東京・原宿で人気の玩具店「キディディ・ランド」。
ここの店長は、ちょっとそそっかし屋だけども明るい、カイくんが務めている。
毎日子供からお年寄りまで、いろんなお客が、欲しいものを探しにやってくる。忙しい毎日だ。
●和風が似合う女になろう
土曜日。中学生のリンちゃんが、キディディ・ランドへやって来た。
彼女は、原宿の音楽レンタルスタジオで、バンドのデモテープを録音した帰りに店に立ち寄った。
「こんにちわあ。カイのおにいちゃん」
「ああ、いらっしゃい、リンちゃん」
店の棚に新商品を並べていたカイくんは、手を止めて答える。
おにいちゃん、と言っているが、2人は兄妹ではない。でも彼女はよくこの店に寄り、カイくんを兄のように慕っている。
「きょうもバンドの活動?」
「うん。デモテープ録ってるの。あした、仕上げて終わりなんだ」
「そう。リンちゃんのメジャー・デビューも近いね」
「フフ。だといいけどね」
リンは、友達と「シグナル」というガールズ・ロック・バンドを組んでいる。
学校内ではもちろん、学校の外でもクチコミで人気が広がり、デモテープを録ってみようという事になったのだ。
「今、どんな曲をやっているの?」
「和風のテクノ・ポップ」
「え?」
「へへ、変わってるでしょ」
どういう音楽なのか、見当もつかない。
リンは言う。
「それで...ってわけじゃないけど、ちょっと和のテイストでオシャレも決めようかな、なんて思って」
「和のテイストの小物、ね」
「うん。ここにあるかな」
カイくんは彼女を和の雑貨のコーナーへ連れて行った。
リンは一つ一つしげしげと見たり、手にとって触ったりする。その中の、和風の模様の髪飾り...「くちばしクリップ」(ダッカール)が気に入った。
「これ、くれる?」
「かしこまりました。リンちゃんも“和”がにあう、お年頃ってワケだ」
「ヘヘ、そうかな」
リンは結局、和風の髪飾りと、クリーム色のミニ風呂敷、漆塗りの小さなミニミラーを買うことにした。
●ジャパネスク・リンちゃん
次の日、日曜日の朝。
今日は、デモテープの録音の仕上げの日だ。
きのう録音ではりきったリンは、寝坊をしてしまった。
目覚まし時計を自分で止めてしまい、寝込んでいて親に起こされ、やっと起き出す。
寝ぼけまなこで、あわてて仕度をして家を飛び出した。
リンの家は下町にある。
駅まで走っていくと、なじみのご近所さんによく会う。
「よォ!リンちゃん。今日は“粋”だねぇ」
植木をいじっているおじいさんが、声をかける。
「おはようっ」
「あら、リンちゃん、かわいいね、今朝は。ジャパネスク?」
道を掃除しているおばさんが言う。
「どうもっ」
リンはパタパタと駆け抜ける。
電車を乗り継いで、原宿に到着だ。
改札を出て、録音スタジオまで走っていくと、キディディ・ランドの前にさしかかる。
時刻は10時前。開店前の店の前の通りを、カイくんが掃除していた。
「おはよー」
「リンちゃん。今日は早いね」
リンは店の前で足踏みをしながら、昨日買った「くちばしクリップ」の付いた髪を指さす。
「どう?似合う?」
「さっそくしてるね。クリップも、風呂敷も」
リンは立ち止まって聞く。
「え?風呂敷?なに?」
「ほら、それ」
リンが自分の胸元を見ると、いつもしめている黄色いリボンのかわりに、クリーム色のミニ風呂敷がそよいでいる。
動いたり走ったりすると、2羽の千鳥が飛ぶ柄が見える。
「......(ねぼけて間違えた)」
「ちょっと変わってるね。独創的だけど、いいかもね、和風で」
ワ...ワフー、すぎるよ (゜-゜;)
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