深夜の2時過ぎ。
小腹を空かせた俺はコンビニに行くため家を出た。
そしてその帰り道。
静まり返った住宅街の片隅で、
街灯に照らされたゴミ捨て場で俺は足を止めた。

 
―そこはミクと初めて出会った場所……。

 
俺はそのなんの変哲もないゴミ捨て場を見つめながら思い出す。


 
……あの後、壊れたミクをどうする事も出来ず、
ただ抱き締めて泣くしか出来なかった俺は、ただ呆然としていた。
廃棄なんて出来ようもなかったし、家に置いとくには辛すぎた。
俺がそんな風に思っていると、ミクは突然崩れる様に消え始めた。
淡雪の様にホロホロと崩れて消えていくミク。
まるで最初から幻だったかの様に……。
俺は消えゆくミクを止める術もないまま、
ただミクを消していく何かに悪態をつきながら、
抱き締めて泣くしか出来なかった。
そして最後には、何もなかった様にミクは消えていた。
 

これがあの後の顛末。
俺は未だに癒えない傷に、知らず浮かんだ涙を拭ってその場を立ち去る。
すると。


 
「マスター!」


 
後ろからミクの声が聞こえた気がして、俺は驚いて後ろを振り返る。
けれどそこにミクがいる訳もなく……。
俺は酷い空耳だと自嘲気味に笑って、帰路についた。

 
家に着いた俺はパソコンを開いてニコニコに飛ぶ。
あれ以来避けていたボーカロイド系の動画を、俺は久々に見る気になった。
最新のボーカロイドランキングを見て俺は呼吸を止める。
何故なら1位に俺達の作った曲があったからだ。
俺は震える手で動画を開いた。
暫くして流れるミクの歌声。
そして同時に画面を流れていく、曲を褒める知らない誰かのコメント達。
俺はいつの間にか泣いていた。
だってそこに、画面の向こう側にあの日のミクを見つけたから。
消えたと思っていたミクは、沢山の誰かの為に、懸命に歌っていた。
俺は知らず呟いた。
 


「ミク……俺達の曲は、確かに誰かの心に届いたよ……」


 
……もう側でその言葉に答えてくれるミクはいないけれど、
パソコンの横に飾られた写真立ての中で、
遊園地で撮ったあの日の俺とミクは幸せそうに並んで笑っていた……。

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Song of happiness - 第14話【そして……】

初音ミクとマスターとの恋物語、いかがでしたでしょうか。
これを初めてモバゲータウンというところに投稿したのは
2年~3年前になります。
当時拙いながらも一生懸命に、作曲もしたことないくせに
適当な知識とミクへの愛だけで書いた作品でしたw
当然この作中でマスター達が作った曲のイメージも何もありませんw

けど初音ミク以外が好きな人には初音ミクを好きに、
初音ミクが好きな人はもっと好きに
この作品を通してなって頂けたらな、と今も思っております。

しばらく完結まで放置していましたが
Song of happinessこれにて完結となります。
最後まで目を通して頂き、ありがとうございました。

E☆エブリスタというところにもこの作品を掲載してます。
別エンドもありますので、気になる方はご覧ください。

閲覧数:124

投稿日:2011/03/15 13:19:55

文字数:908文字

カテゴリ:小説

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