仕事終わり1人きりの部屋でテレビを点ける。
時刻の針は丁度11時を指した所だ。
てててってってー♪
情熱を感じるテーマソングが流れた。
…今日は私が出る予定なのである。
〈今日はデジャヴ局最高顧問、ミクさんの半生や苦悩、それを乗り越え、今の仕事に勤しむ姿を…〉
…テレビを消した。
きっとこの先は、マスコミが作り上げた編集の与太話ばかりの世界なのだろう。
「…はぁ」
最近、溜息が多くなった気がする。
そんなデジャヴ局員5年目を迎えた頃だった。
少々昔の話になるが、現世の人間の幸せのバランサーとなる幸福省は、12歳未満に現世で命を落とした人の為のいわゆる「向こうの世界の学校」である訓練学校を設立していて、私はそこに所属していた。
私が幸福省の訓練学校を卒業して就職したのはデジャヴ局であった。
私がフレッシュな局員だった頃はまだ幸福省の管轄内と言う事もあり、予知夢等を現世の人にお届けするのが仕事だった。
…ただ、幸福省の大臣が変わり、デジャヴ局が予知夢局と別けられデジャヴ局が内密な機関となった時は驚愕してしまった。
若者の死亡率の低下、それによる人員不足。
…そう、内密にデジャヴ、概視感を利用した人員補強を行おうとした。
これに私は最高顧問として就く事になったのだ。
現実世界からの人狩りは内密に行われ、増えていく現世出身のデジャヴ局員達。
1人1人無作為に選ばれ、強制的にこちらの世界へ引き連れてくる。
当然、絶望感に襲われた人達を働かせる訳なのだから、私は冷血になる必要があった。
純粋な笑いもニヤけ笑いに変わり、挙句の果ては笑う事も泣く事もできない、本当の無表情なってしまった。
毎朝、鏡を見るたびに溜息をこぼしてしまう。
ジト目に栗の様な三角形の口。そして無表情。
…これは年頃の女の子としてアウトである。
「私、一生こんななのかな…こんなんじゃ壊れちゃいますよ…」
心の底から叫びたかった。
職場では、
「いあちゃん、僕達どうなるのかなぁ…」
「カイくん、それは私にも分からない、でも今はやるべき事をやらなきゃいけないんじゃないかな?」
「そうだねぇ…ありがとう、いあちゃん、大好きぃ」
「バカ、職場でそんな事言わないの!」
本当に莫迦みたいですよ…と呟く事しかできなくなっていた。
幸せってなんだっけ。
さすがにそこにポン酢醤油があったとしても理由なんて分からない。
私は何故人の不幸に立ち会って、率先して人を不幸に導かなければならないのか…。
それこそ、幸福省に就職したわけなのだから、人の不幸なんてもう見たくなかった。
抜け出せない八方塞がりになっていた時だった。
「よぅ」
「あ…」
デジャヴ局に足を運んでくれたのは後輩のレンだった。
訓練学校では私より後輩なのに、幸福省の訓練学校を飛び級で卒業、そして就職先でもあれよあれよと言う間に管理職入り。
…憎たらしい。
…でも、私が昔からレンに淡い恋心を抱いていたのは秘密である。
「今日はこんなドス黒い部署まで、どうしたんですか?」
「いやー、唐突で悪いんだが、デジャヴ局を閉鎖する運びになったんだ、幸福省の大臣が変わってデジャヴ局の存在を知って憤慨しちゃってね…まぁ、そりゃそうか」
レンは頭をぽりぽり書きながら笑った。
「ここで働いている人達はどうするんですかね…?」
「今、そんな境遇の人の為の訓練学校を作っている段階だから、心配するな」
レンくんは自信満々に答えた。
「それでなんだけどミク」
「はい…」
まじまじと見つめられて固まる。
「この先異動に困ったら真っ先に俺が働いているキューピッド課に異動して欲しいんだ…」
私は迷わず、
「はい」
と答えた。
新しい仕事の日、難なく自己紹介を終え(ヒソヒソ目が死んでるとか言われたが…)業務を始める事にした。
「まず、最初のキューピッドはめぐさんですね、相手は…」
私は新しい環境に気合いを入れるように両手でパンっと顔を叩き、仕事を始めた。
デジャヴとキューピッド
この作品は同人誌、既刊「MELODY HOUSE D.S」に参加させて頂いている作品「デジャヴ」と次のイベントで頒布されます新刊「MELODY HOUSE fer.」に参加されて頂いている作品「空想ノートとキューピッド」のサイドストーリーになります。
イベント詳細
10/06(日)大 阪 COMIC CITY 大阪96
10/20(日)名古屋 VOCALOID PARADISE 8
こちらで既刊、新刊共に頒布されると思いますので、興味を持たれた方は宜しくお願いします!!
また、「イベント行けねぇよ!!」という方はMELODY HOUSE公式HPからの頒布も行っています、こちらも宜しくお願いします。HP→http://mehouse.web.fc2.com/index.html
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