「ねぇメイコぉ」
呑気な声で、カイトが呟くように言った。その場にしゃがみ込んで、空を見上げている。そしてその手は降る雪を受け止めるためか、無意味に差し出すような形になっていた。
「何よ、カイト」
寒さに震えながら、メイコはカイトを見下ろす。相変わらず呑気な顔だった。なのに、憎めない。
変な矛盾だ。
「俺たち、いつか消えちゃうのかなぁ」
その声は歌うようだった。無意識なのだろうけど。
メイコは即答した。
「当たり前よ」
だって否定のしようがなかった。白い息を吐いて、メイコは息をする。
その様子はまるで人間みたいだ、カイトはおかしそうに笑った。その頭を、メイコは痛くない程度に叩いた。
「何、いきなりそんな質問」
冷たいとも感じない雪を体に微かに積もらせ、今度はメイコが問いかけた。カイトは空から自分の手に微かに積もった雪をやんわりとした笑顔で見つめ、首を振る。
「ううん。なんでもないよ」
のんびりとした口調で、カイトは答えた。そして手の中の雪を払って、立ちあがる。
「それじゃあ、帰ろっかぁ」
そう言ったカイトはこれまたのんびりとした足取りで、すぐそこにある家へと向かっていった。メイコはその背中を見つめる。
自分に向けた笑顔が、脳裏を過ぎる。
「うそつき」
メイコは呟く。カイトには、届かなかった。
それでいい、とメイコは思う。
「消えるのが、怖いくせに」
雪がふわりふわりと舞う。そしてメイコの体の、機械としての温もりに溶けていく。
カイトにはやはり届かなかった。
心の底から、それでもいいのだと、メイコは思う。
だって彼に聞こえでもしたら、
(あの間抜け面が、もっと情けなくなってしまうだろうから)
メイコはゆったりとした足取りで家の中に入る。そこには足跡が残っていた。二人が歩いた証拠が残っていた。
しばらくの時が過ぎて、雪が積もった。外には誰もいなかった。
二人がそこにいた証拠は、呆気もなく、積もる雪の中に、消え去った。
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