苛々する。気分が悪い。
この感覚を私は知っている。多分、嫉妬。隣のクラスに鏡音リンに。なんでかというと、私には付き合っている人、彼氏がいる。だけど、彼――鏡音レン――が彼女と仲がいい。それこそ、付き合ってるの? と聞いてしまいそうなくらい。別に、誰にだって仲のいい友達位いる。それなのに、鏡音リンを見ているとどうしてか落ち着かない。
私とレンは、驚くほどに趣味が合わない。周りも、どうして付き合っているのと尋ねるばかり。
付き合って欲しいと頼んだら、向こうもいいよと言っただけ。私は彼を好きなのに、彼は好きとも言ってくれない。
何だろう、この距離感は。
放課後、ゆっくりと、隣のクラスに向かう。そこでは、レンと鏡音リンが楽しそうに笑っていた。
「レン」
私は、彼の名を呼ぶ。ねえ、早く帰ろうよ。私だけを、見ていてよ。だけど、そんなこと言えなくて。
「すぐ行く。じゃあね、リンさん。本は明日渡すよ」
彼は柔らかく笑って、私のところへ歩いてきた。
教室を出ると、私は彼と手を繋いだ。私たち以外に生徒はあまり見られない。どうせ下校時間だし、すぐに誰もいなくなるだろう。
「レン」
「何?」
呼びかけると、優しい声でレンは返事をした。
「私……レンが好き」
「……うん」
俺もだよ、とか、どうして言ってくれないの?
嘘でもいいから。言ってほしいのに。
「レンは……―――」
私のこと、好き?
そう聞きたかった。
「鏡音リンの方が、好きなの?」
けれど、出てきたのはそんな言葉だった。遠回しに、同じようなことを聞いているみたい。
もし、『Yes』が帰ってきたら、私はどうするんだろう。潔く諦めるのか、しつこく追いかけるのか。
「……多分」
苦笑しながら、レンは答えた。
「とても自分勝手だと思ってるけど……恋っていうものが、わからなかったんだ。ミクと付き合っていれば、わかるのかと思った。けど……難しいんだね」
あぁ。本当はわかっていたんだ。今まで、レンといることで胸にたまっていったつっかえのようなものが無くなる感じを私は覚えた。彼は、私を好きじゃなかったんだ。わかっていたんだけど、いつか私を好きになってくれると信じたかった。
冷たい何かが、頬を滑り落ちて言った。
「別れよう、ミク」
いつか、言われると思っていた。
「……うん」
ゆっくり、私も答えた。自分でも、すんなりと答えられたことに驚いた。
「嫌って、言っても?」
「うん。このまま付き合っていたって、ミクが苦しいだけだろう? だから、もう、辞めよう」
彼は笑った。どこか他人行儀な、そんな笑顔で。私の恋した笑顔は、いつも私には向けられていなかったんだと、実感する。
ぽろぽろと、涙が溢れだす。
「レンは……レンは、私と付き合って、好きな人を見つけたんだね」
何て皮肉なんだろう。と私は思った。俯いて、じっと自分のつま先を見つめる。
「うん」
「そっか……ありがと、私と付き合ってくれて、本当に……」
そこまで行って、私はレンに近付いた。そして、唇を重ねた。
いち、に、さん。3秒数えて離れる。呆けた様な表情のレンが可笑しくて、声をだして笑ってしまった。それから、くるりとレンに背を向けた。
「さよなら」
私とレンしかいない、しんとした廊下に靴音だけが響く。
玄関まで行くと、鏡音リンが立っていた。
「初音さん……」
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私は声をあげて、わあっと泣きだした。
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ご意見・ご感想
目白皐月
ご意見・ご感想
こんにちは、目白皐月です。
えーと……ミク、とりあえず「さようなら、あなたにわたしはもったいないわ」とでも呟いて(ちなみに昔読んだ漫画にでてきた台詞)、もっといい男を探しましょう。多分、ちゃんとどこかにミクだけを見てくれる人がいると思うので。
というか、こんなところを見てしまったら、リンの方もレンと付き合うのためらってしまうのでは、という気がします。
前のエピソードのところで書いていた「イメージになった曲」ですが、もしかしてアヴリル・ラヴィーンの "Girlfriend" ですか? いや、なんとなく、そんな感じがしたもので。
2012/07/15 23:34:41
水乃
こんにちは、目白皐月さん。メッセージありがとうございます。
その台詞、ぜひミクに言わせたいですね。
そしていい男を見つけてもらいたいですな……ミクは可愛いですからね。寄ってくる男は多いと思いますが。
確かにそうですね……その後の展開ももう少し考えることにします。
えっと、イメージになった曲はですね、テイラー・スウィフトの"You belong with me"です。
歌詞(日本語訳ですが)に「彼女とは違って」とあるので、そこからタイトルを付けました。
2012/07/16 09:18:01