7月2日、パソコンの中からミクが消えた。
特に深刻なエラーがあった様子もなく、パソコンに異常があったわけでもない。
その日に、ミクは突然に消えてしまった。

何故なのか、原因はさっぱり分からなかった。
曲を作らずに、ニコニコを観てたことはあった。しかし、その時はミクも一緒に笑って見ていたので、それが原因とは思えない。
他にはMMD動画が面白くて、それに夢中になっていたこともあった。
一体どれだけの手間がかかって作られているのか、それは一つの映画ともいえるほどの大作で、MMD動画ばかりを見ていた。
そういえば……あの時のミクは、少し微妙な顔をしていた。
しかし、あの後にネギを1本あげたら喜んでいたので、問題ないだろう。
考えても原因がさっぱり分からないまま、3日が過ぎようとしていた。

あれだけの時間を一緒に過ごしたんだから、何も言わずに消えることはない。
そう思って、今はパソコンの中を隅々まで確認していた。どこかに見落としがないか、ミクが嫌がるものでも置いてなかったか……
もしや、この秘密のフォルダを見られて……いや、偽装は完璧なので大丈夫なはずだ。ミクはWINDOWSフォルダには触れていないはずだ。

……どれだけの間パソコンの前にいたのか、食事をするのも忘れてパソコンに向かっていたその時、暗かった部屋にフラッシュが瞬いたようにパソコンが光った。
「ただいまー、ひふぅ」
あらわれたのは、俺がよく知っているミクだった。
3日前に消えてからずっと探していたミクが、画面から飛び出して、俺の横にフワッと着地した。
「大変でしたよ、マスター。もうウォウウォウで、すごかったんですよ」
何を言っているのか分からないが、ミクはいつも通りだった。いつも通りのミクが帰ってきてくれたことが嬉しくて、言葉が出てこない。
「ああ、そうそう。これお土産なんですよ。ハンバーガー」
そう言って渡されたものは、かなり巨大な紙袋に入っているハンバーガーだった。
とてもここら辺では売っていないようなもので、欧米にでも売ってそうなサイズのものだった。
なんだ、ミクはどこへ行ってきたんだ。
「帰ってきたー。帰ってきたよー。ああ……ああ、あ、寝よう……」
両腕を上げて、帰ってきた喜びを表現したかと思うと、ミクは電池が切れたように元気がなくなり、何事もなかったかのように床に転がった。
そのまま、すやすやと寝息を立て始める。

3日間ほど消えていて、突然に帰ってきて、巨大なハンバーガーを渡されたと思ったら寝てしまった。
相変わらず、ミクは自由だった。
「……ネギをはさんでネギバーガーにすれば……おいしい……」
よっぽど疲れていたのか、既に寝言が意味不明だ。
この顔は完全に寝ているミクだ。目が棒のように見える、平和そうな顔だ。
この数日間、ミクに何があったのか、今の時点では何も分からなかった。
俺は手に乗せられた、まだ暖かい巨大なハンバーガーを見ながら、どこか旅行にでも行ってきたのかと考えていた。
「はろぉ……ぐっばぁぃ……ありがほ……ぉ」
横になったミクを見ても、いつも通りすぎて答えは出てこない。
明日になったら、問い詰めてやるとしよう。

何があったのか知らないが、今日は疲れているようなので、そのまま休ませてあげることにした。
マスターである自分がどれだけ心配して探したかという苦労など知る由もなく、ミクはぐっすりと眠っている。
ものすごく心配をしていたが、帰ってきてくれてよかったと思った。

今日はもう、寝るとしよう……
7月2日……何があったんだろうなぁ……Zzzzz……


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

[短編] ミクが消えた日

 ちょっと歌ったり、踊ったりして帰ってきた話。
 読んでくださった方、ありがとうございました。

閲覧数:179

投稿日:2011/07/28 15:15:22

文字数:1,495文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました