苦しかった。そんなに走った訳でもないのに。
もう、何もかも全部投げ出して、このまま全力疾走していたいよ。・・・問題は一先ず置いといて・・・。
だって元から近過ぎたあたし達なんだから、一度は離れてみないとね。近くだと、大事なものもハッキリと見えなくなっちゃうから。
駆け出して、駆け出して、何時かタイムをかけたら、きっと、自ずと分かってくるんだ。
本当の、あたし自身、きっと
駆けながら、リンはチラリと後ろを見る。其処にはリンが走る羽目になった張本人のレンがいる。ハァハァと荒い息遣いが此方にも聞こえてきそうだ。
元々レンは体育会系ではない。アウトドア派、インドア派、どちらかと言うと、迷う事無くインドア派の人間である。
一方のリンは上記でも説明通り、陸上部の元エースだったので、走る事に事欠かない。
そう言えば、レンは小さい頃からあたしが引っ張ってあげないと外にも友達とも遊ばない子だったな。
ふとリンは走りながらそんな事を思い浮かばせていた。そしてそれがきっかけとなったかのように、リンの頭の中に、レンとの思い出が湧き上がってきた。
小学校に上がった時、怖がるレンの手を取って学校に行った事、運動会でリンは何時も一位だったのにレンは何時もビリだった事。宿題を一緒にやっていたのにリンだけ眠ってしまって、気が付いたらレンがリンの分まで宿題をやっていてくれた事。
中学に上がってから、あまり話をしなくなった事。体育の授業の後、廊下を歩いていたらレンが見知らぬ女の子と何か話していて、その時のレンの頬が赤くなっていたのをその時は気にしなかったものの、後になってから沸々と気になりだした事。
そして、今日、レンに告白された事。
最後に思い浮かんだ事に独りでに頬が熱くなる。その熱を取り払うかのようにリンはブンブンと首を横に振ると更に足に力を込めて走り出した。
走って逃げてみたは良いけど、やっぱり追い駆けてくる一つの未来。
暖かな春の日差しはカーテンの様で、その中で繰り広げられる逃走劇。
しらばっくれても駄目なのは分かってるよ。
けど、今は意地になっても良いでしょ?
心は今、有酸素運動中です。
地球と一緒にぐるぐるとあたしのハートが回るの。
気持の整理は、割とのんびり目で。
急いで出した、あの答えは違うの。
大事な事、大事な事なんだから、もう少しだけ、待ってね?
逃走、逆走、今から逃げ出したいの、今だけは。
もう一歩、もう一歩 離れてから 見てみて。責任は・・・まぁ、置いといて。
悩みすぎも考えすぎも、不必要な栄養素。
あの、今、あたしの視界に見えてる隣の山まで、ある程度遠くへ走り抜いたら、
違う景色が見えるよね、きっと。
それからリンは無我夢中で足を運んだ。後ろから何時の間にかレンがいなくなっている事にも気が付く事も無く、ただただ、リンは走った。
夢中で、夢中で走っていって、坂を上り終え、ふと後ろを振り返ってみると、其処にレンの姿はなかった。誰も追い駆けてこない、鬼ごっこ。
逃げ出したのはあたしなのに、捕まりたくなかったのは、あたしなのに、捕まえて欲しい、て思うのは、そういう事ですね・・・?
ツウ、とリンの頬を涙が伝う。ボロボロと流れてきて、止まる事を知らない様に、涙が溢れて、止まらない。
「うっ・・・あ、ひっく、レン・・・レン・・・。何処・・・? 何処にいるの・・・? 寂しいよ・・・早く来てよ・・・好きなんでしょ? あたしの事、好きなんでしょ? だったら・・・早く来てよぉ・・・れぇん・・・」
流れる涙を拭うのに気が向いていたから、リンは気付かなかった。誰かがリンの元に駆けて行ってる事に。そして、
「見つけた!」
ぐい、と腕を引っ張られ、其処にいたのは、
「あ・・・・・・」
「ごめんごめん、ちょっと此れ、買おうと思って、さ」
ニッコリと微笑みながらリンにチョコミントのアイスクリーム(ダブル)を差し出したのは、紛れも無く、レンだった。何処で外してきたのか、眼鏡は掛けていない。
差し出されたそれを見て、リンは呆然としていたが、その状態のまま、リンはレンからチョコミントアイスを受け取った。その様子を見て、レンはまた、ニッコリと笑った。
「小さい頃、良く一緒に食べたよな、これ。何時もチョコミントのダブルでさ。何か、懐かしくなったから」
そう言ったレンの表情が今まで見た事が無い様な優しげな笑顔だったから。リンは赤くなる顔を隠すようにレンに背中を向けた。
逃げ出して、全力疾走で走って、問題は、まだ、ちょっとだけ置いといて。
近過ぎたら大事なものもはっきりと見えなくなっちゃうでしょ?
逆向いて分かる事もあるんだね。何があたしにとっては大事かって
違う景色、見えるよね、きっと
「リン・・・?」
レンに声を掛けられたと同時にリンはレンの方を向いた。そして、その顔に満面の笑みを浮べると、
「あたしも、レンの事好き!」
そう言って、レンに思い切り抱き着いた。
「な、ちょ・・・、リン!?」
「何照れてんのー。告白したのそっちじゃないの。それとも、何? あれは嘘だった、とか言うオチ?」
「・・・・・・いや、嘘じゃないけど」
「だよね」
君となら、きっと―――・・・
~おまけ~
「あ、レン」
「? 何?」
「これからは眼鏡、外してね。別に無くても生活に支障は無いんでしょ?」
「はぁっ!? ま、まぁ、そりゃそうだけど・・・。つか何で?」
「眼鏡取った方がレン、格好良いから」
「・・・・・・・・・・・・」
「何その沈黙!」
「・・・分かったよ、掛けなきゃ良いんだろ、掛けなきゃ」
「それで宜しい♪」
「・・・・・・・・・・・・」
【自己解釈】 逃走ロマンティック 【原曲イメージ崩壊注意】
逃走ロマンティックです。結構書きたかったんですけどね・・・中々機会が無くてですね・・・うにぃ・・・。
何か文章可笑しいですが、気にしないで下さい。単なる作者の無気力状態の為なので(如何にかしろよ
そして高校に入った後、レンは眼鏡外して学校行く様になって、モテ始めてリンが嫉妬すれば良いと思うんだ・・・←
それでは、読んで頂き有難う御座いました!
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