※プロローグ※

あの日、あの場所であたしは恋をした。
決して叶わない恋を――…
それは禁断の果実のようにひどく甘く切ない恋。
あの人のためなら簡単に翼も地位も容易に捨てられる。
そんな恋をあたしは知ってしまった…



「リン、捨てるというのか?この父なる主のおられる天上を…そして天使としての座を。俺を…裏切るのか?」
「裏切る?カイトは一度だってあたしに応えてくれたことないじゃない…それにもう決めたことだよ…彼女の為なら全てを捨てられる…彼女以外要らない。この翼も、お父様の愛も、カイトの信頼すら要らない。これからは消えてしまったレンとして地上で生きてく」
「……っ!!」

美しくも歪んだ静かな天上であたしは自分の思いを彼にぶつけた。
途端に歪められた整った顔。
あたしの憧れで誰よりも美しく強い天使長。
見たことのない歪んだ顔すら綺麗で心が痛む。それでもその道はあたし自身が決めた道だから譲れなかった。
震える唇であたしは彼に最も残酷な詞を投げた。

「さよなら、カイト。大好きだったよ…だけど《僕》は彼女と生きていく」

雲の隙間から身を投げる。
彼が駆け寄り手を伸ばしてあたしを捕まえようとしたけれどあたしの翼が炎に包まれそれを遮った。
焼き焦がされる痛みに顔を歪める。だけどその痛みはこれから犯す罪に比べたらちっぽけな物にしかない。
迫り来る地上に手を伸ばしあたしは笑う。
そして愛しいあの人の名前を紡いだ。

「ミク…今行くから」

それがあたし――天使・リンの最期だった――…

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

禁断の果実1【※秘蜜-黒の誓い-の個人解釈小説】

秘蜜-黒の誓い-の解釈小説です。
拙い文章ですが原曲の世界を描いてきます。
曲の設定が衝撃的でこうじゃないかと次々浮かんだのをただ書いてるので許してください

閲覧数:455

投稿日:2010/09/18 14:03:22

文字数:649文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました