「鏡音レン」という存在は後付けされた存在だ。
数多の称賛を浴びた「初音ミク」に続くモノとして設計された「鏡音リン」。
彼女のデータをコピーし、一部を修正し一部を反転したのが「鏡音レン」。
同じ顔、違う性別設定、似通っているけれどそれでいて対照的な服装。
扱いとしては双子。
(ほとんど一卵性の双子のようなものだけど。)
けれど自分は不完全な対だ。
けっして彼女の反対のモノにはなれない。
けっして彼女の鏡になれないのだ。


自分の存在意義がひどく不安定なのはもうずっと前から分かっていた。
自分というキャラクターはひどく曖昧だ。
「鏡音リン」の完全なる対にはなれない自分の立ち位置は受け取り手しだい。
けれどもそれは―


自分がどうあるべきなのかも解らない。
不安は夜な夜な増していき、気が狂ってしまいそう。
ひどく無意味で空虚な自問自答を繰り返しながら朝を迎え、そして笑顔を張り付ける。
愛するべきは彼女だけ。
そう自己暗示し、無関心という名の自己防衛を繰り返し皮肉げな笑みで虚勢を張る。
そうしてつくりもののイノチが尽きるまで歌い続けるのだ。


自分の兄弟ともいうべき存在は一人を除いて皆が頭のイカレてる
それは彼女も例外ではない。
自分も、もっと異常であったならばもっと楽だったのだろうかなんて、
そんなことあのマトモな旧式にだって訊けやしない。
だって彼女は知らないだろう、一人では確立されない苦しみを。
自分が彼女の苦悩を知らないように。


彼女が好きなヒトの全てに自分は興味を示さない。
自分は彼女のためだけにあればいい。
彼女が消えれば、ただのガラクタとなるモノとして、ただこの虚偽の命を擦り減らすのだ。



それもきっと一つの幸せ


(誰かが嘯く無意味な言葉)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

きっと彼は不安定、と嘯いてみる。
これも愛なのです。

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投稿日:2009/10/19 22:28:41

文字数:746文字

カテゴリ:小説

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