チャラリ、と綾の胸元で首飾りが揺れた。銀の楕円形の薄い板が、中央に一つ、そしてその一つを護る様に一回り小さい板が一つずつ、綾の着ているワイシャツの上でチャラリと揺れた。
 因みに今、綾は何時もの薄茶色のローブを羽織っていない。綾曰く「だって暑いんだもん!」との事らしい。まあ、気持は解らなくもない。けれど、綾と同じ様に、黒のローブを羽織っている憐はそれを脱ぐ気はないらしいが。
「綾様、その様な首飾りを持ってらしたのですね。気付きませんでした」
 劉華は目線をその首飾りに集中させたままそう言った。綾は少し気恥ずかしそうに笑った後、「まぁね」と言った。
「私、ずっとローブ羽織ってたし。劉華さんが気が付かないのも無理ないよ」
「でも、それは大事なモノなのですね。誰から貰ったのですか?」
 フワリと微笑んだまま、劉華は綾に尋ねた。すると、綾の顔から、笑みが消えた。そして、
「誰だろう・・・・・・・・・」
「え・・・?」
「誰から・・・・・・だっけ・・・・・・。覚えてない・・・。何時の間にか、つけてたの。元から私のモノだったみたいに。大事なモノ、とても、とても大事なモノ、誰か大切な人から貰った、大切なモノ・・・・・・・・・・・・・・・。なのに・・・如何してだろう・・・・・・・・・・・・・・・。

                       覚えて、無い・・・・・・・・・」

 そう、言った。それはまるで独り言の様でいて、しかし、誰かに、劉華に、語り掛けている様な口調だった。
 誰か大切な人から、と言う所で劉華は察しが付いた。

     あの首飾りは、綾がリンであった時に、憐から貰ったものだと。

 多分、前世の方で。その前ではない事は劉華には分かる。その時は、綾は“リン”で、憐は“レン”として、同じ時を過ごしていた、恋仲だったのだから。
 
 生前、死神から貰ったモノの記憶を、人間は失う、と言う話を劉華は聞いた事がある。綾は、その所為で、忘れてしまった、否、忘れられてしまったのだろう。

       この世の、いや、この世界での絶対権力者、神の手によって

 けど、けれど、此れが掟だと、運命(サダメ)だと分かっていても、尚――――・・・・・・・・・

「神は、無慈悲なモノです・・・・・・・・・・・・」
「え? 何か言った? 劉華さん」
 劉華の独り言に耳聡く反応した綾は劉華の顔を覗き見る。その様子は、もう首飾りの事など気にしていない様だった。
「いえ、何でもありません。綾様は良いのですか?」
「? 何が?」
「その首飾りの事ですよ」
「あぁ、これね」
 そう言って綾は首飾りの紐の部分を持ち上げる。チャラリ、とまた板が揺れた。
「まぁ、ね。覚えてないもんは仕方ないよ。その内思い出すだろうしさ。あ、もうそろそろだったよね」
 不意に話題を振られ、劉華は一瞬何の事かと思ったが直ぐに分かった。

           綾と行動している理由は唯一つ。刑を執行する為。

「えぇ。それでは、参りましょう、綾様」
 劉華の言葉に綾は頷き、二人は一緒に歩き出した。

 チャラリ、と銀の首飾りが何処か寂しげな音を奏でた。

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思い出したい、思い出せない ~鎌を持てない死神の話 番外編 7~

鎌を~、番外編久々過ぎて幾つだか覚えてないよ!←
あ、因みに作中に出て来た死神から生前に何かを貰ってもその事を忘れる、て言うのは単なる私の想像です。その場で出来た付け焼刃です←

それでは読んで頂き有難う御座いました!

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投稿日:2010/09/20 15:06:23

文字数:1,322文字

カテゴリ:小説

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