ホワイトデーの一撃 2

 紫の長髪がさらりと動いた・・と思うと、がくぽが隣に座っていた。
 「言いたいことならばある。」
 やっぱり、とルカは拳を握り、非難の言葉を覚悟する。
 「まず・・ルカ殿は本当は優しい人だ。だから自分がイヤになったりするのだ。言われた方の痛みをきちんと感じ取ることが出来る故。」
 「・・?!」
 「それに何も出来ない、と言うが、そんなことはないし、できぬことはできるまで努力する。あのチョコケーキが良い例だ。ミク殿とリン殿が、それは必死で練習していたと教えてくれた。」
 「・・余計なことを・・」
 「だから、その気持ちに応えたくなる。英語も話せる完璧な才色兼備の女性の顔の裏で、なお、自分を高めようと何事にも手を抜かず努力を重ねる、その気持ちに。」
 「それぐらい、誰でもやってるわ。」
 「そう思って、一人で頑張りすぎるのだ、ルカ殿は。」
 「頑張り・・すぎ・・?」
 「高い目標を設定し、一人でもがき、できないと自分を責める。ケーキのときのように誰かに頼れば良いのに、それをしない。」
 「そんなことない・・」
 「ある。皆、ルカ殿の日頃の態度に惑わされ、ルカ殿が悩んでいるのに気づかない。だから、それがしは手をさしのべたくなる。もっとも、それがしもこうと気づくのにだいぶかかったが。」
 「・・・・」
 「その手を取って、支えてやりたいのだ、ルカ殿。」
 「そんなの、要らないわよ。」
 と、たこルカが動いた。そっと伸ばした触腕がルカの手を取り、がくぽの手のひらに乗せた。
 「な、何するの!」
 あわてて手を引こうとするルカの背中に、今度はたこルカが光速で蹴りを入れた。
 「痛あぁっ!!」
 はずみでがくぽの腕の中に飛び込んだルカの後ろから、たこルカがなにやら説明する。
 「何、バレンタインデーの件で泣いていたというのか!」
 「泣いてない!全然泣いてない!ちょっと、離して・・」
 暴れるルカを抱く腕にさりげなく力を込めながら、がくぽは言った。
 「そうか、では詫びねばならんな。愛する女性を泣かせるというのは武士の掟に反する。」
 「そんな掟ないでしょ!無駄にお気遣いの紳士!」
 「そうだ、ホワイトデーのプレゼントを何にしようか迷っていたのだが・・」
 「要りません、そんなもの必要な・・んっ!」
 まただ、とルカは思った。
 また、取り乱して隙を作った。
 (修行が足りないわ・・)
 がくぽの唇が離れるまで、そんなことだけを一生懸命考えていたのは、強がりか、照れ隠しか・・
 
 「和服だから、こんなことないと思ってたのに。詐欺だわ、この男。」
 「“こんなこと”とは何のことであろうか。」
 「うるさい!白がくぽだと思ってたのに、真っ黒じゃない!質悪い!」
 「グミも勘違いしていたが、服ごときでそれほど性質は変わらん。で、“こんなこと”とは何であろう?ルカ殿の口から直接聞きたい。」
 「そ、そんなの言えるわけない!清らかな笑顔で、何言わそうとしてくれてるの?!」
 「震えているではないか、これは暖めねば。」
 「あっ・・」
 後ろから抱きしめると、淡い花の香りがふわりと立ち上った。
 「良い香りだ。」
 「匂いをかぐなっ!ちょ、いや・・耳にさわらないで、その手の位置もおかしい・・!」
 「ではこちらに。」
 「ずらすな!」
 「うーむ、この程度の惚れようでは、ホワイトデーの返礼にはならぬか。」
 「するな!」
 「今少し熱意を込めねば・・」
 「込めるな!!」
 つっこみの連続に息を切らせながら、ルカは毒づいた。
 「たこルカ・・よくも私を売ったわね・・あとでメイコに酢でしめてもら・・だから、耳とか首とかそんな風に・・やめ・・黒い!黒すぎるわ、あなた!!」
 「人は多面的なものだ。白黒二分することは出来ぬ。それに・・」
 がくぽはにやりと笑った。
 「それがしのイメージカラーは紫なのでな。」
 「なっ・・」
 二の句が継げないルカを見ながら、がくぽは心の中でつぶやいた。
 (グミよ、これでも兄はMか?)

 ルカが帰宅したのは、夕方だった。
 夕食前だがメイコが帰らないのをいいことに、ミクとリンが“たけ●この里”などポリポリ食べている。リビングのテーブルの上には板チョコやチョコ菓子が山になっていた。
 「おかえりー、ルカ姉。ホワイトデー用にレンが買ってきたんだけど、食べる?」
 ルカはちらりと見やっただけで、足取りも重く2階に去っていった。代わりにたこルカがポッ●ーをつまんだ。
 「ねえ、たこルカちゃん、ルカ姉どうしたの?すごい、やつれてたんだけど。」
 ミクに聞かれたが、たこルカはかぶりを振った。
 「え?わたしは何も見てないし、聞いてない、知っていたとしてもしゃべらない・・?何それ!」
 「逆に気になる!何があったの?ちょっと、教えて!」
 ミクとリンの抗議を無視し、たこルカは達成感に満ちた表情でポッ●ーを食べていた。

 <追記:たこルカ、記憶を反芻する>
 『・・自分で言いたくないけど、英語も話せる才色兼備の設定はちょっと・・その、自信があったのよ。メイコと違う大人の魅力のクールビューティで押すつもりだったのに。』
 『ふむ。』
 『なのに、2,3ヶ月の差で先にいたあなたは・・なんかキャラがかぶってるというか・・なんなのよ、こいつ、男のくせに私より綺麗?って。で、頭にきて。』
 『な・・なるほど。』
 がくぽ苦笑。初見から嫌われた理由は意外と子供じみていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ホワイトデーの一撃2

 これも重複覚悟で投稿してみます。お姑さんに聞いたけど、実はうちでも棒鱈はあまり食べないんですね~。

閲覧数:355

投稿日:2013/10/06 21:02:23

文字数:2,282文字

カテゴリ:小説

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  • 高畑まこと

    高畑まこと

    ご意見・ご感想

    自分もたまに話を書きますが、よく登場人物に振り回されます(笑)

    我侭に応えてくださり、ありがとうございます(*^^*)
    そして、世の中はあっという間にXmasですよね ←

    投稿時のエラーって、結構あります(; ̄ェ ̄)
    出来てないと思っていたらできていたり、何もないのに二重投稿だったり…
    PCだと、マイページ→作品一覧→テキスト でエラーのチェックと削除できます。
    音楽を何回か失敗して知りましたw

    2013/10/10 18:52:45

    • 桜とお城

      桜とお城

      高畑様
       なるほど、そんなものですか・・何分にもおばさんなので、デジ系エラーはドキドキします(^^;) さて、言われてみれば年末に向け、お酒の絡むイベントが続きますね・・ウプププ(モノクマ風)子どものピアノ発表会の暇つぶしに、ちょっと考えてみようと思います。いつもアドバイスありがとうございます。

      2013/10/13 23:25:37

  • 高畑まこと

    高畑まこと

    ご意見・ご感想

    (//∇//)ごちそうさまでした♪

    2013/10/06 22:20:51

    • 桜とお城

      桜とお城

      高畑様
       おかげさまでこの様なものができあがりました。実は再投稿したのは良いのですが、前回投稿時に直した部分を再度直すの忘れてました・・がくぽの一人称は「俺」にしてたんですよね(T_T)。語呂合わせで「一撃」にしたけど一撃入れるところがなくて困ってたら、たこルカが良い仕事(?)してくれました。キャラが勝手に動くってあるんですね。

      2013/10/08 07:02:03

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