仄暗く黴臭い部屋
気が付けばそこに居た
傍らに男の姿
その碧眼には狂気が滲む

起き上がり軋む肢体は
透きとおる程白く
刻まれた記憶の波に
浚われて存在意義を思い出す

彼は呼ぶ 譫言の様に
いまは亡き恋人の名を
彼は呼ぶ わたしに向かい
「おかえり」と微笑みながら―――

理解しました 御主人様
人形は人形らしく演じて踊る
心の渇きが癒えるまで
あなたが望む 幻影を
現実へ全て映して差し上げましょう
いつか役目を終えるまで


偽りの幸福の日々
いつの日も寄り添って
それだけで充たされていた
あの瞬間に突然起きた不具合まで

彼は呼ぶ いつもと同じ
いまは亡き恋人の名を
彼は呼ぶ わたしじゃなくて
その向こう、遠い過去へと―――

わたしを呼んで 御主人様
人形が意思を持ってはいけないですか?
歯車が軋んで痛み出す
あなたの笑顔 苦しくて
色褪せた幻想から醒めて どうかお願い
ここでわたしを 終わらせて


彼は啼く 哀しい聲で
崩れ落つ理想郷の中
彼は呼ぶ 妄執の果て
最愛の、その人の名を―――

何処へ行ったの? 御主人様
人形は主なしでは活きられません
二度と自我など持たないと
宣誓します 御主人様
だからまたその微笑みをわたしに見せて
あなたの生命 尽きるまで

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

機械仕掛けのこころ

機械人形(http://piapro.jp/content/wg06q7ubqg0hjb1t)の前日譚にあたるお話です。
書きたくなったので書いてみました。
これを読んだ後に機械人形を読むとまた違った角度から物語を見れるかもしれません。
これ単体でも大丈夫だとは思いますが。

特殊読みがそこそこ含まれております。
前のバージョンで全ひらがな表記版が読めます。

閲覧数:168

投稿日:2009/09/10 17:19:30

文字数:543文字

カテゴリ:歌詞

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