19.まだまだだな
「クミ、あんたちょっと汚れてないか? 服もボロボロだし」
「そうか? 一応毎日水浴びはしていたのだけど」
シンデレラとクミは宿の一室でなにやら問答している。
ここは二人が森を出発してから初めて立ち寄ったの町の宿屋である。
「ちょっと、こっちにおいで」
素直に近づいてきたクミの着ていたボロボロのローブをおもむろに脱がせる。
少女は瞬く間にすっぽんぽんにされてしまった。
そのままシンデレラは少女を浴室に連れ込み、シャワーの蛇口をひねった。
「わぷっ なんだ? 熱い水が」
クミは突然のことに驚き、その場から逃げだそうとする。
シンデレラは少女の首に腕を引っかけて逃げだせないようにした。
まるで、子猫を洗う時のようなやりとりだ。
「いいから、ここに立ってろって。体を洗ってやるから」
シンデレラは石鹸を泡立てて、少女の体を優しく洗ってやる。
クミも温かなお湯に慣れてきたのか、
石鹸のいい香りに包まれて、だんだんいい気持ちになってきた。
「それにしても、きれいな髪だな」
クミは長くて美しい碧空の色をした髪を持っていた。
シンデレラはそのきれいな髪を優しく洗っている。
ひととおり少女の体を洗い終わると、シンデレラは大きなタオルで少女を包んだ。
体についた水分をふき取ると共に、髪を乾かしてやる。
髪を乾かしてやりながら、シンデレラはクミの前髪を手に取り、すぐに離す。
「ちょっと、前髪伸びすぎかな。せっかくの可愛い顔が隠れちゃってるよ」
どこからかハサミを取り出してきて、おもむろに少女の前髪を整えだした。
その間も少女はなされるがままである。よほど初めてのお風呂が気持ちよかったのだろう。
まるで、人形を愛でるようにシンデレラはあれやこれや少女に施している。
「よしっ これでオーケー」
満足げな顔で少女を遠巻きに眺める。
なんということでしょう!? 手入れのされてなかった長い髪は両側でふたつに束ねられて、
子どもらしい清潔感をかもし出し。顔を覆い隠すほど伸びていた前髪は整えられて、
髪と同じ色をした碧空色の瞳がぱっちりと表に出てきました。
――我ながら、まさに匠の仕事だな。
シンデレラは親指を突き出し、GOODサインを出す。
少女も意味もわからず、GOODサインを真似てみる。
「服はこれとこれと、これもいいなー。クミはかわいいからなんでも似合っちゃうな」
少女のような輝ける瞳で服を選んでいるのはシンデレラである。
二人は町の洋服店にクミの新しい服を買いに来ていた。
暫定的にクミはシンデレラのシャツを着せられている。
サイズが大きいせいでワンピースを着ているように見える。
「シンデレラ、私は別にこれでもいいぞ?」
少女はあまりファッションに興味がないようだった。
「なに言ってんのー せっかくきれいになったんだし、二人の旅の始まり記念ってことで」
『二人の』そのキーワードがなんだか嬉しくて、クミは思わずにやけてしまう。
「そうか……まあ、そこまで言うなら仕方がない」
照れ隠しでクミは強気な態度をとってみせる。
シンデレラもそんなクミがかわいくて仕方ないようだった。
結局、シンデレラは店員の勧めた子どもらしい動きやすい服を選んだ。
しかし、頑としてニーハイのソックスをはかせているところに
個人的な趣味がとってうかがえる。
そのまま二人は町をしばらく見て回った。
クミにとっては初めて見るものばかりではしゃいでいたが、
やがて疲れて眠りに落ちてしまった。
少女をおぶって先ほどの宿屋に戻り、ベットにゆっくりとクミを降ろした。
すやすやと眠っているのを確認すると、自分の用事をしようと少しベットから離れようとした。
後ろから何かに引っ張られる力を感じたシンデレラは、後ろを振り返った。
少女は眠ったままその小さな手でシンデレラのシャツをつかんでいる。
――やっぱり、どれだけ強がってみても。そうだよね、家族も知ってる人みんなも、
急にいなくなっちゃったんだもんね。私もなるべく明るく振る舞おうとはしたけど。
ダメだなー 私もまだまだ――。
少女を起こさないように、そのままシンデレラもクミの隣にもぐりこむ。
ぎゅっと少女を包み込むように抱き寄せて、シンデレラも眠りについた。
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