(名前なんて言うの？)

そんな一言から始まった３年前の春
緊張して声が震えたよ　私はまだ一人だった
でもあなたの優しい笑顔が目の前にあったから
あなたと友達になりたいなって思ったの
あなたと３年間がんばりたいなって思ったの

(わ、私は…ミク。初音ミク)

可愛い名前だねって言ってくれた　あなたはずっと笑ってた
交換したメールアドレス　彼女だけの秘密のアルファベット
意味はよく分からない　だけど、３年後にはきっと知ってる
ママとパパに買ってもらった新しい携帯電話　ずっと見つめてた


夏の終わりの鈴虫が鳴く放課後
あなたは話してくれたね　腎臓が悪いんだって
ショックだったよ　世界の終わりが来たかと思った
それでもあなたは笑ってた　私は泣いてたのに

文化祭が終わったあと　あまり学校に来なくなったあなたが心配だった
でも遠いところに入院してしまったあなたには会えなくて
授業中に隠れてメールを送ったらあなたは怒ってたね
「私の代わりにミクはちゃんと授業受けて」って
病院のベッドの中で勉強をがんばるあなたは輝いてた


あなたに出会って４度目の春がやってきて
私は通いなれた道をあなたとは違う人と歩いてる
あなたと過ごした春は一度だけだったけど　本当に楽しかった
２００６年２月１４日のことはまだ覚えてるよ
友チョコを交換しようねって約束したよね
渡せなかったチョコレートは雨に濡れたけど　枕元に届けたよ
ちゃんと届いてるかな　おいしかったかな…
料理なんてあんまりやらないからへたくそだったかもしれないや

綺麗な花に囲まれて眠るあなたは　やっぱり笑ってた


あなたと過ごした日々はほんの少しだった
メールアドレスの意味もまだ分からない　将来の夢も知らない
好きな人の話もあんまりしてない　映画にも行ってない
それでもあなたの笑顔だけは今でも覚えてる

大好きだったあなたへ贈ります
卒業おめでとう　これからもずっと一緒だよ
涙はあのときたくさん落としたからもう大丈夫
わたしはあなたを覚えておくために　今日も笑うよ