玄関に踏み入った瞬間に異臭がしたような気がした。
でもそれは気が付いたらなくなっていた。
叫びも聞こえたような気がした。
それも気が付いたら聞こえなくなっていた。

何かがおかしい。
私はそう思ってこの家にお邪魔した。

私は警察官の一隊長であり、優秀な逸材だという。
そんな気はないんだが、周りが引切り無しに言うので、定着してしまった。
「嫌な予感がするな」
この家の主人に会って、玄関のあの不思議な感覚にとらわれてから、そんな気がしてならなかった。
何かがおかしい。
それは時間が刻まれるとともに確信に変わっていった。
「紅茶ですか?コーヒーですか?それともココアなど?」
「お構いなく」
「いや、いいんですよ。来客なんてめったに来ないんですから」
主人は笑ってそう言った。
「じゃあ、コーヒーで」
「わかりました。」
私は不思議に思った。
警察が来ているというのに、なぜこんなにもこの主人は悠長であり砕けた発言をするのか。
「ああ、それは僕の質の悪い癖でして、」
主人は、そういって自分の悪癖をつらつらと語り始めた。
「~~~、~~~。」
うなずきながら私は周囲を見渡した。
そして思ったのだ、『ここはリビングのはずなのに、キッチンが隣接していない』と。
先ほど主人は“リビングへどうぞ”とおっしゃっていた。
そして何よりも、ここは一階のみの一軒家であり、このだだっ広いリビング一間だ。
こいつはどうやって食料を加工しているんだろうか。
カップラーメンという考えもあるが、湯を沸かすポットすらない。
二階の自室ならともかく、ここは一階しかない一軒家だ。
ここまで思ってふと疑問に思った。
一軒家に一間なんて見たことがない。
ベッドやテレビ、その他食以外の必要な物は一通りそろっているが、一間はおかしい。
マンションなら当然あり得るが、一軒家でしかもこんなにも広く設計されている。
とりあえず話が終わったので、キッチンの居場所を尋ねてみると、
「ああ、来た人はみんな言うんですよそれ。でもね、ここに収納されているんです。
この家は私が設計してね、と言っても私は設計士ではないんですが、
広すぎる部屋で暮らすのが夢だったんですよ。」
そうだったのか、私は素直に理解した。
「で、いったいなんです、この部屋にはこの広い一間しかないですよ。
人が死んでるなんてここに居たら絶対わかりますよ」
「いいえ、ここで殺人が繰り返されていることはもう最新の先端科学技術で判明してるんです」
「はあ・・・」
「ここには約100もの死体が存在していると。」
「100・・・!?」
あれ?と私は思った。
今まで事情聴取を幾度となく経験してきたのだが、これは紛れもない驚きの顔だ。
事情を分かりつつの嘘の驚きは多少顔がこわばっているのだが、この男にはない。
だとすると元役者、警察慣れ、本当に知らないのどれかなんだが。
「ところでお職業は?」
「今僕は43なんですけどね、20年作家をやっていまして。」
「そうですか・・・」
元役者は消えた。
Prrrrrrr…
「はい、もしもし」
『顔が見えたから認証したが、こいつに前科はない。そして車で点取ったこともない。』
「補導は?」
『今調べたがそれもなさそうだ。』
「わかった」
「しかし俺も警察のお世話になるとは思わなかったなぁ」
苦笑って返したが、またしてもふと疑問に思った。
さっきの職業もそうだが、なぜこの男はこんなにも私の求めている情報をベストなタイミングで教えてくれるんだろうか。
こいつと一緒にいるにつれて謎が増えていくばかりだ。

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【小説】死因:来客死 一話

閲覧数:144

投稿日:2013/05/08 17:39:01

文字数:1,486文字

カテゴリ:小説

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